王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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激動! 体育祭!

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次の競技は俺も出る借り物競走だった。競技名もそのまま「借り物競走」である。
だが我が校の借り物競走は普通のそれとは違い、仮装が条件に入っていた。

「見てみてー会長さま~。じゃーん、着ぐるみの可愛いおれでーす。なんで?」
「可愛くはねぇな」

それは知ってる。
デフォルメされた大根っぽいやつに、とってつけられたかのように描かれている顔。おれはその下から顔を出していた。ちなみに両手両足はニョっと伸びており、手の指が五本ちゃんと伸びている。デフォルメ大根に人間の顔と手あるの、普通にキモい。

「ンだその大根は。いや名前は知ってる。もう言うな。三回聞いた。園芸委員会公式マスコットのデェコンくんとやらだろ。何なんだそのネーミングはよ」
「ウン。園芸委員長は代々これを着る宿命だから」
「マジかよ毎年オモロじゃねぇか……見逃した」

去年も一昨年も武藤さまは色々と忙しくされてたからな。
ちなみに俺は園芸委員長になった後、親衛隊のみんなからこの大根を着る晴れ姿を楽しみにしていると口酸っぱく言われてきていた。そんな記念的なものなの? この気持ち悪めの大根は。

「しかし会長さま……似合うねぇ~……」

そんな武藤さまはといえば、中華マフィアっぽい装いをしている。色付きのサングラスにオールバック、柔らかいファーに、チャンパオと呼ばれる丈の長い中華服。
艶やかな濡羽の髪と中華服を押し上げる胸元、色気のあるつった瞳に射抜かれたら再起できる人間なんていないんじゃない?

「ハッ、当然だ。この俺様に着こなせない服があるかよ──それ以外は」
「そ? 会長さまならカッコいいんじゃな~い?」
「よく言うぜ」

ちょうど生徒会テントにいたので、二人揃ってスタート地点に行く。

武藤様がテントの影から姿を現した瞬間──会場が沸いた。
きゃああああ! と黄色い声が上がり、でかい音を立てて何人か倒れている。すごい、ファンサもせずに人間を薙ぎ倒してる。

「お美しい……」「うおおーっ!! 武藤様ーーッッ!!」「こっち見てー!! いや、見ないで!!」「あの服って買取やってます!?」「カッコ良すぎる……」「顔面の美」「国宝」

わかるわかるわかるまじでわかりすぎる。何だこの人たち、俺の心の代弁者か? 本当に武藤様はお美しい。やばすぎ。何なの? 逆に怒り湧いてきた。この美しさを生み出した世界、流石に本気出しすぎ。利き手五本あったんか?

「田中さん、何てイカしてるんだ」「っぱ園芸委員長は田中さんしかありえねぇよな!?」「園芸委員会一同、田中様がその服に袖を通す日を楽しみにしてまいりましたー!!」

何だこの人たち。何が見えてるんだ。
武藤様への賛美に紛れ、気が狂った人たちの感想も出現する。いや俺の顔がいいのは認めるが、流石に無茶あるだろ、この着ぐるみはよぉ!

ワァワァと好き勝手言うのを死んだ目で眺めていれば、とんとんと肩……肩? を叩かれる。

「──みなっ、ひろちゃん!!」
「げっ、水瀬ひろし」
「よう園芸委員長。いい格好してんな」
「ひろちゃんまでそんなこと言う~!」

水瀬は海賊仮装だった。ドクロマークの海賊帽にジャボ、生地のしっかりしたブロックコート。がっしりと編み上げたブーツに袖から除く上質なフリルが衣装班の性癖ヘキを窺わせる。

からりとした人の良さそうな笑顔に眼帯がミスマッチで、だがまさに救国顔って感じの人懐こく男らしい見た目によく似合う。

「テメェ、何の用だ? まだ待機だろうが」
「おっと、そう怒るなよ子犬ちゃん。俺はただ、不安に泣いてるだろう友人を励ましにきただけだぜ?」
「お優しいこったな」
「どーも」

あ、やっぱそこ仲悪いんだ。
武藤様は昼にこちらへ食事をとりにくることがなくなったので、何となく喉元過ぎていた。友達と憧れの人が対等に喧嘩してる時の空間気まずすぎる。

俺は早々に離脱した。逃げではない、逃げでは。

「あ、第一走者? よろしくね~」
「…………」

そして指定された列に並んでみたが、隣の人にはゴリゴリに無視された。

……折れてないもんね、心!
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