悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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『君と待つ光』

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さて、ルースとヴィンセントの邂逅以外は、入学式もきちんとシナリオ通りに進んだらしい。現在はルースは部活見学。入る部活によってパラメータや攻略対象が決まるぞ!
本来学級長であるはずのヴィンセントだが、現状は特に部活にもおらずフラフラしている。強いていうなら馬術部には顔を出しているだろうか? ワイアットもいるし、先生からの覚えも何かといい部活なので、ヴィンセントのような問題児が隠れ蓑にするにはちょうどいいのだ。

「部活か。まぁ、個人的には馬術部だな。安定しているし……錬金部は今年も後輩が入らなかったから、多分来年くらいには潰れると思うぞ」
「なんてことを言うんでござるか。事実でござるけれど」
「予算もまた減らされたからね」
「頭が痛いですよ本当に……私、これ飲んだらまた意見書書いてきます」

そういうわけで、部活見学に来たルースとついてきた一年生には馬術部をお勧めしておいた。
放課後の錬金部。
相変わらず来れるやつしか来てないコンサバトリーでは、カチカチになったルース、ついてきた一年生二人が紅茶の前でちょこんと座っている。かわいい、せっかくソファなんだから寛げばいいのに……。

「一応、ぼくも成果は上げてるけど……錬金術は積み重ね、だから……実験費が足りなくて、実験出来なくて、出来る範囲だと、少ししか進まない……って繰り返し」
「進んではいるけどな。馬術部みたいに華やかな戦績なんかは無理だよ。そもそも学問として評価され始めたのも最近のことだから」

三年在籍しているからか、錬金部の財布事情を流石に察したらしいセリオンがため息を吐いて紅茶を飲む。美味しく淹れられるんだから出してやればいいのに、なぜか頑なに他人に淹れたがらないんだよな、紅茶。
穏やかなコンサバトリーは今日も花の香りがして、ずっしりと沈み込んだソファは太陽の暖かさにふっかふかだ。

ルースがいつの間にか仲良くなったらしい一年生のうち、一人が青ざめた顔でおずおずと俺を見上げる。

「で、ですが、この部活には、アバロン様がいらっしゃるとお聞きしたのですが……」
「ああ、アバロンの信奉者か? たまに居るんだよな……アイツは滅多に来ないよ。会いたいならヴラド先輩にお願いしないと……会ってもいいことないけどな!」
「そ、そんな言い方」
「やめろよ、お前最近の論文読んでないのか?」

もう一人の子が、いきりたった一年生──十六歳くらいだろうか? エイモンと名乗っていた──を抑える。冷静な言葉と硬い声、いかにも真面目そうな彼はカデン。攻略対象の一人であり、ルースとは同じクラスの同い年だ。

キミヒカでは本来唯一の鋼の倫理観と真面目さを持つ男であり、エイモンくんとは友人らしい。というか思い出したけど、エイモンは本来二年前に死んでいるはずのカデンの幼馴染だ。
えっなんで生きてるの?

「すみません。こいつ、アバロン様の開発した特効薬で病が治って以降熱心な信者でして……」

あ……
ああ~~~~!!

(そういや、俺が昔ねだったことあったな……!)

この学校に入学し、アバロンと話すようになった当初。当時彼の研究には誰も口が出せなかったのだが、カデンの住む村がある病に侵されてほぼ壊滅状態になるのを知っていた俺が、魔物研究を持ち出したのだ。
──毒竜ヴェノムドラゴン。もとい、石化蛇バジリスクの毒についての研究である。

元々石化蛇バジリスク方面に手を出そうとしていたアバロンは、俺が生贄、基護衛になることを条件に論文の公表を宣言。学会に申請が通り、毒に含まれている特殊な成分が判明したことにより、それまで治療不可能とされていた病の特効薬研究は活性化した。それが三年前の出来事。

(貴族であるカデンが友人のために特効薬を手に入れる……そのために一年間は充分すぎたってわけね……)

エイモンは本来、二年前にある村を襲った病に倒れて死んでいるはずだった。カデンは友人であり平民のエイモンが救えなかったことによって心を閉ざし、真面目で真摯で、誰にも心のうちを見せない人間になるのだが……。

「エイモン、お前また文字読むの疲れたなんてふざけたこと言ってるのか? アーノルド様はアバロン様の共同研究者として、初めて論文に書かれた名前なんだぞ!」
「ええーッ!? いや、知らんし! お前みたいな貴族と違って、学者の論文なんて平民は持てないんです~なぁルース!」
「だからってお前誰にでも噛み付くのをやめろ! なぁルース!」

思いっきり心開いてるじゃん……!!
いや、だって、かわいそうだったんだもん!! 村が!!

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