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『君と待つ光』
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戸惑う声を上げる男を抑え込みそのままベッドに寝かせた。
「へ!? ちょっと、待て! 待てって!! イヤ全然やぶさかではないんだけどその場の雰囲気とか正式な告白とかそういうのあるしてか媚薬でのなし崩しって不誠実じゃんせめて約束思い出してから、」
「何騒いでるんだ、寝れないんだが?」
「寝るな!!!!!!!!!」
寝るが……。
ヴィンセントにはこの機に媚薬の危険性について学んでもらおう。もちろん知識上理解はしているだろうが、その上で使うのはあまりにも愚かと言えるだろう。あと学校に許可されてない薬物を持ち込むな。
じたばたと抵抗されるが、相手はセリオンではないので押さえ込みは容易だった。セリオンはか弱いから、俺がセーブしてやらないとどこか折れちゃいそうなんだよな……。
「い、痛みがないのに動けないの怖すぎる……」
「それ以上動こうとすると痛みが出現するぞ」
「自国の王子なんよ」
ヴィンセントの体はきちんと鍛えられていて、少し低い体温がひんやりして気持ちよかった。よく知る体に知らない匂い。と言っては良くないか。こちらも良く知るにおいがする。
媚薬の成分はある程度同じものが使われがちだ。特に、強力なものであり香水になれば。
「いい匂いがする」
すん、と鼻を鳴らした。同時にふわふわとした眠気が襲ってくる。この匂いにつられて流れてくる思い出はいつも、暖かなパンケーキに心地よい睡眠、優しい子守唄と頭を撫でる優しい指先だった。ほどほどに特異な方だろう。
「っ、ね、ぇ、学級長ぉ~? 媚薬吸わされてる時に、そんな、無防備にされると……困るんだけど」
「俺は寝ながらでも関節技をかけられるぞ」
「ふ、不健全睡眠……」
スンスンと嗅いでいれば流石に困ったらしいヴィンセントがどうにか腰を引こうとする。さっきから押し付けてきてたもんな、お前。まぁ体勢は変えられないが。俺は寝ながらでも戦える方のファイターだぜ。
「知ってると思うが……俺、娼館が故郷なんだよ」
「は?」
「知らんかったか」
言ってた気がするんだけどな、幻? ヴィンセントが俺にあまり興味がない可能性とかもある。いや、ないか。ティアは他人に興味津々な子だったから。
そうだ、でも、ヴィンセントには言ってなかったな。カッコつけてたんだ。ティアに、体を売っていると思われたくなくて……ずっとかっこいいアーノルドだと思われていたくて、隠していた。
「里帰りすると、ローズとか、リリィとか、喜んでくれるんだよ……リリィがおやつを作ってくれて、ステラは嫌々だけど相手してくれて、ローズは体調崩してないかとか、お金はあるかとか、色々」
「なんだそりゃ。ないって言ったらどうすんだよ」
「多分、小遣いくれるよ。言ったことないけど。公爵様の息子だぜ? こんな俺がだよ、ふふ……」
娼館の人たちは皆そうだ。鬼の手腕をもつ店長も、俺には幼い頃から厳しく優しくしてくれていた。あの人は元々良い人ではあるのだけれど、体を売らせる相手に感情移入をしないように優しくもしていないだけだ。
「だから、俺にとっては故郷の匂いだ。この匂い……ふぁ……寝る……」
「……アーノルド」
暖かな記憶が蘇る。優しい気持ちで満たされたまま眠れる。それがこの香りだった。
うっとりと肺いっぱいに吸い込んで、ほっぽったテディベアにするみたいに抱きしめた。大きなぬいぐるみを抱っこした時のように抱きしめ返される。
「ちょっと感動しちゃったけど俺はデバフ掛かるんよ。お前のデバフとかは関係なくてね? 学級長!?」
「いや、お前は痛い目にあってろ」
「もうだいぶ痛いよ破裂しそうで!!」
