王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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密着! 夏休み旅行!

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さて臨時収入が入ったワケだが、これを使おうとすれば真道の視線がうるさいので大人しくホテルに帰ろうか算段をつける。名もなき喫茶店──俺が覚えていないだけだが──はいつも通り平時通り平穏で、姉がバイトしている以外は快適だった。

「姉ちゃん次シフトない時いつよ」
「後で送るわ。二度とバイト中に来んじゃないぞ」
「は? 誰が好き好んでゴリラの顔見ながらミルク飲あいだだだだだ」

まじで次はシフトない時に来よう。せっかくのコーヒーも不味くなるわ!
頭の形が凹むくらいアイアンクローをかけられ姉と別れる。

姉ちゃんは口にしないし俺も言わないけど、ふつうに元気に働けるくらいに回復してよかったとは思う。
みつるもここでお友達も出来たらしいし、血縁が暗い顔をしているのはやっぱり落ち着かない。

「でも結構長居しちゃったな~。せっかく高級旅館なんだし、さっさと帰って風呂入りた~い」

昨日は結局疲れて眠ってしまったのだ。ちなみに手錠外しは危ないので禁止された。仁川先生にも前科とかないか確認されちまったぜ。失礼である。

「その事だが師匠──」
「あ!!!! おじちゃん!!!!」

海に続く坂道。何かを言おうとした真道を遮って、我が家の天使ことみつるの可愛い声が上の方から降ってきた。坂の上には小学校があるので、今帰りなのだろう。小学二年生は確か二時くらいに授業が終わるので。いいな……。

「みつる、おかえり~」
「おお、師匠の甥御おいごか。元気だな」
「ただいま! お客さんもこんにちは」

しゃがんで小さな体を抱き止める。手錠で痛くない方でふわふわの猫っ毛を思い切り撫でくりまわすと、きゃぁーっと子供らしい楽しげな悲鳴が上がった。
こねこってワ°ーとかピャーみたいな声出すけど可愛いよな。今のみつるはそれです。

「宗介おじちゃん、昨日いなくてびっくりした! 何でいないの? 向こう帰っちゃうの?」
「わぁ~ほんとだ何で俺いないんだろうな~もう帰っちゃおっかな~」
「田中宗介!」
「ゔ。わぁーってまーす」

とはいえ胸にぎゅむりと顔を埋められ、そっと上目遣いでこちらを眺められたら陥落せざるを得ないだろ。
ただでさえ俺や姉に似ておらず可愛らしい顔をしているというのに。

まぁ父親似というのも複雑っちゃ複雑な話だが、その場合みつるが父親最低男に似ているのではなく父親ゴミがみつるにたまたま似ている組成をしてしまっただけということで。

「ま、冗談は置いといて~、お兄ちゃんこの数日は学校の旅行で来てるから、お家には帰れないんだよね~」
「ええー!! なんでなんで、ゲームたくさん買ったのにー!!」
「えっ~~~~そんなに寂しかったの~?? きゃわいいね~キスしちゃお」
「セクハラです」
「急に落ち着くじゃん」

可愛いデレに大はしゃぎしたらこれである。おじなんて所詮ツンとデレの波に期待しては悲しむムーヴをしてろって? ウーンさすが我が甥、痺れる決断だ。

とはいえ確かにみつるは……正直、それは年齢制限的にありなのかみたいなゲームばっかりやってるんだよな……代わりに運動とか嫌いだし。
そのため、みつるとまともに遊べるのが中学くらいの時にそのゲームを擦ってた俺しかいないのである。

いくら現代が進んでいるとはいえウチは過疎ってる港町。遊びといえば泳ぎだし、そうでなくとも今時の子はゲームだろう。
子供も少ないので一度流行った遊びは永遠に流行っているのだ。
俺も子供の頃消しピンとバトエンとニチアサヒーローごっこを永遠に擦っていた。

度胸試しとして灯台の辺りから海に飛び降りるとか橋から川に飛ぶとかあるけど、個人的に危険なので教えたくない。

「にいちゃん的にガキは外で遊んで欲しいんだよな~。ねぇ真道」
「今時は人それぞれだろう。俺たちが子供の頃と比べてさえ、遊び場も少なくなってきているしな」
「ぐっ、そうだった真道家は考えが新しいんだ」

とはいえこの閉鎖的な空間で都会みたいな考えは通用しないのだ。良くも悪くも人々の関係性が密接なのだから。

「みつるくーん。外で遊んでみない~?」
「やだ。外遊び嫌い」
「なぁに~? 前一緒にサッカーした時は楽しいっていってたじゃ~ん。気ぃ使ったんですかこのかわい子ちゃんは~」
「ちあうーー……」

ひとしきりむにむにしたあと、ひとまず実家まで送り届ける事にして手を繋ぎ立ち上がった。坂を降りようとした動きで気がついたのか、ぎゅっとしがみつくように手を強く握り返される。かわい~!!

「この間サッカーで顔に当たったの。しかも三回!」
「あちゃあ……」
「子供は思い切り蹴るからな」

実感のこもった嘆きがもう片方、手錠で繋がった先の真道から放たれた。コイツもそういうの馴染みあるんだな。ああでも武藤様とか副会長とかと幼馴染だったんだっけ、兄貴分で。

「それでヤになっちゃったんだ~」
「でもみんなサッカーに夢中で、やってみたら楽しいとか言うけど絶対ウソ! 楽しくなかったし、一緒にすると絶対負けるし、もうしたくない!」
「ありゃ」

みつるがむいむいとTシャツの首元を頭に引っ掛け、拗ねジャミラになってしまった。のしのしと歩くジャミラ。すっかり不貞腐れている。

(みつるも別にサッカーが本気で嫌いって訳じゃないんだよな)

サッカーのボールは硬いししんどいけど、みつるは同年代の友達と遊ぶ時は楽しそうなのだ。
体を動かすのが嫌いなんじゃなくて、勝利の経験が少なすぎるのだ。賢いからこそ大人に手加減してもらってもすぐ見抜いてしまってさらに不貞腐れている。

我が甥ながら、と言うか我が甥だからこそなかなかに面倒くさい性格である。現在の俺にそっくりだ。

(とはいえここで無理やりサッカーさせても、今度は本気で運動嫌いになりそうだし)

うんうん、と唸っていた俺にある妙案が降ってきた。

「みつる、クラスメイトってどのへんにいる?」
「え? えっと、この時間なら公園で遊んでると思う……」
「そかそか。それじゃ、にいちゃんの部屋からあるものを持ってきて欲しいんだ」

あるもの? と、真道とみつるが揃って首を傾げた。何でそこが共鳴してるんだよ代われお前。
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