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大所帯で戻ってきた俺を見て、水瀬は息もできないほど笑っていた。一連の流れはしっかり見ていたらしい。食べかけの餃子定食はすっかり冷えており、俺は少し悲しくなる。
「センパイ餃子好きなん? あー冷えっしまっとりますね。自分新しいの買ってきます!」
いい子なんだけどなぁ……おおつ、獅童くん……
「いいよ~、冷えても美味しいし~。三人ともご飯持ってきてる~?」
「あ、今から買いにいくところです」
聞くところによると、生徒と喧嘩した反省文を昼休みに書いていたので食堂に入るのが遅れたらしい。入学初日から反省文はあまりにもロックすぎる。
「買ってきな~? ここの席使ってていいからさ~」
「え、でも……」
「遠慮するな二年。席空いてないんだろ? コイツも好き勝手に座ってるだけだしな」
コイツ、と指し示された俺を見て、水瀬を見て、市ヶ谷くんはそれならまぁと頷いた。ちなみに獅童くんと東郷くんはとっくに昼食を買いに行っている。買ってき、の段階で離れていた。三人いて話聞くやつ一人ってマジ? ファンキーだな今年の二年は。
「買ってきました!」
「早~」
「速攻で行って速攻で帰ってきたな」
俺と水瀬がそれぞれ驚いているのに、獅童くんがどやと胸を張る。後輩力の高い動作である、かわいい。
「センパイの命令やったんで」
「センパイ命令した覚えはないんだけど」
市ヶ谷くんと入れ替わるように獅童くんが帰ってきた。早すぎる。この食堂は確かに食事の提供が早いが、注文速度と受け取り速度が尋常でないとここまでのタイムは出せない。迷わないのか? こいつは……
「って、餃子定食~? おそろっちじゃん」
「センパイが美味しいって言いよったんで、食べてみたいなーち思ったんですよ」
いい子なんだけどな。
自然に隣に座った獅童くんがさっと膳の並びを変え、手を合わせる。特に友人を待つことはない。俊足であった。
目を奪われるような流麗な所作でいただきます、と呟き、教科書で見るお手本通りに箸をとって。
「あぢい!!」
「自明の理すぎ」
思い切りかぶりついて火傷していた。
「ほら、ちゃんと冷やしな~? 水飲んで水、猫舌なの~?」
「そういうわけでもないすけど……センパイが熱いの強いんやないですか?」
「そう~? 普通だけど……」
「宗介はめちゃくちゃ強いぞ。マグマも食う」
「人の舌を過言で埋め尽くさんでほしいかも」
俺の分の水を渡すと、獅童くんは何やらじっとコップを観察したあと思い切り水を飲んだ。別に口つけてないから気にしなくていいのに。
「戻りました。大月お前、流石に早すぎる。東郷が右往左往してて面白かっただろ」
「助けはしなかったんやね」
しばらくわちゃわちゃしていると市ヶ谷くんが一人で戻ってきた。手に持っているのはかぼちゃのポタージュで。この王道超有名高校名物の小麦粉からこだわり抜いたバゲットつき。
まだ少し肌寒いこの時期になかなか刺さるチョイスである。
「へぇ、ポタージュ~。おいしそ~」
「奪っときますか?」
「何で初手で出てくる選択肢が略奪なの……? コラッ、人のものを取ったらだめだろ!」
「この海賊みたいなやつ俺のルームメイトなんですよね。気が狂いそうだ」
そろそろこの後輩は暴力という概念の申し子とかなのかもしれないと疑念が湧いてきた。あらゆる“暴”に躊躇がない。
ワク……と立ち上がりかけたのを座らせると、斜め前に座った市ヶ谷くんが乾いた笑いを漏らす。外装に、そこ二人ルームメイトなんだ。
そんなこんなですっかり俺が餃子を食べ終わった頃にようやく東郷くんが来て、手には鯖の味噌煮定食を持っていた。餃子定食とともに不人気なメニューである。
「俺の席がねぇ!!」
「大変だな東郷」
「市ヶ谷テメーが足おきに使ってっからないんだよボケ! どけしかも五つも使いやがって、最後の椅子とかめちゃくちゃ伸ばしたつま先が乗ってるだけじゃねぇか!」
ちなみにポタージュをサクサクと飲み終わった市ヶ谷くんは東郷くんのいやがらせに専念していた。猫舌らしく、獅童くんはまだ餃子と戦っている。
「足、長いから。ごめんな東郷! でも足長いから!」
「別に何の免罪符でもねぇし、さらに言うなら俺の足も長いわボケ!」
ちょっと思ってたけどこの二人も大概変なやつなんだよな。東郷くん、決断がありえんくらい遅いし。やっぱ変な人の周りには変な人が集まるものなんだろうか。
「類は友を呼ぶよな。お前の周りは変なやつが多いよ、宗介」
「俺は別に誰も呼べてない」
悲しいこと言わせんな!