「校内に認可されていない薬物を持ち込むな!! 退学にさせるぞ!!」
「うるっせ寝入りっぱなで元気だなお前は!」
ちなみに媚薬は継続系の魔法だ。先ほど匂いを嗅いで成分を特定したが──きもいとか言うな、魔法薬学も突き詰めれば錬金術だ──この感じならあと二時間くらいで効果がなくなるだろう。
強力で即効性が高い代わりに効果時間が短いんだが、あえて改善したものは買わないぜ。
理由のヒントは性を売り物にする場所で売られてるってところだな。長々と発情されても困る。
「そもそも、お前もわかってるとは思うがある程度理性も戻ってきてるだろう? 強力だからな、嗅ぎたては理性も掻き消える。俺は慣れてるけど」
「いっ……や! だいぶ、だいぶ気合いだかんね!? そういうさぁ、みすみす自分を食わせるみたいな真似やめない? 自傷癖でもあんの!?」
おっ、言ってくれるじゃないか。何度も言っているが、俺は睡眠中に襲われかけたら起きる。というかマウントを取られたり想定外の場所に触れられたら起きる。そこで起きなければ死ぬ環境にいたので。
ヴィンセントの、女好きらしくキスしても痛くなさそうな、柔らかい唇をチョンとつついた。
「お前となら自傷じゃない、って言ったら?」
「──ッ、……、冗談でしょ」
一瞬息を呑む音がして、引き絞られたような声が密かに漏れ出た。
別にあながちそうでもない。ティアのことは大切だし、ルースとくっつく間、こんな価値のない抜け殻なら捧げてやってもよかったが。
(まぁ、そりゃ冗談ってことにしたいか)
何より今思ったらセフレエンドまっしぐらじゃんこれうわ危なっ怖。やっぱ正史のアーノルドも俺っちゃ俺だったんだろうな。そこに恋があるか否かだけであって……。
「当たり前だろ、冗談だ。おやすみ」
「ほんと……お前嫌い……おやすみ!」
助かった。やはりこれこそがシナリオの強制力。割と大半の事件を俺が原因で起こしている気がするが、まぁ強制力ということにしておこう。俺たちはセックスのつかないフレンドです!
「へ!? ちょっと、待て! 待てって!! イヤ全然やぶさかではないんだけどその場の雰囲気とか正式な告白とかそういうのあるしてか媚薬でのなし崩しって不誠実じゃんせめて約束思い出してから、」
「何騒いでるんだ、寝れないんだが?」
「寝るな!!!!!!!!!」
寝るが……。
ヴィンセントにはこの機に媚薬の危険性について学んでもらおう。もちろん知識上理解はしているだろうが、その上で使うのはあまりにも愚かと言えるだろう。あと学校に許可されてない薬物を持ち込むな。
じたばたと抵抗されるが、相手はセリオンではないので押さえ込みは容易だった。セリオンはか弱いから、俺がセーブしてやらないとどこか折れちゃいそうなんだよな……。
「い、痛みがないのに動けないの怖すぎる……」
「それ以上動こうとすると痛みが出現するぞ」
「自国の王子なんよ」
ヴィンセントの体はきちんと鍛えられていて、少し低い体温がひんやりして気持ちよかった。よく知る体に知らない匂い。と言っては良くないか。こちらも良く知るにおいがする。
媚薬の成分はある程度同じものが使われがちだ。特に、強力なものであり香水になれば。
「いい匂いがする」
すん、と鼻を鳴らした。同時にふわふわとした眠気が襲ってくる。この匂いにつられて流れてくる思い出はいつも、暖かなパンケーキに心地よい睡眠、優しい子守唄と頭を撫でる優しい指先だった。ほどほどに特異な方だろう。
「っ、ね、ぇ、学級長ぉ~? 媚薬吸わされてる時に、そんな、無防備にされると……困るんだけど」
「俺は寝ながらでも関節技をかけられるぞ」
「ふ、不健全睡眠……」
スンスンと嗅いでいれば流石に困ったらしいヴィンセントがどうにか腰を引こうとする。さっきから押し付けてきてたもんな、お前。まぁ体勢は変えられないが。俺は寝ながらでも戦える方のファイターだぜ。
