αの共喰いを高みの見物してきた男子校の姫だった俺(α)がイケメン番(Ω)を得るまで。

Q矢(Q.➽)

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弓月の昔の男

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   ※第三者視点でお送りします。







(やられた…。)

とうとう男が出来たのか。




香原 央(かはら なかば)はフン、と鼻を鳴らしてスマホをソファに投げ、乱暴に音を立てて椅子に腰を下ろし長い足を組んだ。

形の良い眉が吊り上がって、表情は歪むが、それが端麗な顔立ちを損なわせる事は無い。



(斗和のやつ…。)


香原は学園時代、弓月がどれだけ遊んでいても変わらず傍にいた男だった。


香原は2年、3年と、学園の中ではαのトップと言える生徒会執行部の会長だった。
そして、際立った美貌で入学当初から学園のお姫様ポジについた弓月 斗和の親友且つ保護者的存在。
一時期は恋人関係にあった事もあるが、遊びは学園在籍中だけで終わらせておけよ、という実家からの圧(父親怖さ)と自己保身の為に別れたのだ。
当時、弓月も特定の相手と本気で恋愛する気は無かったし、2人はすんなり別れ、普通に友人関係に戻った…つもりだった。弓月の方は。

ところが香原は、保身の為に別れを切り出した癖に弓月に未練タラタラだった。

香原としては、父は怖いに違いなかったのだが、弓月が泣いて別れを拒否してくれていたら、内密に付き合いを継続したかった。
しかし打診がすんなり受け入れられたので、結構ショックを受けたのだ。

その上、フリーになった弓月には次々と男が言い寄るし、一旦別れたら復縁は難しい。
学園内で、弓月の競争率はそれ程高かった。
 
自分と別れた後も次々相手を変えて抱かれ、魔性のように美しくなっていく弓月を、香原は指を咥えて見ているしかなかったのだ。

しかし既に弓月にガチ惚れしていた香原は、何れ自分が力を得た時には弓月とよりを戻したいと思っていた為、卒業して進路が別れてからも弓月に調査員を張り付けていた。
勿論、弓月本人はそんな事は知る由もない。

大学生になり、香原も学業と並行して父親の業務の見習いを始めた為、簡単には会えない程 多忙になった。

弓月もなかなか忙しいらしく、上がってくる報告には深い付き合いに至った人間はいないとの事で、香原は安心していたのだが。


ここ数ヶ月、とある場所に通っていると報告が上がる事が多くなり、訝しく思った香原はその場所と周辺関係者について調べさせたのだ。

そうすると、ある男が浮上した。

写真を見た時、思わずウッと唸ってしまった。

容姿には絶対の自信を持つ香原から見ても、その男はかなりの美形だった。
αのみを集めた学園にいても、これ程のレベルは滅多に見なかった。
これはおそらく弓月の好みの顔だ。
高身長で体つきも良い。

こんな奴が何故、実家とはいえあんな寂れた店を、と思ってたら、バース性の欄を見て更に驚いた。


男性  Ω


見間違えかと2度見した。
あれがΩだと言うのか。

ならば、弓月が惹かれている理由はそれもあるのだろうか。

けれど、弓月はαではあるが、完全なネコだった。



…やはりΩを目当てに通っている、というのは思い過ごしだろうか?

そりゃ、Ωであっても男性である以上、抱けはするだろうが、本能としては、どうだろう?


(もしかして、斗和は此奴がΩだと気づいてない?)


稀に、抑制剤で完全に匂いの抑制に成功しているΩも、世の中にはいると聞く。
見た目からしてΩとしては規格外なのだから、もしかしたら匂いも…。

この男がそのタイプなら、本人が口にしなければバース性なんてわからない。

こんな、見た目だけはまるでαのような…。

いやしかし、弓月だって性癖がネコというだけで、αとしては高ランク。
匂いが無いからと早々惑わされるだろうか?

…いや、惑わされるかも。


香原は唇を噛みながら、調査員に引き続き徹底的に弓月を張るように伝えた。


それから4ヶ月。

とうとう恐れていた報告が来てしまった。

この2、3週間はその男と店から足が遠のいていた様子だったから、飽きたのだろうかと少し安心していた矢先に…。


悔しくて革靴を踏み鳴らした。

イライラして親指の爪を噛みながら部屋の中を行ったり来たりして、落ち着かない。

(くそ…。こうなったら、会いに行くしかないか…。)


自分は未だ力を得てはいない。
会ったとして、どうしようも無いかもしれない。

それでも香原は弓月に会いたかった。 

弓月に執着するこの感情が、純粋に変わらぬ愛ゆえなのか、単にあの学園時代を引きずっているだけなのか、会わなければ。

そして愛だと確信した時には、今度こそは…。





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