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「大丈夫だ。
それは遠隔でも解錠出来る。」


総はスマホを右手に持った。

解錠は出来る。
只、暗証番号を知り、それを出来るのは総のみ、というだけである。

もう7、8年前に父から引き継いだ。

「ずっと付けっぱなしだと不衛生だろうと、自宅での風呂の時は連絡を受ければ外していた。」

「へぇ、便利ですね。」


まあ、それはそうだろうな、と鈴木も梁瀬も思った。
流石に付けっぱは良い事無いよな…。


「…ちぃ兄、何処にいるの?」

「〇〇県の、父さんの知人が院長をしている病院に入院という形で静養してもらっている。」

「え…近…。」

「近…。」

「近…。」


隣県である。

「2時間半くらいで着く。」

「嘘でしょ……よくもまあ海外だとか大風呂敷広げてくれたよな…。」

「……それくらいの距離があると思わせた方が良いかなと。」

「まんまと騙されてたよぉ…。」


奏は父や総だけでなく、自分にも呆れた。
そして何だか可笑しくなって笑いが込み上げてきた。


「あは、はははっ
その程度の距離のせいで、10年も無駄にしちゃったのか、俺。あはは!」

しかし、それだけ総達が利一と奏の周辺を徹底管理していたと言う事だ。


総は奏に問いかける。


「もし、利一が変わってしまっていても…お前は大丈夫か?」


あの頃のような、若さも情熱も薄れ、痩せて、ともすれば髪の色のように命すら儚いように見える利一を 奏は受け止められるのだろうか。


総の危惧を奏は フン、と鼻で嗤う。


「変な心配しないで。
俺と離れた事で変わったのなら、それも俺への愛でしょ。

俺はちぃ兄を俺のαにするって決めてるんだから。」


利一がそう遠くない場所にいる事を知った奏は、もう梁瀬が見慣れていた我儘女王様の奏だった。







話し合いは2時間程でカタがつき、総と奏は同じ車で帰って行った。

梁瀬と鈴木はルームサービスで遅い夕食をとった。
夜景の見下ろせる窓辺で、2人で食事なんて初めての事で、鈴木は新鮮な気持ちだった。

隣の寝室のベッドがやたら大きいのは先刻確認済みだ。
今夜は思う存分色んな体位が試せるな…と、スケベ心が抑えられない。


「真治、」

梁瀬がニコニコとバスルームを指差して言う。


「一緒に入ろ。」

突然のラフな言葉にグッと来た。か、かわい……っ。


「そうだね、入ろっか。」


最近は奏が部屋に入り浸っていたのでなかなか2人きりの時間が無かった。
しかも晩御飯迄食べて帰るものだから、此方も疲弊してセックスもお預け気味。
子供のいる夫婦ってこんな感じなんだろうか、と少々辟易していたくらいだ。
しかし此方はそんな子持ち夫婦では無くまだまだ付き合って数ヶ月のラブラブカップルなのである。
熱愛中なのである。
時間と体力さえあればヤリたいのである。

だからいい加減、ちぃ兄さんとやらに奏を引き取ってもらわねば困るのだ。

それが、鈴木が奏の件に迄言及した理由だ。
別に仏心とか、そういう事では無かった…。




「真治ー、お湯溜まったよ~♡」

「は~い♡」


バスルームから響く梁瀬の甘い呼び声に、鈴木はだらしなくニヤけた顔で返事を返す。

エアコンの温度は少し上げておくべきだろうか。
それとも、出る頃には暑くなっちゃってるからこのままでも?

いやでも梁瀬に風邪をひかせる訳にはいかないし、やっぱ上げとくか…。

悩みながらリモコンで温度を少し上げる。


水のボトルはベッドサイドに用意しといて、と…。



「ねぇ、早くってば。」


何時の間にか寝室迄迎えに来ていた梁瀬の腕が首と肩に絡んで来た。
フワッと梁瀬の良い匂いがする。

「ごめんね。」

梁瀬に向いて抱き締める。

唇はキスを待っていたように甘く湿っていた。

唇同士が密着すると当然、舌も絡み合う。
鈴木の肉厚の舌が梁瀬の歯列をなぞり、上顎を舐める。

唾液が次々啜られて、舌を吸われ、梁瀬はふわふわと夢心地だった。

なんで鈴木の唇はこんなに魅惑的で肉感的で情熱的なんだろう。
この舌と唇に、これから全身嬲られるのだと思うとゾクゾクと震えが這い上がってくる。

梁瀬はその快感を知っている。


「さて、じゃ、風呂行こっか。」

ちゅぱっ、と唇を離した鈴木がニコッと笑って、キスだけで足腰の立たなくなった梁瀬を抱き上げた。 
鈴木の腕の筋肉は芸術的に美しい。


「……はい…。」


もう、どうにでもされたい、と
うっとり鈴木の顔を見上げながら、梁瀬は胸を高鳴らせた。






そうして朝まで遠慮無しに抱かれた梁瀬の腰は本格的に立たなくなり、翌日は急遽連泊に。
清掃不要の札を掛けてゆっくり休養する梁瀬と、甲斐甲斐しく世話を焼く鈴木は、これはこれで悪くない休日だな、と思ったのだった。








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