「知ってると思うが……俺、娼館が故郷なんだよ」
「は?」
「知らんかったか」
言ってた気がするんだけどな、幻? ヴィンセントが俺にあまり興味がない可能性とかもある。いや、ないか。ティアは他人に興味津々な子だったから。
そうだ、でも、ヴィンセントには言ってなかったな。カッコつけてたんだ。ティアに、体を売っていると思われたくなくて……ずっとかっこいいアーノルドだと思われていたくて、隠していた。
「里帰りすると、ローズとか、リリィとか、喜んでくれるんだよ……リリィがおやつを作ってくれて、ステラは嫌々だけど相手してくれて、ローズは体調崩してないかとか、お金はあるかとか、色々」
「なんだそりゃ。ないって言ったらどうすんだよ」
「多分、小遣いくれるよ。言ったことないけど。公爵様の息子だぜ? こんな俺がだよ、ふふ……」
娼館の人たちは皆そうだ。鬼の手腕をもつ店長も、俺には幼い頃から厳しく優しくしてくれていた。あの人は元々良い人ではあるのだけれど、体を売らせる相手に感情移入をしないように優しくもしていないだけだ。
「だから、俺にとっては故郷の匂いだ。この匂い……ふぁ……寝る……」
「……アーノルド」
暖かな記憶が蘇る。優しい気持ちで満たされたまま眠れる。それがこの香りだった。
うっとりと肺いっぱいに吸い込んで、ほっぽったテディベアにするみたいに抱きしめた。大きなぬいぐるみを抱っこした時のように抱きしめ返される。
「ちょっと感動しちゃったけど俺はデバフ掛かるんよ。お前のデバフとかは関係なくてね? 学級長!?」
「いや、お前は痛い目にあってろ」
「もうだいぶ痛いよ破裂しそうで!!」
「校内に認可されていない薬物を持ち込むな!! 退学にさせるぞ!!」
「うるっせ寝入りっぱなで元気だなお前は!」
ちなみに媚薬は継続系の魔法だ。先ほど匂いを嗅いで成分を特定したが──きもいとか言うな、魔法薬学も突き詰めれば錬金術だ──この感じならあと二時間くらいで効果がなくなるだろう。
強力で即効性が高い代わりに効果時間が短いんだが、あえて改善したものは買わないぜ。
理由のヒントは性を売り物にする場所で売られてるってところだな。長々と発情されても困る。
「そもそも、お前もわかってるとは思うがある程度理性も戻ってきてるだろう? 強力だからな、嗅ぎたては理性も掻き消える。俺は慣れてるけど」
「いっ……や! だいぶ、だいぶ気合いだかんね!? そういうさぁ、みすみす自分を食わせるみたいな真似やめない? 自傷癖でもあんの!?」
おっ、言ってくれるじゃないか。何度も言っているが、俺は睡眠中に襲われかけたら起きる。というかマウントを取られたり想定外の場所に触れられたら起きる。そこで起きなければ死ぬ環境にいたので。
ヴィンセントの、女好きらしくキスしても痛くなさそうな、柔らかい唇をチョンとつついた。
「お前となら自傷じゃない、って言ったら?」
「──ッ、……、冗談でしょ」
一瞬息を呑む音がして、引き絞られたような声が密かに漏れ出た。
別にあながちそうでもない。ティアのことは大切だし、ルースとくっつく間、こんな価値のない抜け殻なら捧げてやってもよかったが。
(まぁ、そりゃ冗談ってことにしたいか)
何より今思ったらセフレエンドまっしぐらじゃんこれうわ危なっ怖。やっぱ正史のアーノルドも俺っちゃ俺だったんだろうな。そこに恋があるか否かだけであって……。
「当たり前だろ、冗談だ。おやすみ」
「ほんと……お前嫌い……おやすみ!」
助かった。やはりこれこそがシナリオの強制力。割と大半の事件を俺が原因で起こしている気がするが、まぁ強制力ということにしておこう。俺たちはセックスのつかないフレンドです!
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