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監禁! 最後の文化祭
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五分後。項垂れる来賓の前で、俺は奪い返したデッキを淡々と並べていた。
「いやぁよくないよ、子供をターゲットにした賭け事はさぁ。楽しい? 自分より弱い相手に勝って。俺は楽しくなかったなー」
「ぐぬぬぬぬぬ」
「まぁ別に、これらが欲しいならまた俺に勝負挑んでくれていいけど」
来賓の男は俺の言葉に言い返しもせず、ギッと俺を睨みつけてそのままどこかに走り去っていってしまった。一応問題行動として教師に通報しておいたから、後で対処してくれることだろう。
本来ペケモンカードは対戦時間30分。戦法の中には引き伸ばし戦法もあり、制限時間いっぱいまで戦うことも多い。クソ遅延行為である、俺はこれの方が好き。
だが今回使ったのは正道の速攻デッキ。強く、早く攻撃ができるがハイリスクで、こちらは一枚落とされたらそのまま負けという状況。
──はったりだったが、本当に速攻で終わらせられてよかった。
去っていく背中を見送って、ぽかんと口を開けている店員役らしい生徒に整理したデッキを渡した。
「とはいえ、ルールに反して勝手にカードを賭けたのも事実だからねぇ。おれがそのまま返すわけにもいかんので、子供の様子を見て返してあげるといいと思うよぉ~」
「へぁっ、あっはい、その、ありがとうございます田中様……っ!」
ぽぽぽぽっと一年生らしき生徒の頬が染まる。その反応はおかしいだろ、カードゲームしただけで。見た目マジでガキくさいじゃんカードゲーム。普通に地味だし。百害あって一利なしだよ。それでやめられないからダメなんですけどね!!
構わんよ、と笑顔を作ればさらに頬が染まっていた。
「あの、俺もうすぐシフト終わるんで、ちょっとでいいので俺と──」
「あ、ちょっと」
感極まったらしい生徒が胸元に縋ってくる。俺より身長が低いので自動的に上目遣いになっていて、可愛らしいと言えば可愛らしい。縋りつ枯れるのはいいが、ちょっと胸を揉んでない? セクハラだぞ、男のそんな場所揉んで何が楽しいかわかんないけど。
「ふかふかだ」
「セクハラなんだけど????」
揉まないで欲しい。どいつもこいつも人の胸をなんだと思ってるんだ。
困ったな、多分後で一緒に回ろうと言ってくれてるんだろうけど……俺は武藤様と一緒に回る予定だし。
どう断ろうかと言葉を選んでいると、隣から凛とした声が飛んでくる。
「おい」
「っひゃああ!? ……かっ、会長様!?!?」
武藤様!
どこか不機嫌そうな武藤様が、俺と生徒の隣でこちらをじっとりと見つめていた。まさかの大物の登場に全身を跳ねさせて驚いた生徒の隙をついてするりと高速から抜け出す。
「ただいま~。いやーごめん、遅くなっちゃって」
「嘘つけ。さっさと勝ってたじゃねぇか。用がないとこに止まんじゃねぇ」
そうはいっても事後処理があるわけだし。ただ待っててくれているのは事実なので、ごめんごめんと頭を掻く。
すっかり固まっている生徒にはちゃっかりウインクをお見舞いしておいた。田中様って呼んでたし、親衛隊の子だろう。あんまり噂にしないでね。
「テメーは誰にでも媚び売るな」
「武藤様が買ってくんないからね。てか試合が5分で終わるって結構すごい実力差だからね? 褒めてくれてもよかったのに」
「褒められてーのか」
「若干恥ずかしい」
高校生にもなってカードが強いで好きな子に褒められたいかと聞かれると否である。わかる人にだけわかっていればいいという精神性があるのも要因だろうけど。
若干不機嫌な武藤様だったが、話自体は普通にしてくれる。これは何かに拗ねているのだろう。まぁ、本人が言わないなら放置していた方がいいかな。
ゲームコーナーを出ると、フードコートの方に目が行った。出張アネラの方は……あれっ、イブキじゃない!?!?
