117 / 201
密着! 夏休み旅行!
41
しおりを挟む
お腹いっぱい高級旅館の飯を頬張り、おかわりもして、何故か他の人にも貰って、俺は満足して与えられた部屋で倒れ込んだ。
「はぁ~~もう食べきれなぁい……」
「師匠は健啖家だな」
だだっ広い旅館の部屋は襖で直接入る~みたいなドラマで見る仕組みにはなっていない。玄関のような場所を開け、右手にある襖を開くと客室になる。
客室には離れた位置に布団が敷かれていて、本来はカップルでもない同級生であるので気まずさを持ちながら離れて眠るのが道理だろう。
しかし俺たちは手錠で繋がれているので、仕方なく横並びで眠っている。
客室から見える広縁の丸窓からはライトアップされた夏の青葉が見えていて、これは秋になれば絶景だろうと思わせる。
「お布団近づけとこっか~」
「この過程が地味に億劫だな」
「不真面目ちゃんじゃん」
どっこいせっと起き上がり、夏服から着替えもせず布団をずずずっと近付けた。
向こうでやってくれてもいいと思うが、大きい旅館になってきたのでアルバイトも沢山いる。
マニュアル化したものに気遣いを求めるのは不粋だ。
「せめてこの手錠の可動域が広ければいいのだが……」
「まぁ~こういう旅館は初めてだったんでしょ。あとで意見書いとこ~」
真道と協力して布団を過不足ない──寝返りを打っても余裕がある──程度に近付け、一息つく。
端に寄せられたテーブルにはお菓子の乗った盆が置いてあり、ご自由にどうぞスタイルだ。俺はのそのそと起き上がりそこからルマ○ドさんを取り出した。みんなの味方である。
「まだ食べるのか!」
「これ食べ終わったらお風呂に行きますぅ~」
隣の真道からは呆れられた。いいだろ別にお菓子の一つや二つ、減るもんじゃないし。
……減るもんか。
ルマ○ドさんを食べ終わってしまったので立ち上がる。茶を飲んでいた真道が引きずられて迷惑そうな顔をした。ごめんて、こぼさないようにゆっくり立ったんだから許してくれや。
「風呂入るか……ここ露天風呂なんだっけ」
「うむ」
「うむて」
部屋に露天風呂がついている。大浴場に手錠のまま行くわけにもいかないので、部屋付きの風呂で済ませるのだ。錆びるし。錆びたら痛い。
……んっ? 手錠?
「えっこれもしかして俺ら一緒に入る?」
「ようやく気がついたか」
ようやく思い至って動きを止めた俺に、真道が呆れ返った。めちゃくちゃ鈍い子供を相手するかのような顔だ。俺がめちゃくちゃ鈍い子供みたいなもんであることは否定しないのだけれども。
ええ、どうしよう。流石にちょっと嫌だな人と風呂入るの。関節外そうかな。思えば去年もこういう逡巡をして結局外したのだ。痛い目に遭っても案外忘れられるものだし、やっちゃうか?
「ちなみに俺は風紀なのでお前の無茶なやり方は認められない」
「真面目くんがよォ~」
貞操観念とかないのか? こいつは。なくていいから裸の付き合いという因習の異常性に気がついてほしい。
広縁からさらに奥に出ればテラスのような形で露天風呂がある筈だ。あれにどうしても一人で入りたい。武藤様といいこいつといい天然ボケ幼馴染なのか? あの人らは……
「これ東郷くんと市ヶ谷くんも一緒に入ってんのかな、めちゃくちゃ気まずそう」
「一番気になるのは刑部と九鬼だな……正反対だろう。刑部はああ見えて抜けているところがあるし、九鬼は結構しっかりしてる」
「生徒会には天然しかいないのか?」
それこそイブキだったら平気で手錠抜けの一つや二つ披露できそうだが……やめておこう、副会長は怒ると怖い。
ちら、と後ろを振り向いた。
真顔。真顔である。
今からたいして絡みのない同学年と風呂に入ろうとしているというのに、ものすごい真顔である。
何なんだ? 風紀委員長は泣かないからなの? こういうネットミームあったな。
「……え、まじで入る?」
「入らないのか? 風呂」
「やだよ明日せっかく祭りだし……」
そうだ、今日は早く風呂に入って眠らなければならないのだ。明日は昼くらいからずっと忙しいし、二日風呂キャンは俺自身が許さない。ただでさえ肌も髪も荒れてるっていうのに。
「手錠外して入るとかは、俺出来るよ……」
「ダメに決まってるだろう! どうしてそんなにお前は自分の関節を痛めつけるんだ」
「痛めつけたくてつけてるわけじゃないんですけど」
しかしどうやって上の服を脱ぐつもりなのか。一緒に入るにしろ、手錠を外す工程がないとリラックスも何もないと思うのだけれど。
「着替える間手錠は外しておこう」
「……」
あんのかい、鍵。
もうこのまま大浴場にダッシュしてお風呂入っちゃおっかな。
チラッと襖の方を見ると読まれていたのか肩をがしりと掴まれた。顔が怖いよ風紀委員長……
「てか風紀委員長なのに一緒にお風呂♡とかいいのかよ!?!? 守んなくていいの風紀はァ!」
「確かに風紀の乱れる行為だが、これでも学校行事なのでな。ちなみに俺は一年の頃からこの形式をやめるように進言している」
