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密着! 夏休み旅行!
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お腹いっぱい高級旅館の飯を頬張り、おかわりもして、何故か他の人にも貰って、俺は満足して与えられた部屋で倒れ込んだ。
「はぁ~~もう食べきれなぁい……」
「師匠は健啖家だな」
だだっ広い旅館の部屋は襖で直接入る~みたいなドラマで見る仕組みにはなっていない。玄関のような場所を開け、右手にある襖を開くと客室になる。
客室には離れた位置に布団が敷かれていて、本来はカップルでもない同級生であるので気まずさを持ちながら離れて眠るのが道理だろう。
しかし俺たちは手錠で繋がれているので、仕方なく横並びで眠っている。
客室から見える広縁の丸窓からはライトアップされた夏の青葉が見えていて、これは秋になれば絶景だろうと思わせる。
「お布団近づけとこっか~」
「この過程が地味に億劫だな」
「不真面目ちゃんじゃん」
どっこいせっと起き上がり、夏服から着替えもせず布団をずずずっと近付けた。
向こうでやってくれてもいいと思うが、大きい旅館になってきたのでアルバイトも沢山いる。
マニュアル化したものに気遣いを求めるのは不粋だ。
「せめてこの手錠の可動域が広ければいいのだが……」
「まぁ~こういう旅館は初めてだったんでしょ。あとで意見書いとこ~」
真道と協力して布団を過不足ない──寝返りを打っても余裕がある──程度に近付け、一息つく。
端に寄せられたテーブルにはお菓子の乗った盆が置いてあり、ご自由にどうぞスタイルだ。俺はのそのそと起き上がりそこからルマ○ドさんを取り出した。みんなの味方である。
「まだ食べるのか!」
「これ食べ終わったらお風呂に行きますぅ~」
隣の真道からは呆れられた。いいだろ別にお菓子の一つや二つ、減るもんじゃないし。
……減るもんか。
ルマ○ドさんを食べ終わってしまったので立ち上がる。茶を飲んでいた真道が引きずられて迷惑そうな顔をした。ごめんて、こぼさないようにゆっくり立ったんだから許してくれや。
「風呂入るか……ここ露天風呂なんだっけ」
「うむ」
「うむて」
部屋に露天風呂がついている。大浴場に手錠のまま行くわけにもいかないので、部屋付きの風呂で済ませるのだ。錆びるし。錆びたら痛い。
……んっ? 手錠?
「えっこれもしかして俺ら一緒に入る?」
「ようやく気がついたか」
ようやく思い至って動きを止めた俺に、真道が呆れ返った。めちゃくちゃ鈍い子供を相手するかのような顔だ。俺がめちゃくちゃ鈍い子供みたいなもんであることは否定しないのだけれども。
ええ、どうしよう。流石にちょっと嫌だな人と風呂入るの。関節外そうかな。思えば去年もこういう逡巡をして結局外したのだ。痛い目に遭っても案外忘れられるものだし、やっちゃうか?
「ちなみに俺は風紀なのでお前の無茶なやり方は認められない」
「真面目くんがよォ~」
貞操観念とかないのか? こいつは。なくていいから裸の付き合いという因習の異常性に気がついてほしい。
広縁からさらに奥に出ればテラスのような形で露天風呂がある筈だ。あれにどうしても一人で入りたい。武藤様といいこいつといい天然ボケ幼馴染なのか? あの人らは……
「これ東郷くんと市ヶ谷くんも一緒に入ってんのかな、めちゃくちゃ気まずそう」
「一番気になるのは刑部と九鬼だな……正反対だろう。刑部はああ見えて抜けているところがあるし、九鬼は結構しっかりしてる」
「生徒会には天然しかいないのか?」
それこそイブキだったら平気で手錠抜けの一つや二つ披露できそうだが……やめておこう、副会長は怒ると怖い。
ちら、と後ろを振り向いた。
真顔。真顔である。
今からたいして絡みのない同学年と風呂に入ろうとしているというのに、ものすごい真顔である。
何なんだ? 風紀委員長は泣かないからなの? こういうネットミームあったな。
「……え、まじで入る?」
「入らないのか? 風呂」
「やだよ明日せっかく祭りだし……」
そうだ、今日は早く風呂に入って眠らなければならないのだ。明日は昼くらいからずっと忙しいし、二日風呂キャンは俺自身が許さない。ただでさえ肌も髪も荒れてるっていうのに。
「手錠外して入るとかは、俺出来るよ……」
「ダメに決まってるだろう! どうしてそんなにお前は自分の関節を痛めつけるんだ」
「痛めつけたくてつけてるわけじゃないんですけど」
しかしどうやって上の服を脱ぐつもりなのか。一緒に入るにしろ、手錠を外す工程がないとリラックスも何もないと思うのだけれど。
「着替える間手錠は外しておこう」
「……」
あんのかい、鍵。
もうこのまま大浴場にダッシュしてお風呂入っちゃおっかな。
チラッと襖の方を見ると読まれていたのか肩をがしりと掴まれた。顔が怖いよ風紀委員長……
「てか風紀委員長なのに一緒にお風呂♡とかいいのかよ!?!? 守んなくていいの風紀はァ!」
