ホテル清掃員の俺がオーナーの御曹司に見初められちゃって自分を略奪してくれって頼まれちゃった話聞く?

Q矢(Q.➽)

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泣きやんだ奏とまた少し話をして、近くの大通り迄送ろうと3人で部屋を出ると、マンションを出て直ぐの曲がり角から 黒塗りの車がゆっくりと滑るように出て来た。

そして、奏の前に自然に停車したかと思うと、運転手が降りてきて奏の前のリヤドアを開けた。
奏が乗り込むと、運転手はチラリと鈴木と梁瀬を見て、会釈をして運転席に戻った。

遠ざかる車を見送りながら梁瀬は目を眇める。


(常に把握済み、か…。)


何時失くしたり置き忘れたりするかわからないようなスマホだけではなく、他にも何かしらの手段で、木本家は奏の位置情報を把握しているのだろう。



「…まさか、盗聴なんて事迄は…されてないだろうな。」

「そこ迄はしないかと思いますよ。」


カメラや盗聴機能を付けるのは不可能ではないが、愛息子の性事情迄覗き見たい訳ではあるまい。
あれだけの奏の奔放さを、家族が知らない方が不自然だ。

そして、そう考えた梁瀬の推測はほぼ正解だった。
奏の父と長兄は、過去の事情を知っているからこそ、多少の火遊びは見逃していた。

そしてもう1つ。スマホ以外の、居場所を確認する手段。
番となる事を防御する為の首輪だ。
一見高価なチョーカーにしか見えない造りにしてある奏のそれには、高性能GPSが埋め込まれている。

GPSをつけるとしたらソレだろうと、梁瀬も考えていた。



部屋に戻った鈴木と梁瀬は、テーブルを片付けてから、食事の支度に取り掛かった。

話をしていて少し遅めになってしまったので、今夜はあり物で鍋焼きうどんにした。
寒い日にはうってつけだろう。

梁瀬は鈴木の作る食事は何でも物珍しげに、美味そうに食べてくれる。

今夜も2人で囲む食卓は、豪勢な訳ではないけれど、暖かくて満たされる。
一人で食べていた時とは味すら違うように感じるのは、そこに愛する人がいるからだ。
どんなに簡素な場所でも、もしこれが只の握り飯でも、きっと2人なら。




「…木本、結婚はしないって、言ってくれましたね。」

出汁の味の染みたうどんを堪能しながら梁瀬はふと、先刻の奏の姿を思い出していた。


好きな人はいない、と答えたのは、奏自身が次兄に対して持っている気持ちの正体に気づいてないからだろうか。


「あんなに、特別に思っているみたいなのに…。明らかに他とは違うんだろうに、気づかないもんかなあ。」

「身内だから、と除外してしまってたんですかね。
じゃなきゃ、意識的に蓋をしていたのかも。
…辛いでしょうから。」


鈴木と梁瀬の印象としては、奏と次兄は互いに想いあっているように思う。

奏が男達に求めていたのは、体の快楽ではなく、次兄とのセックスで感じた快楽なんだろう。

似たような快楽を追う事で、求めていたのだ、奪われてしまった次兄の面影を。
そしていつも到達出来ずに失望した。

同級生で顔見知りではあっても、殆ど接触が無かった梁瀬に妙に固執したのも、梁瀬が次兄の面影を宿しているにも関わらず、奏に冷たかったから…なのかもしれない。

しかし、優しくしたらしたで、依存されていた可能性もある。

それによっては婚約が早められ、今頃は結婚に至り番になっていたかもと考えて、梁瀬はゾッとした。

奏がどうというより、今、鈴木とこうして差し向かいで食卓を囲んでいる事や、蕩けてしまいそうに抱かれるセックスの快楽も、有り得なかったと言う事だからだ。

それを思えば、奏には悪かったがあの対応で正解だったんだと梁瀬は思った。


「…なんか…会わせてあげたいよね。 
でも、流石に兄弟で番になるのは、不味いのかな。」

「…聞いた事が無いので何とも言えませんけど、タブーではありますよね。

しかし、気になる事はあります。」

「なに?」

「…先刻、木本が、次兄が自分の事を、 運命の番だと幼い頃から言っていたって、言ってましたよね。」

「ああ、言ってたね。
ああいうのって、わかるものなのかな?」


βである鈴木にはイマイチぴんと来ない話だが、梁瀬にはどうなんだろう、と視線を遣ると、梁瀬も鈴木を見ていた。

真剣な目をしている。


「僕は真治さんにしか運命を感じてないのでよくわかりませんけど、運命の番というのは、本人同士はわかるようですよ。」

シレッと愛を告げられ照れる鈴木。
…じゃなくて、そうか。わかるのか、やっぱり。

「性別も年齢も、環境も、全てを凌駕して惹かれ合うのが運命の番というのならば、おそらくそれが肉親であっても同じなのではないでしょうか。」

「…神様も、酷な事するなあ…。」

「そうですね…。」


もし、本当に奏の次兄の言うように2人が運命の番だとしたならば、それを無理矢理引き離していると、2人はどうなるんだろうか。


少し、しんみりしてしまった2人だった。




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