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翔ちゃんの気持ち βの気持ち

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翔ちゃんの鋭い指摘が炸裂。

確かに!!

幼馴染みの距離から進展したくて、意識して欲しくて好き好き攻撃頑張ってた筈なのに、余りにも翔ちゃんが動じないから何時の間にか過剰接触が当たり前の日々になってて大事な事忘れてたわ…。


呆然とする僕。


えーと、じゃあ…


「…す、好きです…付き合って下さい…」

「何、その覇気の無ぇ告白。」

やり直し。
 と言われて、ハッと我に返り今度はそこそこの声量で言った。


「翔ちゃん!好きです!付き合って下さい!そしてあわよくば結婚して下さい!!」

「ン、だから生き急ぎ過ぎなんだわ。」

コン、と額を箱でつつかれる。
角ォ!!痛い!!

「早ぇんだよゴール迄が。」

「…だってぇ…」

こちとら15年近くアナタ一筋なんで!!

今更何処の馬の骨ともわかんない奴とかにカッ攫われたくないからそりゃ急ぐよ。

だって、あと数ヶ月で今迄の全部が変わっちゃうんだよ。
毎朝一緒に登校も出来ない。同じ学校でもない。きっと新しい生活環境に慣れるのに精一杯で
会う事もままならなくなる。

新しい人間関係が出来てって、僕の事なんか忘れちゃうかもしんないじゃん。

ならその前に約束だけでもしときたいじゃん。

翔ちゃんなんかこんなカッコ良いんだから絶対誰かに目をつけられるよ。  


…そんな事を、ボソボソ言ったと思う。

それを黙って聞いていた翔ちゃんは、静かに口を開いた。



「あのな、マナ。

俺もお前が好きだよ。」

「それはわかってるよ。幼馴染みなんだしぃ…。」

「違うわボケ。鈍感。」


頭を軽くはたかれた。エン。


翔ちゃんは はああああぁ~…と大きな溜息を吐いてガクッと項垂れた。

「え、じゃあ…」

「お前は鈍いんだよ。俺は拒まなかっただろ。自分をオナペに使われたら普通は黙ってないだろ。毎朝好きにベタベタ体触らせねえだろ。自分を見てガン勃ちしてる奴と一緒の湯船入んねーだろ。」

「ベタベタって、あれはさあ…」

シャワーシートで拭いてるだけじゃん。
…まあ?ちょっと押さえたり?腕掴んで上げさせたり?腰押さえたり?してたけど?役得だなって思ってたけど?

「普通の友達同士ってそこ迄密じゃねえよ。」

「…ま、そだね?」

「つまり、俺もお前と同じって事。」

「しし、翔ちゃん…マ?」

「マ。」


ど、どうしよ…ドキドキしてる。死ぬ…死んでしまうぞ翔ちゃん!!
あ、いや僕がね。

いや冗談抜きでほんと嬉しい。
翔ちゃんが僕と同じ気持ち…!

「なのにお前、何年経ってもな~んにも言わねえんだもんなあ…。俺が誘っても肝心なとこじゃ全然手出して来ねーし。」

俺を好きなのって、実はタダの刷り込みなんじゃねーか って 最近思い始めてたんだわ、と翔ちゃんが言った。

「そんな…ごめん。」

翔ちゃんは僕にそんな気無いって思い込んじゃってたよ…。

…え?ちょっと待って…?誘っ…

じゃあ、あの時も、その時も…?アレは“イイぜ”って事だったの?

「ま、でもさ。お前はαだからさ。俺はタダのβだし、今は俺を好きだっつっても、
ある日急に、Ωや、運命の番とか出てきたら適わねーなって思っちゃ、いた。
そうなれば直ぐに忘れちまうんだろーなって、不安だったのは俺の方だわ。だからせめて思い出だけは作っときてーなって。」

「翔ちゃん!!?僕はそんなに軽い男じゃありませんよ?!」

心外!!!

「でもそう考えちまうんだよ。
βの俺らはな。」

「…そう、なんだ…。」

そっか。αはΩに、Ωはαに惹かれるものだから…どちらかと付き合ってるβは、不安と隣り合わせなのか。
αとΩは本能には抗えないってのは定説だもんね。
翔ちゃんからしたら、僕個人は信じてても、αは信じられない。そんな感じなのかも。


「だから、βの俺からは何も言えねえって思ってた。
だってβはさ、その他大勢、じゃん?」

「翔ちゃんはその他大勢なんかじゃない!!」

翔ちゃんが他のたくさんに埋没する訳なんか無い。
何時だってこんなに輝いてるのに。
僕は小さい頃から 迷子になった時も、どんな時でも人混みの中からピカピカの君を必ず見つけ出してきたじゃん。これからだって、そうする。
繋いでた手が離れてはぐれたって、僕は直ぐに君の場所がわかる。だって、

「僕には翔ちゃんだけがキラキラして見えるんだよ。
初めて会った時から、ずっと。」

そんな人が運命じゃない訳ないよ。

「キラキラって…。俺はンな大したモンじゃねえだろ。」

βなんだし、と言って プイッと横を向いちゃった翔ちゃんの耳が少し赤くなってる。照れ…てる?
かーわーいーいー!!


そっか。翔ちゃんは僕の気持ちに気づいて無かったんじゃなくて、気づいてたけど言えなかったんだね。

自分が、βだから、自分からαやΩの間に入って行くべきじゃないって、考えてたんだね。
僕が Ωより、他より、翔ちゃんを選び続ける日がいつか突然終わるかもしれないって、思いながら。でもそばにいてくれてたんだね。

そんな強くて深い気持ちってさあ…


「僕って、すごい愛されてんじゃ~ん…」
 
ぶわっと涙が滝みたいに溢れ出た。止まってた鼻水も。
 
翔ちゃんが、汚ねっ、とイヤな顔をするのが滲んで見えた。

 
…ねえ、ホントに好き?僕の事…。




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