「確かに風紀の乱れる行為だが、これでも学校行事なのでな。ちなみに俺は一年の頃からこの形式をやめるように進言している」
くそ、ここの理事長って一生色ボケだからな……
「はぁ~~もう食べきれなぁい……」
「師匠は健啖家だな」
だだっ広い旅館の部屋は襖で直接入る~みたいなドラマで見る仕組みにはなっていない。玄関のような場所を開け、右手にある襖を開くと客室になる。
客室には離れた位置に布団が敷かれていて、本来はカップルでもない同級生であるので気まずさを持ちながら離れて眠るのが道理だろう。
しかし俺たちは手錠で繋がれているので、仕方なく横並びで眠っている。
客室から見える広縁の丸窓からはライトアップされた夏の青葉が見えていて、これは秋になれば絶景だろうと思わせる。
「お布団近づけとこっか~」
「この過程が地味に億劫だな」
「不真面目ちゃんじゃん」
どっこいせっと起き上がり、夏服から着替えもせず布団をずずずっと近付けた。
向こうでやってくれてもいいと思うが、大きい旅館になってきたのでアルバイトも沢山いる。
マニュアル化したものに気遣いを求めるのは不粋だ。
「せめてこの手錠の可動域が広ければいいのだが……」
「まぁ~こういう旅館は初めてだったんでしょ。あとで意見書いとこ~」
真道と協力して布団を過不足ない──寝返りを打っても余裕がある──程度に近付け、一息つく。
端に寄せられたテーブルにはお菓子の乗った盆が置いてあり、ご自由にどうぞスタイルだ。俺はのそのそと起き上がりそこからルマ○ドさんを取り出した。みんなの味方である。
「まだ食べるのか!」
「これ食べ終わったらお風呂に行きますぅ~」
隣の真道からは呆れられた。いいだろ別にお菓子の一つや二つ、減るもんじゃないし。
……減るもんか。
ルマ○ドさんを食べ終わってしまったので立ち上がる。茶を飲んでいた真道が引きずられて迷惑そうな顔をした。ごめんて、こぼさないようにゆっくり立ったんだから許してくれや。
「風呂入るか……ここ露天風呂なんだっけ」
「うむ」
「うむて」
部屋に露天風呂がついている。大浴場に手錠のまま行くわけにもいかないので、部屋付きの風呂で済ませるのだ。錆びるし。錆びたら痛い。
……んっ? 手錠?
「えっこれもしかして俺ら一緒に入る?」
「ようやく気がついたか」
ようやく思い至って動きを止めた俺に、真道が呆れ返った。めちゃくちゃ鈍い子供を相手するかのような顔だ。俺がめちゃくちゃ鈍い子供みたいなもんであることは否定しないのだけれども。
ええ、どうしよう。流石にちょっと嫌だな人と風呂入るの。関節外そうかな。思えば去年もこういう逡巡をして結局外したのだ。痛い目に遭っても案外忘れられるものだし、やっちゃうか?
「ちなみに俺は風紀なのでお前の無茶なやり方は認められない」
「真面目くんがよォ~」
貞操観念とかないのか? こいつは。なくていいから裸の付き合いという因習の異常性に気がついてほしい。
広縁からさらに奥に出ればテラスのような形で露天風呂がある筈だ。あれにどうしても一人で入りたい。武藤様といいこいつといい天然ボケ幼馴染なのか? あの人らは……
「これ東郷くんと市ヶ谷くんも一緒に入ってんのかな、めちゃくちゃ気まずそう」
「一番気になるのは刑部と九鬼だな……正反対だろう。刑部はああ見えて抜けているところがあるし、九鬼は結構しっかりしてる」
「生徒会には天然しかいないのか?」
それこそイブキだったら平気で手錠抜けの一つや二つ披露できそうだが……やめておこう、副会長は怒ると怖い。
ちら、と後ろを振り向いた。
真顔。真顔である。
今からたいして絡みのない同学年と風呂に入ろうとしているというのに、ものすごい真顔である。
何なんだ? 風紀委員長は泣かないからなの? こういうネットミームあったな。
「……え、まじで入る?」
「入らないのか? 風呂」
「やだよ明日せっかく祭りだし……」
そうだ、今日は早く風呂に入って眠らなければならないのだ。明日は昼くらいからずっと忙しいし、二日風呂キャンは俺自身が許さない。ただでさえ肌も髪も荒れてるっていうのに。
「手錠外して入るとかは、俺出来るよ……」
「ダメに決まってるだろう! どうしてそんなにお前は自分の関節を痛めつけるんだ」
「痛めつけたくてつけてるわけじゃないんですけど」
しかしどうやって上の服を脱ぐつもりなのか。一緒に入るにしろ、手錠を外す工程がないとリラックスも何もないと思うのだけれど。
「着替える間手錠は外しておこう」
「……」
あんのかい、鍵。
もうこのまま大浴場にダッシュしてお風呂入っちゃおっかな。
チラッと襖の方を見ると読まれていたのか肩をがしりと掴まれた。顔が怖いよ風紀委員長……
「てか風紀委員長なのに一緒にお風呂♡とかいいのかよ!?!? 守んなくていいの風紀はァ!」
「確かに風紀の乱れる行為だが、これでも学校行事なのでな。ちなみに俺は一年の頃からこの形式をやめるように進言している」
くそ、ここの理事長って一生色ボケだからな……
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