王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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ふれあい動物園でハムスターを手の上に乗せたらうごうごして小さい足で登ってきたのでパニックになって震えながら助けを求めた思い出がある。

「つか、ボディーガードは昇格なのかよ。今までなんて呼ばれてたんだ。雑魚兵?」
「兵士職における昇格だと思ってる? 分岐で傭兵とかいそう……じゃなくて。知らんの?」

はぐれないように注意しながら喧騒をかき分けて昇降口に足を進める。ここで手の一つでも繋げたら良かったのだけれど、あいにくそんな度胸はない。

「愛人とか。遊んでる関係だーって言われてたんだよ」
「っな………!」
「同居人だったの知らないだろうし」

同居の件に関して、周囲に言うこともなかったので急に仲良くなったと思われている。そこで趣味が合っただとかそういう和やかな解釈をしない辺り王道高校ウチって感じだけど、武藤様からしてみれば違うらしい。

絶句した後、喧騒に紛れて舌打ちが聞こえてきた。

「てめーも抵抗しろ」
「名誉に関して言ったら今更じゃんけ~」
「……誤解は解いておく」
「いやそれだと逆にガチっぽいから」

最近は裏番という噂もあってか、尻の軽いチャラ男というよりヤンキー系の噂が増えまくっている。完全に自己プロデュースをミスっているが、もうやけくそである。もうすぐ卒業! 十二月からは自由登校!! わっふい!

昇降口から校舎内に入ると、やはりなかなか賑わっていた。ひとまず昨日と同じように一年生のエリアから見て回ろう。メイド喫茶で地獄を見た以外だと、一日で文化祭を回るにはそれが一番だ。

「っぷはぁ! あーもう、髪グチャグチャ……まさかここまで賑わうとはなぁ」

毎年思ってる気がする。さて、どこから見回ろうか。武藤様は気になるところあるかな、と後ろを振り向いて──

「あれっ武藤様!? ああーーー流されてる!!」

体育館でのパフォーマンスを見に行く人達の流れに乗ってしまったらしく、こっちを見ながらどんぶらこと流されていくのを見つけた。

「フン、なかなか集客が見込めるじゃねぇか……」

やけに冷静だな。

「このカードゲーム大会」

いや違うあれ混乱してる。今まで彼の歩く道は誰もが開けてたから、無遠慮な他人にもみくちゃにされるのが初めてなんだ。
普通御曹司の顔なんて覚えてないしなみんな……!

「あーもうっ、すみませんすみません! 申し訳ない! ちょっと知り合いが、すぐ出ますんで! 武藤様チケット買わないでいいから!」

ほんとに面白いなあの人!
慌てて人混みをかき分けてかき分けて、海流のひとつみたいに体育館に流れていく人達の列に合流する。

さらにそこからされるがままにどんぶらどんぶらと流されて行っている武藤様の元に辿り着いた。
困惑した顔をしている。かわいそうだ。

「何してんのマジで! 早く抜けるよ!」
「おっ坊主達イケメンだなー! 見てくのかい?」
「あらかっこいい子達ね~アイドルさん?」
「いやいや在校生です……ほら固まってないで、ああ~虚無になってる顔が」

せめてかっこいいを維持しようとしたのか、ニヒルな薄笑いのまま武藤様はカチンと固まっていた。びっくりしたのだろう。時折小動物みたいな人である。
フランクに話しかけてくる周りに対応しつつ、親切心から道を開けてもらう。急いで出ないと。
でも武藤様びっくりしちゃってるし、あーもう仕方ないか!

「っほら!」
「!」

ぎゅむ、と無骨だが俺よりは細くて綺麗な手を握る。触った感じ、ちょっとカサついていた。秋だもんな。
ズボンで手汗は拭いたけど、きっとまたこの体温に出てきていることだろう。現に顔が熱いし。

「あらあら、なかよしねぇ~」
「婆さん言ってやんなよ、野暮ってもんだぜ!」
「そうなの?」
「ヘヘッ、頑張りな坊主!」
「あっ、ありがとうございます……ああもう早く行こっ!」
「照れてやーんの」

おじさんの激励を受け、汗ばんだ手のひらを握り込んで列から引き摺り出す。武藤様は俺の手のひらを見てパチリと目を瞬かせていた。
手を繋いで二人連れ立って昇降口まで戻るけれど、その短い間に何度心臓が動いたのか。まさに死んでしまいそうな心地で。

頭の裏でどくどくとうるさい体を騙し騙しに、足を意識して高く上げてぎくしゃくと歩いて。気を抜いたら転んでしまいそうだった。

後ろで武藤様がもつれたような感触があって、でも俺と武藤様は歩幅もかわんないから、緊張していたのなら嬉しい。

「……悪ィ」
「ん」

別に気にしてない。でも、今はそう返せるような感じではない。
ようやく辿り着いた昇降口。傘置き場の近くでしゃがみ込んで顔を隠す俺に何を思ったのか、武藤様も何も言わなかった。

手にはまだ感触が残っている。ガヤガヤとざわついている人垣の声には多分手を繋いでいた俺たちについての言及もあるのだろうけれど、何一つ聞こえなかった。

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