くそ、ここの理事長って一生色ボケだからな……
「はぁ~~もう食べきれなぁい……」
「師匠は健啖家だな」
だだっ広い旅館の部屋は襖で直接入る~みたいなドラマで見る仕組みにはなっていない。玄関のような場所を開け、右手にある襖を開くと客室になる。
客室には離れた位置に布団が敷かれていて、本来はカップルでもない同級生であるので気まずさを持ちながら離れて眠るのが道理だろう。
しかし俺たちは手錠で繋がれているので、仕方なく横並びで眠っている。
客室から見える広縁の丸窓からはライトアップされた夏の青葉が見えていて、これは秋になれば絶景だろうと思わせる。
「お布団近づけとこっか~」
「この過程が地味に億劫だな」
「不真面目ちゃんじゃん」
どっこいせっと起き上がり、夏服から着替えもせず布団をずずずっと近付けた。
向こうでやってくれてもいいと思うが、大きい旅館になってきたのでアルバイトも沢山いる。
マニュアル化したものに気遣いを求めるのは不粋だ。
「せめてこの手錠の可動域が広ければいいのだが……」
「まぁ~こういう旅館は初めてだったんでしょ。あとで意見書いとこ~」
真道と協力して布団を過不足ない──寝返りを打っても余裕がある──程度に近付け、一息つく。
端に寄せられたテーブルにはお菓子の乗った盆が置いてあり、ご自由にどうぞスタイルだ。俺はのそのそと起き上がりそこからルマ○ドさんを取り出した。みんなの味方である。
「まだ食べるのか!」
「これ食べ終わったらお風呂に行きますぅ~」
隣の真道からは呆れられた。いいだろ別にお菓子の一つや二つ、減るもんじゃないし。
……減るもんか。
ルマ○ドさんを食べ終わってしまったので立ち上がる。茶を飲んでいた真道が引きずられて迷惑そうな顔をした。ごめんて、こぼさないようにゆっくり立ったんだから許してくれや。
「風呂入るか……ここ露天風呂なんだっけ」
「うむ」
「うむて」
部屋に露天風呂がついている。大浴場に手錠のまま行くわけにもいかないので、部屋付きの風呂で済ませるのだ。錆びるし。錆びたら痛い。
……んっ? 手錠?
「えっこれもしかして俺ら一緒に入る?」
「ようやく気がついたか」
ようやく思い至って動きを止めた俺に、真道が呆れ返った。めちゃくちゃ鈍い子供を相手するかのような顔だ。俺がめちゃくちゃ鈍い子供みたいなもんであることは否定しないのだけれども。
ええ、どうしよう。流石にちょっと嫌だな人と風呂入るの。関節外そうかな。思えば去年もこういう逡巡をして結局外したのだ。痛い目に遭っても案外忘れられるものだし、やっちゃうか?
「ちなみに俺は風紀なのでお前の無茶なやり方は認められない」
「真面目くんがよォ~」
貞操観念とかないのか? こいつは。なくていいから裸の付き合いという因習の異常性に気がついてほしい。
広縁からさらに奥に出ればテラスのような形で露天風呂がある筈だ。あれにどうしても一人で入りたい。武藤様といいこいつといい天然ボケ幼馴染なのか? あの人らは……
「これ東郷くんと市ヶ谷くんも一緒に入ってんのかな、めちゃくちゃ気まずそう」
「一番気になるのは刑部と九鬼だな……正反対だろう。刑部はああ見えて抜けているところがあるし、九鬼は結構しっかりしてる」
「生徒会には天然しかいないのか?」
それこそイブキだったら平気で手錠抜けの一つや二つ披露できそうだが……やめておこう、副会長は怒ると怖い。
ちら、と後ろを振り向いた。
真顔。真顔である。
今からたいして絡みのない同学年と風呂に入ろうとしているというのに、ものすごい真顔である。
何なんだ? 風紀委員長は泣かないからなの? こういうネットミームあったな。
「……え、まじで入る?」
「入らないのか? 風呂」
「やだよ明日せっかく祭りだし……」
そうだ、今日は早く風呂に入って眠らなければならないのだ。明日は昼くらいからずっと忙しいし、二日風呂キャンは俺自身が許さない。ただでさえ肌も髪も荒れてるっていうのに。
「手錠外して入るとかは、俺出来るよ……」
「ダメに決まってるだろう! どうしてそんなにお前は自分の関節を痛めつけるんだ」
「痛めつけたくてつけてるわけじゃないんですけど」
しかしどうやって上の服を脱ぐつもりなのか。一緒に入るにしろ、手錠を外す工程がないとリラックスも何もないと思うのだけれど。
「着替える間手錠は外しておこう」
「……」
あんのかい、鍵。
もうこのまま大浴場にダッシュしてお風呂入っちゃおっかな。
チラッと襖の方を見ると読まれていたのか肩をがしりと掴まれた。顔が怖いよ風紀委員長……
「てか風紀委員長なのに一緒にお風呂♡とかいいのかよ!?!? 守んなくていいの風紀はァ!」
「確かに風紀の乱れる行為だが、これでも学校行事なのでな。ちなみに俺は一年の頃からこの形式をやめるように進言している」
くそ、ここの理事長って一生色ボケだからな……
127
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる