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10 送り狼を自ら連れ帰る (※R18描写多少あり)
しおりを挟む「…起きてたのか。」
「タクシー降りた辺りから。」
「…嘘だろお前。重かったんだけど。」
(びっ……くりした。)
苦手な日本酒でかなり回ったのだろうか。
「お前に世話焼いて欲しくて。」
時永の肩を覆って首筋に顔を埋めながら喋る伊坂。擽ったい。
伊坂がこんな接触の仕方をしてくるのは珍しい。もっと意外なのはそのセリフだ。
伊坂は時永達のグループの中でも、落ち着いてる兄貴っぽいキャラだった。こんなに甘えてくるのなんて見た事無は無い。
それだけ今回の離婚がショックだったって事なんだろう。托卵、だもんな、と時永は伊坂を不憫に思った。
(…ちょっとよしよししてやるか。)
「…えぇ…何だよそれ。」
時永は苦笑いしながら首に巻き付く伊坂の腕に触れて、頭を撫でてやる。
耳元で息を飲む音がした。
(アレ?不味かったかな。)
振り返ろうとしたら、伊坂と視線がかち合った。
「……。」
「……。」
黒い瞳が揺れている。
それを見ている内に、唇が触れていた。
(……え?)
(何故、伊坂が俺に?)
やっと疑問が脳内に浮かんだ時には、既に伊坂の舌が入れられていた。
「……ン……、ウ…!」
「逃げるな。」
唇を離してくれたと思ったら それは一瞬だけで、また分厚い舌が下唇に触れて、今度は濃厚なディープキスが始まった。
息すら奪われていくような、全てを吸い尽くされていくような、深いくちづけ。
何時の間にか時永の体はベッドの上で、体中を這いずり回る伊坂の舌に嬌声を上げていた。
「あ、あ…ああ、ん……っ、」
「ここ、好きなんだな。」
伊坂は舌で時永の小さな乳首を転がしている。
その嬲り方はねちっこく、時永の乳首を完全に性感帯にしてしまった。
乳首だけではなく、腋や臍、足の付け根、足の裏、手足の爪先。
風呂に入る時くらいしか触る事の無いようなそんな場所を、丁寧に丁寧に唇で触れられ、舐め尽くされて。
焦らすように唯一触れられていなかったペニスの、先走りに濡れた先端に伊坂の指先が触れた時、時永の腰は痺れた。
竿に巻きついた長い指、裏筋を舐め上げる唾液でぬるついた熱い舌。
味わうように屹立の全てを伊坂の口内に含まれて、唇で扱かれて、喉奥に射精した。
何故、親友の筈の伊坂とこんな事に、と 思い出したように帰ってくる理性は、伊坂に与えられる快楽の前には直ぐに霧散してしまう。
脚を抱え上げられて、尻の穴迄舌でこじ開けられたのに、感じたのは羞恥よりも焦燥だった。
早く伊坂のペニスを迎え入れて、奥まで気持ち良くなりたい、そういう焦りだ。
舌や指なんかじゃ優し過ぎて足りない。
もっと強引に押し広げて、突き進んで、肉壁を擦って内臓に届く程突いて、気持ち良くされたい。
犯されたい。この優しい親友が、もっと激しく自分を求める顔が見たいと、欲情した。
自分の愛撫を受けて、シーツの上で 打ち上げられた魚のようにのたうち回る時永の痴態に、伊坂は興奮していた。
伊坂にとって、時永はとうの昔に親友などではなかった。
ずっと傍で見守ってきた、ただ一人の愛しい男だった。
時永を想う自分の気持ちが異常なのかと悩んだ事もある。受け入れられず、苦しんだ事も。
忘れようと、只の良き友人の一人でいるのが一番良いのだと思い込む努力をした事もある。
それが時永の為でもあると思った。時永は、異性愛者だからだ。
けれど、伊坂だって同性愛者な訳では無く、時永以外の男性に性的魅力も友情以上の感情を抱いた事も無い。
だから、時永は伊坂の気持ちなど知らない方が。伊坂は時永への気持ちを忘れるのがお互いの幸せの為。
そう思って、伊坂は女性と付き合う事にした。
時永と、髪質が似ている。薄い瞳の色が似ている。
伊坂が女性を選ぶ基準は何時もそこだった。
顔の造作は、似ているに越した事は無いが似ていなくてもかまわない。
それでたまたま、そんな女が近寄って来たから付き合って、子供が出来たから結婚したいというから結婚した。
避妊はしていたのにな、という疑念は過ったが、時永を吹っ切る良い機会かもしれないとの思いもあった。
けれど、そんな伊坂の卑怯さが、天に見透かされていたのだろうか。
"普通"の結婚生活は、あまりにも直ぐに破綻した。
相手の女性に利用されていたと知った時、伊坂は相手の事を責められる立場ではないなと思った。
伊坂も時永の事に踏ん切りをつける為に彼女を利用しようとしたのだから、お互い様かもしれない。
だからと言って、伊坂は彼女の目論見を叶えてやるつもりは無く、他の男の子供を育てるような貧乏くじを引いて迄、偽りの夫婦や家族を維持していく気はなかった。
そして離婚の話は進んでいった。
久々に皆で集まって飲んだのは、弁護士を交えて相手方との話が殆ど纏まりかけていた時だった。
付き合っていた女性と別れたという時永。
自分の置かれていた状況を忘れて、伊坂の胸は弾んだ。
勿論、落ち込む時永は可哀想だった。けれど、それ以上に可愛かった。
慰めてやりたいと、強く思った。
だから伊坂は、酔い潰れた時永を送り届け、そして、抱いたのだ。
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