元・公立高生徒会副会長は王道学園に馴染めない

Q矢(Q.➽)

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9 元副会長、銀狼にマーキングされる

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学園に来て3日目。
正式に登校、2日目。


僕の後ろをてくてく着いて来るのはルプスである。
欠伸をしながら着いてくる。
因みに、一緒に登校しようなどとは一切誘っていない。


「しの、クラスは?」


しの。

忍だからしの、な。それはわかる。
問題は僕と彼は名前をそんな風に呼び合う程、親交が深まってはいないという事だ。
にも関わらず、何故。

外国人だからフレンドリーだとでも言うのか、と僕はひとりごちる。


しかしこれだけ至近距離で話しかけられて返事をしないのは角が立つというもの。
ここは僕が大人の対応をするしかないか。


「Sだ。君は?」

「!!やったぁ、同じィ!!」

「……。」

やはり日本語は流暢だ。
流暢というか、ネイティブでは?寧ろ日本で育ちましたって発音だろそれは。
じっ、と疑惑の目を向けると、にこにこ微笑まれてしまう。
朝日にルプスの銀の髪が透けて綺麗だな、と思わず思う。
只の紺のブレザーの制服を着崩して尚、品がある。
多分ルプスは結構な家の生まれなのでは。
というか、ここの生徒ってやたらそんなタイプのイケメン多くない?


寮の玄関を出た時から感じていた他の生徒達からの視線は、校舎が近づく毎に増えていく。
視線…昨日の悪夢。あいたたたたた。(胃痛)

立ち止まって胃をさする僕。心配げに周りでオロオロするルプス。
更にざわつく観衆。

最悪のループが完成したな、と思っていたら、物事には更なる深淵があるものよ。

生徒会が現れた。


「おはよう佐藤君!辛そうな君もまた良いね!保健室に抱いていこうか?」

「あ、昨日のしゅがちゃんじゃん。」

「……(ペコ)」


上から神薙副会長、チャラい役員、なんかコミュ障っぽいでかい役員である。
どうやら獅子神バ会長はいないようだ。よしよし。

しかし、バ会長の姿が見えないからと言って、朝っぱらから遭遇したくはない濃い面子である事には変わりないから、僕はウンザリした。
もう寮に帰って横になりたい。

「…オハヨウゴザイマス。」

僕は何とかそれだけを絞り出した。挨拶は大事だ。

ああ、これでまた朝から体力が削がれる、と思っていたら、不思議な事に生徒会の3人がそれ以上近づいてこない。何故かと思っていたら、真後ろから唸り声がした。

ルプスが3人を睨み付けて唸っている。
同時にルプスの両腕でがしっと背中から抱き込まれ、困惑。
何が始まったのかと思って見ていると、役員の一人であるコミュ障大男なんかは、ルプスから目を逸らして自分より小さなチャラ男の背中に隠れてしまった。
なんて無様なんだ、コミュ男。
しかし神薙副会長は果敢にルプスを睨み返しているな。

生徒会とルプスは仲でも悪いのだろうか。
一体君は何なんだルプス。
部屋にもロクに帰っていないようだし。


暫しの両者睨み合いの後、口を開いたのは神薙副会長だった。

「御室、朝っぱらから何故いる。佐藤君を離せ。」

「しのに何の用だテメェ埋めんぞ。」


え?ルプスちゃん?

あまりにドスの利いた低音を出すもんだから本当にルプスかと振り返って見上げると、はまるで野生動物のように歯を剥いて3人を威嚇している。
いや、さっき迄あんなにニコニコしてたじゃないか。

可愛かったルプスは何処へ。
そして、御室って君か?


「る、ルプス君?」

恐る恐る声をかけると、腕の中の僕を見下ろしたルプスは、にこーっと笑った。


……朝から不思議だったんだが、何故僕は急にこんなにルプスに懐かれているんだ。
夜中に間違いでベッドに潜り込まれて、朝食を一緒にとったくらいで、親睦らしい親睦は未だ深めてはいない筈だが。

神薙副会長が苛立ちの滲んだ声でルプスに言う。

「何だよ、御室。佐藤君とどういう関係だ!」

するとルプスは、ふんっと鼻を鳴らして答えた。

「しのは俺の主人になった。夜中にマーキングしたからな。」

「しゅ、マーキング?!!?」

神薙副会長の前に僕が叫んだが、ツッコミが追いつかず妙な叫びになってしまった。何だマーキングとは。よくわからないなりに良くない事態な気がして焦る僕。
そして何故だか僕以上にショックを受けている神薙副会長。

「ルプス君…?主人って、何?」

そう聞くと、ルプスはニコニコしながら、

「玄関入ったらいい匂いがしたから見に行ったら可愛かったから俺のになってもらおうと思って全身舐めといた。(一息)」

「ヒエェェェ!!!」


な、な、な、な、な?!!?!

言葉にならない。シャワーしないで来てしまった!!

「特にちんこが美味かった。元気いっぱいで、2回も…。」

「ぎゃあああああ!!!」

生徒会役員共だけじゃなく、周囲の生徒達も皆聞いていた!!声量的に聴こえてた!!!

神薙副会長は眉を吊り上げて震えているし、ルプスは勝ち誇ったように挑発的に副会長を見ている。
そして、僕の心は修羅場だ。



…この学園はきっと、僕にとって鬼門だったに違いない。




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