男嫌いのシングルマザーの俺VS絶対俺を番にしたい男

Q矢(Q.➽)

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25 意思確認は大事

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邸から見ればまだ綺麗に見えた紅葉も実は終わりかけていたようで、車で走っていると枯れた木々も結構見受ける。
もう1ヶ月も時期が遅ければここは雪景色なのかもしれないな、と思った。

何かの畑の中に立つリゾートホテルの看板や小さな蕎麦屋の前を通過しながら5分程。脇道に入っていくと、木立ちの中に佇むログハウスのような建物が。


建物の前は数台は駐車できそうなスペースになっているので、名城は家の真ん前に車を停めた。


「此処は前は知り合いの老夫婦が持っていた貸別荘だったんです。それを譲り受けました。」

「良いね、雰囲気ある。」

千道家の別荘がホテルなら、こっちはちょっとした秘密基地ってとこかな。

名城がドアに鍵を差し込んでドアを開ける。
言ってた通り、管理人が日頃からマメに入れ替えているのか、空気はそんなに澱んではいなかった。
埃も無いし、何時でも直ぐに使えるようにしてるんだろう。
名城は少しはしゃいでいるようだった。
嬉しそうに俺の手を取りながら案内を始める。

「此処がリビング、そちらがキッチン。水周りは全てリフォーム済みです。」

「ピカピカだもんな。」

「内湯と岩風呂も作って…。」

「えっ?!?!」

いや、すごいな?

見に行くと本当に綺麗な檜風呂の内湯と、広い岩風呂があった。

「ささ…最高…。」

「でしょ?」

にやっと笑う名城。してやったり感がすごいけど、今は良くやったと撫でてやりたい。

「何も考えずに1人でぼんやり風呂に入りながら星を眺めるの、気持ち良いんですよね。」

「ふわ…何それ…贅沢…。」

最初の就職をしてずっと忙しくて、莉乃が生まれたら生まれたで、仕事以外の時間は殆ど莉乃の為のものだった。
何処かへ出かけるのだって、莉乃の喜ぶ顔が見たかったからだった。
でも、子供が小さい内なんて、親は何処もこんなもんだろうと思ってたから不満なんか無かったけど、こうして少しの間でも自由な時間が出来た事が嬉しい。
しかも、温泉に浸かれるなんて。

「夢みたいだなぁ。」

そう言って名城を見た俺は、どんな顔をしていたんだろうか。

「……かわ…いやちょっともう…ごめん。」


は?と聞き返す前に腰を抱かれて引き寄せられた。
ぎゅーっ、と骨が軋む程に抱き締められる。

「…名城?」

「ああ、もう…破壊力が…。

お願いだから俺の前以外で、こんな笑い方しないで。」

「え、あー…うん?」

どんな笑い方?

「可愛い…咲太さん、可愛い…。」

アラサー男捕まえて何言ってんだか、と気恥しくなる。
頬や額に押し付けられる唇が擽ったい。そんな事されたら、なんか子供の頃にかえったようだ。

「……お前のは、欲目だ。」

そう言うと、名城は少し目の周りを赤くして、わかってないんだよなあ、と溜息を吐かれた。心外なのでむっとして俺も言う。


「気をつけるべきなのは名城の方だろ。立ってるだけで人が寄って来るんだから。」

俺が見ているのは園の送迎時と、猫ランに行った時くらいだったけど、その時だってまわりの視線は名城に注がれていた。中には物欲しそうな強烈な視線も。
名城は慣れ過ぎて鈍感になってるのかもしれないが。

でも、そんな俺の言葉に名城は真剣な顔で言った。

「俺は咲太さんと身内以外はじゃがいもにしか見えないので心配ご無用です。」

「じゃがいも…?」

あんな優しい顔してニコニコしてて心の中ではじゃがいもって思ってんのか…それはそれでちょっと無慈悲…。

「だから浮気の心配は無いですよ。」

ニコッと微笑む名城。

「俺の愛と情熱は、全部貴方に注ぐので。」

じとりと熱の篭った目が 今にもキスしてしまいそうな至近距離で細まる。
覚えのある、αの執着心。

なら、それに体の奥が反応するのは、俺のΩとしての性なのか。

見た目も雰囲気も全く正反対だけれど、確かに名城も あの真田と同じαなのだと強く感じる。


(……あ、におい、が…。)


突然、意識した。

今の今迄、僅かにしか嗅ぎ取れなかった名城の甘い香りを。生唾を飲む。

爽やかで甘く鼻腔を擽るだけだと思っていたそれに、今や下半身は硬くなり、別の場所は濡らされている。

体が期待しているのを自覚した途端に、息が乱れた。

名城の眉が僅かに動く。


「咲太さん、自分がすごい発情した匂い出してるの、わかってる?」

やっと唇が重ねられて、俺はそれを受け止めながら思う。

(匂い?俺が?俺から?)

そんなに、わかり易く匂いを?

名城の舌が性急に俺の唇をこじ開けて侵入してくる。
甘い舌。

その甘さに自分の舌を引っ張りだされ、絡められ、擦られ、吸われ。
口の中の全ての水分を奪うつもりなんだろうか、と言う程に、何時もの名城とは違う強引さだった。

息が上がる。

銀糸を引いてやっと唇が離れた時、俺は完全に勃起していた。
多分、名城も。

2人きりになった途端にこんなの、節操無しだと思われてないだろうか。
心配になってちらりと名城を見ると、名城も俺を食い入るように見ていた。


「咲太さん、軽くヒート来てるね。」

軽く、とか重くとか あるの?

「…そう、なのかな。
莉乃産んでからも、全然来てなかったのに…。」

でも一応、抑制剤は服用していた。
俺にヒートが来たのはΩとしての変異が完了したあの時。つまり、真田にレイプされたあの時期がそうだったらしい。
変異したばかりの後天性Ωは、発する匂いも微弱で、未だあらゆる感覚が鈍いらしい。
俺も自分の体に起きていた異変を、風邪か体調不良程度に考えて放置していた。
そこを真田というαに嗅ぎつけられて、妊娠させられた。

だから俺は、未だ本当の意味でのヒートというものを知らないのだが。 

でも、今 体が何かを求めてるって事だけは、わかる。


「…参ったな…。」


名城が困惑混じりの声で言う。
俺、名城を困らせてるんだろうか?匂いで発情させたから?
急に不安になった。

けれど、名城は俺の思ってたのとは全然違う事を言い出した。


「咲太さん、一応確認させてもらって良い?」

「…何?」

「咲太さんは、俺と番になっても良いって、思ってくれてる?」

そう問われて、俺はきょとんとしてしまった。
それから、じわじわ恥ずかしくなる。
そして、今目の前にいる名城を、誰かに取られるのは嫌だな、と漠然と思った。だから。

「…うん。」

そう、頷いた。


「……そう、うん。わかった。」


名城の目がキラリと光ったように見えた。





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