てかそもそもうちの生徒でもない。
「花音さん……!?」
「あ? ……知り合いかよ?」
「知り合いっていうか常連っていうか」
明るい笑顔で周囲に愛想を振り撒いているのは、よく知った女の子。こんなむさっ苦しい男子校ではなく、歴史ある女子校に在籍のはずの花音さんである。
あの人一応従業員だったのか。いや、それはそうかなんか、俺より先にアネラにいたんだから。
「……会いに行きたいんか」
「ええまぁ、一応常連さんだし、挨拶くらいは」
「ほぉ~……」
意外と人見知りするのか、何か不服そうな顔ながらも武藤様が歩き出した。できれば箱入りの花音さんにその不機嫌そうな顔を見せたくはない──美形の真顔なので迫力がありすぎる──が、今のうちに挨拶しておきたいのも事実だ。
怖がらせたと知られたら萌さんにめちゃくちゃ怒られてしまうので、機嫌は今すぐにでも直して欲しいのだが。
「来ねぇのかよ、チャラ男」
「ええ、何そのあだ名。わかったわかったいきます!」
まぁー行っちゃったもんは仕方ないか。何やらやる気が出ているし、可愛いこと話したい欲というものは武藤様にもあるものなのだろうかね。花音さんはそういうのダメだかんね、いやっ、誰でもダメだけど。
「いやぁよくないよ、子供をターゲットにした賭け事はさぁ。楽しい? 自分より弱い相手に勝って。俺は楽しくなかったなー」
「ぐぬぬぬぬぬ」
「まぁ別に、これらが欲しいならまた俺に勝負挑んでくれていいけど」
来賓の男は俺の言葉に言い返しもせず、ギッと俺を睨みつけてそのままどこかに走り去っていってしまった。一応問題行動として教師に通報しておいたから、後で対処してくれることだろう。
本来ペケモンカードは対戦時間30分。戦法の中には引き伸ばし戦法もあり、制限時間いっぱいまで戦うことも多い。クソ遅延行為である、俺はこれの方が好き。
だが今回使ったのは正道の速攻デッキ。強く、早く攻撃ができるがハイリスクで、こちらは一枚落とされたらそのまま負けという状況。
──はったりだったが、本当に速攻で終わらせられてよかった。
去っていく背中を見送って、ぽかんと口を開けている店員役らしい生徒に整理したデッキを渡した。
「とはいえ、ルールに反して勝手にカードを賭けたのも事実だからねぇ。おれがそのまま返すわけにもいかんので、子供の様子を見て返してあげるといいと思うよぉ~」
「へぁっ、あっはい、その、ありがとうございます田中様……っ!」
ぽぽぽぽっと一年生らしき生徒の頬が染まる。その反応はおかしいだろ、カードゲームしただけで。見た目マジでガキくさいじゃんカードゲーム。普通に地味だし。百害あって一利なしだよ。それでやめられないからダメなんですけどね!!
構わんよ、と笑顔を作ればさらに頬が染まっていた。
「あの、俺もうすぐシフト終わるんで、ちょっとでいいので俺と──」
「あ、ちょっと」
感極まったらしい生徒が胸元に縋ってくる。俺より身長が低いので自動的に上目遣いになっていて、可愛らしいと言えば可愛らしい。縋りつ枯れるのはいいが、ちょっと胸を揉んでない? セクハラだぞ、男のそんな場所揉んで何が楽しいかわかんないけど。
「ふかふかだ」
「セクハラなんだけど????」
揉まないで欲しい。どいつもこいつも人の胸をなんだと思ってるんだ。
困ったな、多分後で一緒に回ろうと言ってくれてるんだろうけど……俺は武藤様と一緒に回る予定だし。
どう断ろうかと言葉を選んでいると、隣から凛とした声が飛んでくる。
「おい」
「っひゃああ!? ……かっ、会長様!?!?」
武藤様!
どこか不機嫌そうな武藤様が、俺と生徒の隣でこちらをじっとりと見つめていた。まさかの大物の登場に全身を跳ねさせて驚いた生徒の隙をついてするりと高速から抜け出す。
「ただいま~。いやーごめん、遅くなっちゃって」
「嘘つけ。さっさと勝ってたじゃねぇか。用がないとこに止まんじゃねぇ」
そうはいっても事後処理があるわけだし。ただ待っててくれているのは事実なので、ごめんごめんと頭を掻く。
すっかり固まっている生徒にはちゃっかりウインクをお見舞いしておいた。田中様って呼んでたし、親衛隊の子だろう。あんまり噂にしないでね。
「テメーは誰にでも媚び売るな」
「武藤様が買ってくんないからね。てか試合が5分で終わるって結構すごい実力差だからね? 褒めてくれてもよかったのに」
「褒められてーのか」
「若干恥ずかしい」
高校生にもなってカードが強いで好きな子に褒められたいかと聞かれると否である。わかる人にだけわかっていればいいという精神性があるのも要因だろうけど。
若干不機嫌な武藤様だったが、話自体は普通にしてくれる。これは何かに拗ねているのだろう。まぁ、本人が言わないなら放置していた方がいいかな。
ゲームコーナーを出ると、フードコートの方に目が行った。出張アネラの方は……あれっ、イブキじゃない!?!?
てかそもそもうちの生徒でもない。
「花音さん……!?」
「あ? ……知り合いかよ?」
「知り合いっていうか常連っていうか」
明るい笑顔で周囲に愛想を振り撒いているのは、よく知った女の子。こんなむさっ苦しい男子校ではなく、歴史ある女子校に在籍のはずの花音さんである。
あの人一応従業員だったのか。いや、それはそうかなんか、俺より先にアネラにいたんだから。
「……会いに行きたいんか」
「ええまぁ、一応常連さんだし、挨拶くらいは」
「ほぉ~……」
意外と人見知りするのか、何か不服そうな顔ながらも武藤様が歩き出した。できれば箱入りの花音さんにその不機嫌そうな顔を見せたくはない──美形の真顔なので迫力がありすぎる──が、今のうちに挨拶しておきたいのも事実だ。
怖がらせたと知られたら萌さんにめちゃくちゃ怒られてしまうので、機嫌は今すぐにでも直して欲しいのだが。
「来ねぇのかよ、チャラ男」
「ええ、何そのあだ名。わかったわかったいきます!」
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