「センパイ餃子好きなん? あー冷えっしまっとりますね。自分新しいの買ってきます!」
いい子なんだけどなぁ……おおつ、獅童くん……
「いいよ~、冷えても美味しいし~。三人ともご飯持ってきてる~?」
「あ、今から買いにいくところです」
聞くところによると、生徒と喧嘩した反省文を昼休みに書いていたので食堂に入るのが遅れたらしい。入学初日から反省文はあまりにもロックすぎる。
「買ってきな~? ここの席使ってていいからさ~」
「え、でも……」
「遠慮するな二年。席空いてないんだろ? コイツも好き勝手に座ってるだけだしな」
コイツ、と指し示された俺を見て、水瀬を見て、市ヶ谷くんはそれならまぁと頷いた。ちなみに獅童くんと東郷くんはとっくに昼食を買いに行っている。買ってき、の段階で離れていた。三人いて話聞くやつ一人ってマジ? ファンキーだな今年の二年は。
「買ってきました!」
「早~」
「速攻で行って速攻で帰ってきたな」
俺と水瀬がそれぞれ驚いているのに、獅童くんがどやと胸を張る。後輩力の高い動作である、かわいい。
「センパイの命令やったんで」
「センパイ命令した覚えはないんだけど」
市ヶ谷くんと入れ替わるように獅童くんが帰ってきた。早すぎる。この食堂は確かに食事の提供が早いが、注文速度と受け取り速度が尋常でないとここまでのタイムは出せない。迷わないのか? こいつは……
「って、餃子定食~? おそろっちじゃん」
「センパイが美味しいって言いよったんで、食べてみたいなーち思ったんですよ」
いい子なんだけどな。
自然に隣に座った獅童くんがさっと膳の並びを変え、手を合わせる。特に友人を待つことはない。俊足であった。
目を奪われるような流麗な所作でいただきます、と呟き、教科書で見るお手本通りに箸をとって。
「あぢい!!」
「自明の理すぎ」
思い切りかぶりついて火傷していた。
「ほら、ちゃんと冷やしな~? 水飲んで水、猫舌なの~?」
「そういうわけでもないすけど……センパイが熱いの強いんやないですか?」
「そう~? 普通だけど……」
「宗介はめちゃくちゃ強いぞ。マグマも食う」
「人の舌を過言で埋め尽くさんでほしいかも」
俺の分の水を渡すと、獅童くんは何やらじっとコップを観察したあと思い切り水を飲んだ。別に口つけてないから気にしなくていいのに。
「戻りました。大月お前、流石に早すぎる。東郷が右往左往してて面白かっただろ」
「助けはしなかったんやね」
しばらくわちゃわちゃしていると市ヶ谷くんが一人で戻ってきた。手に持っているのはかぼちゃのポタージュで。この王道超有名高校名物の小麦粉からこだわり抜いたバゲットつき。
まだ少し肌寒いこの時期になかなか刺さるチョイスである。
「へぇ、ポタージュ~。おいしそ~」
「奪っときますか?」
「何で初手で出てくる選択肢が略奪なの……? コラッ、人のものを取ったらだめだろ!」
「この海賊みたいなやつ俺のルームメイトなんですよね。気が狂いそうだ」
そろそろこの後輩は暴力という概念の申し子とかなのかもしれないと疑念が湧いてきた。あらゆる“暴”に躊躇がない。
ワク……と立ち上がりかけたのを座らせると、斜め前に座った市ヶ谷くんが乾いた笑いを漏らす。外装に、そこ二人ルームメイトなんだ。
そんなこんなですっかり俺が餃子を食べ終わった頃にようやく東郷くんが来て、手には鯖の味噌煮定食を持っていた。餃子定食とともに不人気なメニューである。
「俺の席がねぇ!!」
「大変だな東郷」
「市ヶ谷テメーが足おきに使ってっからないんだよボケ! どけしかも五つも使いやがって、最後の椅子とかめちゃくちゃ伸ばしたつま先が乗ってるだけじゃねぇか!」
ちなみにポタージュをサクサクと飲み終わった市ヶ谷くんは東郷くんのいやがらせに専念していた。猫舌らしく、獅童くんはまだ餃子と戦っている。
「足、長いから。ごめんな東郷! でも足長いから!」
「別に何の免罪符でもねぇし、さらに言うなら俺の足も長いわボケ!」
ちょっと思ってたけどこの二人も大概変なやつなんだよな。東郷くん、決断がありえんくらい遅いし。やっぱ変な人の周りには変な人が集まるものなんだろうか。
「類は友を呼ぶよな。お前の周りは変なやつが多いよ、宗介」
「俺は別に誰も呼べてない」
悲しいこと言わせんな!
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