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しおりを挟む泣き出してしまった奏の背中をさすってやりながら、梁瀬は脳内にある木本家の次男の情報を手繰っていたが、全く見つけられなかった。
海外にいる、とだけしか情報が無いのも不自然に感じる。
「お兄さんからは全然連絡無いの?」
「…1度も…ない…。」
「1度も…って…。」
そんな事があるのだろうか。
高校入学前という事は、引き離されて既に10年以上は経っていて、今では2人共 いい大人だ。
実家住まいで親の管理下に置かれている奏はともかく、相手の次男の方は 幾ら親に妨害されたとしたって 連絡ひとつ寄越せないなんて事があるだろうか?
鈴木を見ると、彼もやはり難しい顔をして考え込んでいる。
海外留学、そのまま就職…。
それも、奏が父親から聞かされただけの情報で、真偽の程は明らかではない…。
…まさか、既に…ーーー。
あらぬ想像をしてしまって、背筋に悪寒が走る。
いや、まさかな…。
幾ら兄弟で関係してしまったとはいえ、実の息子だ。
片方は生かして片方は消すなんて真似はしない…しない、よな…?
幾ら政治家でも、幾ら闇深いα社会でも…。
妙な想像を断ち切るように首を振る。
まさかそこ迄非情な事をする訳はない。それに、人1人この世から消えたとなると、後が面倒だ。
(でも…存在を"隠す"事は、可能…。)
身内の、都合の悪い事を、隠す。
世に知られない為に、只隠す為に、普通ならどうするだろうか。
家から出して独立させても力をつければ奏に接触してくるのは明らか。
家から出しても、力を持たせず、外部との接触もさせず、けれどずっと生かしておかねばならない場合…。
「…あ…、」
「…病院…。」
ほぼ同時に同じ推測に行き着いて、鈴木と梁瀬は顔を見合わせる。
例えば、何処か人里離れた山奥の建物にでも軟禁したとしても、身の回りの世話をする使用人が数人置いただけならば、大人の男がその気になれば脱出はできそうだ。 第一、そんな都合のいい物件を所有しているとも限らないし、そんな場所にこそ、数人人が出入りしていれば目立つ。
幾ら過疎地の田舎であろうと、全く人目が無い場所を探すのは困難だ。
今の世の中、完全な遮断は無理ではないだろうか。
そんな面倒な事をするより、最初から設備や監視体制がしっかりしていて、身の回りの世話の心配も情報漏洩の懸念も無くて、即座に放り込める場所。
政治家なんか、都合の悪い時の上得意じゃないか。
「病院か…?」
「病院は病院でも、それなりの所でしょうけどね。」
ヒソヒソと話しているが、果たして奏に聴こえてしまっているのかはわからない。
「なぁ、木本。」
梁瀬は努めて優しい声を出して奏に問いかけた。
「ちぃ兄さんが、もし他の人と結婚してたら、どうする?
結婚じゃなくてもさ、恋人とか、それっぽい人がそばにいたり。」
奏は、え?と目を見開いて、そして数秒後には頬を膨らませて拗ねた表情を作った。
「そんな事ある訳ない!!ちぃ兄さんは俺がいれば良いって言った!!」
「でも、君は俺と結婚する予定だよな?」
「…あ…。」
「なら、お兄さんだって他の人と結婚したって良いって事にならないか?
それに、君だって自分で言ってたように、他の男達を傍に置いてるよな。」
「…だって、だってそれは…ちぃ兄さんが…。」
「お父上に殴られても怒りを買っても、君を望んだお兄さんが、もし帰って来た時に君がもう結婚していたらどう思うだろう。」
「……だって、父さんが…」
「お父さんはどうでも良い。今は君に聞いてる。」
「…俺…、俺は…。」
奏は目をうろうろさせて迷っている。
「俺は、ちぃ兄さんに…
ちぃ兄さんにガッカリされたくない…。
それに、ちぃ兄さんが他の奴をなんて、ヤだ。
俺以外の奴となんて、ヤだよ…。」
奏は初めて、自分で精一杯考えて、正直な気持ちを口にしたのではないかと、梁瀬は思った。
「お兄さんも、同じじゃないかなあ。
君がお兄さんを忘れられないように、お兄さんも君を忘れられてなかったら、きっと今の君の状態を見たら傷つくんじゃないかな。」
「……俺が、ちぃ兄さんを傷つける…?」
奏は一生懸命、考えているようだった。
そして、意を決したように梁瀬に向かって告げた。
「俺…、やっぱ梁瀬とは結婚出来ない…。」
それが、奏の口から はっきりと結婚を拒否する言葉を引き出した瞬間だった。
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