王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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密着! 夏休み旅行!

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真っ暗な外に鈴虫の鳴き声。外はライトアップされた木々が覆っていて、その奥から暗い海が見える。夜の潮風が肌を撫でて、濡れた身体には少し寒いくらいだった。

「クソ……」
「いい湯だな」
「まぁ露天風呂だからね……」

結局、すっぽんぽんになってまた手錠をはめられ、温泉に浸かることになってしまった。
別に浴室があるのだから俺はここで体を洗うと誇示をしても規則なのでと首を振られ、お役所仕事を感じた。

逃げてしまおうかと思ったが手つきが鮮やかすぎる。サッと脱いでさっと拘束しさっと洗い風呂に入れられた。何だこれは。

「いつも思っているのだが、不本意な相手とする距離感ではないな。規則なので参加するのだが」
「真面目くんじゃん……まぁ学校行事だし、サボるってのもねぇ~……」

俺は授業とかサボって家でダラダラする時謎の動悸息切れ脂汗に苛まれてうまく休めないタイプの人である。
今回も……武藤様から逃げる目的はあったが、そもそもサボるつもり自体なかった。

「……ふっ」
「え? 何で鼻で笑った?」

真道はダサいメガネを他所に置いて、腰にタオルを巻いていた。本来汚いのでやめた方がいい奴なのだが、流石におっぴろげにするのは抵抗があったらしい。なんか綺麗なタオルだしいいだろう。恥じらいが残っていたみたいで何よりだ。

「ずっと思っていたのだが……お前も、人に言う割に真面目だろう」
「……えっ」

ちゃぷ、と静かな水音と一緒に真道が後ろに寄りかかった。体が温まっているからか、がっしりとした筋肉にやけた肌、体にはいくつも傷がついていた。武藤様は綺麗に鍛え上げた体つきだが、似た境遇の真道はどちらかと言うとイブキに似ている。

使うための筋肉だ、と思った。それもケンカのような荒事で。少なくとも、俺のように単純な力仕事でついた物ではない。鍛えるだけで身につく物でもない。

「……なに~? ヘンないいんちょ~」
「下手に取り繕おうとするところも、一度決めたことは曲げない一途さを感じる」
「誰が下手だよ」

くそ~! やっぱ意味ないのかこのムーヴ。大体真面目なんじゃなくて引っ込みがつかなくなっただけだ。俺はそこまで良さげな性格はしていない。
プライドが高くて卑屈なコミュ障をあまり舐めないでほしい。

「一応言っとくけどな、この顔にお前らは二年半騙されてんだからな! まったく」
「確かにそうだな! 悪かった!」
「そうも素直に謝られると居心地が悪いって~か……」

俺も同じようにうしろのへりに背中をつける。肩まで温かなお湯が掛かって、思わずはふぅとため息が溢れそうになる。体が熱ったら隣に置いてあるベンチに座って冷ましてもいいのだろう。

紛れもない良い旅館だ、と思う。隣の男は生真面目で堅物なスケベ童貞だが、いいやつである。

「あっ、おい」

暗くてよく見えないが、誰かが足の甲をくすぐっている。真道? いや、真面目ちゃんなこいつがこんなことするわけがない、じゃあ誰──

「驚いたか?」
「お前かい!」

真道だった。
足を引っ込めようとすると、爪がきちんと切られた男の足が更に追いかけてくる。こしょこしょとくすぐられて笑いそうになるのを堪えていた。

「っふ、ふふ……ど、どうしたんだよらしくないぞっ、うひひっ」
「旅の恥はかき捨てと言うからな。お前の素顔だけ暴くと言うのも忍びない」
「調子のんなっ、お前のすけべさなんて百も承知──わははははははは!!!!!」

脇の辺りをこしょこしょと擽られる。やめろ! くすぐってられたらくすぐったいんだぞ!

思わず声を上げて笑えばひっくり返りかけて慌てて支えられる。無骨な腕にがっしりと体を掴まれて、逃げようと思う暇もなく脇に更に手を滑らされた。

「ウヒャヒャヒャヒャヒャ!! おいやめっ、ヒィーーッッ!!」
「そういえば、他人に触られてくすぐったいところは前世の死因らしいな」
「怖いこと言うのやめろよ!!」

俺はどうやらどこもかしこも弱いらしく、基本的にどこをくすぐられても全力爆笑を披露している。つまり俺はこの全身が死因である。まじで言ってる? これネットで見た付け焼き刃の知識だったら心の底から怨むからな。

「まぁ付け焼き刃の知識なのだが」
「お前怨むからな!?」

最悪である。天下の風紀委員長がネットなんか見んな。

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