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14 元副会長、理事長室に呼ばれる

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その日の昼食時は初日と違って静かなものだった。
生徒会役員達は今日は来ていないらしい。
園田君と御池君、ルプスと共に、好奇の目を華麗に優雅にスルーしながらゆっくり食事をした。
因みに本日はBセット、アジフライ。肉厚で結構大きめ。
何故か他3人も同じBだった為、俄にアジフライには何かける?論争が繰り広げられる。
園田君と御池君がソース、僕は醤油。そしてルプスはまさかの何もかけない、でも今日から醤油派になる、と言っていたから、2対2のドローという結果になった。




午後の授業もそれなりにこなし、授業も終了した放課後。
園田君と御池君は部活へ向かい、他のクラスメート達もそれぞれの場所へ向かって教室を出ていく。
そして僕も帰寮しようとして、ルプスを待たせて準備をしていた時、スマホが震えた。


「…忘れてた。」

伯父だった。

昨日、帰って来ている旨の電話が来たんだった。
あまりにうるさくて切ってたけど、心配かけた事には変わりないな、と電話に出た。


「……はい。」

『授業終わったよね!
お土産あるから理事長室に来てね!るーちゃんと!』

「るーちゃん?」

『偶然、るーちゃんの部屋が一人で空いてたからさ。良かったよね!仲良くやってる?これも運命かなあ。とにかく2人でおいでよ!』

「お、伯父さん?ちょ…、」

『理事長室の場所はるーちゃんが知ってるからさっ!』

「ちょ……」


そのまま通話は切れ、僕は呆気に取られたまま内容を整理した。

るーちゃん……部屋が空いてた……同室……同室者はルプス……ルーちゃん?……るーちゃん……。


「……ルプス、理事長室知ってるか。」

「うん、よく行く。」

「……そうか。ならお前で間違いなさそうだな。一緒に行こう。」


……ルプスは嬉々として立ち上がる。
なあ、気になってたんだけど、何でずっと手ぶらなんだ?


廊下を歩くルプスの足取りは軽い。
散歩中の犬でももう少し落ち着いているぞ、というくらい、軽い。
僕を振り返り振り返り、こっちだよと案内してくれているつもりらしいのは可愛いが、コレ190近い男である。

すれ違っていく生徒達が、皆一様に驚愕したり見蕩れているのは単にルプスが美形だからなのか何なのか。


教学棟から渡り廊下を経て、教員棟の最上階の5階に理事長室はあった。

ルプスがよく来ると言っていたのがどういう事なのかはわこらないが、来慣れているのは確かなようだ。

重厚な茶色の扉をノックすると、暫くして中から開いた。

「ようこそ我が校へ、忍君。」

「平坂さん。お久しぶりです。」

「ルプス君も、いらっしゃい。」

「うん。きた。」


温厚そうな細い目がチャームポイントの素敵なこの紳士は、伯父の親友で、仕事の部下でもある人だ。
幼稚園からの腐れ縁と聞いた事がある。

しかし、ルプスは此処でもこうなのか。

部屋に入ると奥のデスクの上に色んな何かを広げた伯父がにこやかに声をかけてきた。

「のんたーん!待ってたよ!!
高校受験前に断られてショックだったけど、まさかこの時期になってチャンスが巡って来るなんてねっ!!」

「…佐藤、チャンスって…言い方。
大変なんだぞ、この時期に環境が変わるのは。」

「あ、だよね、めんご!
でも安心してよ。ウチの受験バックアップ講師陣、結構やるからさ‪~笑」

僕とルプスは平坂さんに勧められて革張りのソファに座り、ローテーブルを挟んだ向かいに伯父が座った。

「……はあ。頼りにしてます。」

そうなのだ。
この、一見育ちの良さそうなお坊ちゃん然とした伯父が、経営手腕に於いては親戚中から1目置かれている理由はそこにある。
只の古いだけの伝統校でしかなかったこの学園が、伯父の代になってから飛躍的に一流大学への進学率が伸びた。
伯父自らが、大手の有名予備校からヘッドハントした講師達によって。

少し気になるのは、それらの講師陣の殆どが、伯父と同年代か少し下、という所なんだが…。
とはいえ、僕としてはとにかく勉強が出来て目標としている大学に合格出来さえすれば文句は無いのでその辺には突っ込まない。


久々に見る伯父は相変わらず柔和に整った顔をしていて、母の面差しによく似ている。
いや、この場合は母が伯父に似てるのか。


「昨日はびっくりしたよ。帰って来たら体調不良とか言われてさぁ。もう大丈夫なの?無理しなくて良いんだよ?」

心配そうに覗き込んでくる伯父に少し罪悪感が湧いてくる。
ブツ切りしてしまってごめんね。
伯父は悪い人ではなく、寧ろ幼い頃から溺愛というくらいに可愛がってくれるのだが、常にテンションが高いので体調が芳しくない時にはキツイのだ。

話している内に平坂さんがコーヒーを入れてくれた。

「忍君は、コーヒーで、ミルクだよね。」

「覚えてて下さったんですか。」

「うん、俺と一緒だからね。
ルプス君も同じだよね。」

「うん。要が…しのがそうって聞いたし。」

ルプスはそう言ってコーヒーカップを持ち上げて、フーフーと冷ましながら苦そうに飲んでいる。
え、もしかして伯父から僕の好みを聞いたからって無理して飲んでいるのか。


「……砂糖、入れたら?」

「だって、しのは入れない。」

「……たまには入れてる。」

「なら入れる。」


……ルプスって…何?
伯父と僕と、どういう関係?









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