男嫌いのシングルマザーの俺VS絶対俺を番にしたい男

Q矢(Q.➽)

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24 千道キッズルームの威力

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ノックの音がした。

由人さんがドアを開けると、小柄な初老の男性が見えて、何かを告げに来たようだった。

「昼食が出来たらしいけど、此処に運んでもらう?」

由人さんが俺達に振り向いて聞く。

「そうですね。せっかく子供達も一緒に遊んでますし。
ね?」

俺が横の名城の顔を見ると、名城はうんうんと頷いた。

「だな。
では全員分を此処へ頼む。」

由人さんがそう言うと、男性はかしこまりました、と一礼をして扉を閉めた。


それから間も無く、数人の使用人らしき人達がワゴンで料理を運んで来て、俺達は皆で食事をした。
その時に、今日はゆっくり食事や散策を楽しんで、動物園は明日という事になった。
どうせ直ぐソコなので、その気になれば窓からでも見えるらしいけど、楽しみはとっておこう。

莉乃も今日は邸で嵐くんと遊びたいらしく、食事が終わると直ぐにプレイルームに戻って行った。何故なら、この邸の子供用プレイルームにはとんでもないものがあったのだ。
それが莉乃の心を動物園以上に鷲掴みにしていた。

それは、広い室内にいくつも置かれたキッズ用テント…。

小さな家型のものから、お姫様のお城みたいなファンタジックなもの、可愛い動物を象ったようなもの迄。
勿論、莉乃の心を鷲掴みにしているのはお姫様のお城な訳だが、もうその中に篭って出やしない。
何なら嵐くんもその横にぴたりと動物テントをくっつけて、その中でゲームをしたりしていて、ご飯だよ、と呼んでもなかなか出て来なかった。
2人共大人しいのでシッターさん達にもゆっくり食事をしてもらう。

「りの、きょうここでねるわ。」

「あらしもここでねる。」

「…う~ん、それはちょっとな…。」

寝具じゃないし、それはな…。

「莉乃ちゃん、他のお部屋に、お姫様ベッドもあるよ。」

シッターさんの一人が助け舟を出してくれるようにそう言うと、莉乃が反応する。

「おひめさまの…べっど?」

「あるんですか、そんなものが?」

俺が由人さんにコソッと聞くと、

「あるよ。親戚の子が小さい頃に使ってたってやつが。」

と答えられた。

「確か2台あったと思うから、莉乃ちゃんが気に入ったら家に持って帰ってくれても構わないよ。」
 
「いや、そんな。」

「どうせ使う子いないしさ。こっちには1台置いとけば十分だろうし。」

そう言って由人さんはシッターさんに、莉乃にベッドのある部屋迄案内して見せてくれるように頼んでくれた。

「好きな方を莉乃ちゃんが寝る部屋に運ばせるよ。」

「すいません、なんか我儘言ってしまって。」

「大丈夫だよ。子供ってそんなものだし。
そんなに重いもんでもないからさ。」

「ありがとうございます。」

莉乃はスキップしながらシッターさんと廊下に出て行き、5分くらいして興奮した面持ちで戻って来た。

「おひめさまだったよ、りのはあれでねます!」

断定形…。

「そっか、、、。」

「おひめさまてんとみながら、あのべっどでねます。」

「うそだろ莉乃…まさかそんな贅沢する気なのか。一生の運をここで使い果たしちゃうつもり?」

「…いいの。おひめさまになれるなら。」

我が子が、齢3歳にしてそんな刹那的な事を言うようになってしまうなんて。
 
俺は何とも言えない気持ちで莉乃を見つめたが、莉乃の決意は固いようだった。

俺は諦め、由人さんと名城は爆笑していた。何で?



莉乃と嵐くんをシッターさん達に任せ、俺と名城は付近を散策する事にした。
子供達はお昼寝の時間も近いから、遊んでいる内に眠くなるんだろうな、と思いながら自室に戻りコートを着る。

「行きましょうか。」

ドアの所に早くもコートを着た名城がいて、右手にチャリッ、と車のキーを持っていた。

「散策も良いですけど、少し俺の家も見に行きましょ。」

「ああ、あの…。」

「本当に人目の無い、2人きりでゆっくりできる場所ですよ。」 

にっこり。
優雅に微笑む名城。

「車だと5分程度です。」

「近いな。」

「でしょ。
管理はされてるんで何時でも使えます。」

廊下に出ると名城は俺の腰を抱いて歩いた。
誰かに見られたら、と気になったけれど、使用人は俺達が屋外へ出る時に、先程見た初老の男性が一人、姿を見せただけだった。
気を使ってくれているんだろうか。

「皆感じの良い人ばかりだな。」

俺が感心すると、

「長い人が多いから。
俺が子供の頃から見てる人が大半。」

と言いながら、笑った。
駐車場に停まっていた中の1台に誘導され、助手席のドアを開けられる。
車種は国産の4WD。意外だ。雪道仕様かな。
でもこれくらいの方が緊張しなくて良い。

乗り込むと、名城がシートベルトを閉めてくれて、ドアを閉められた。
間近に整った顔が来てドキドキする。俺の顔、赤くなってないだろうか。
と言うか、シートベルト閉めるくらいは自分でできるのだが。
そんな俺の複雑な気持ちを知ってか知らずか、運転席に乗り込んだ名城はハンドルを握る。新鮮だ。名城が運転席にいるの。
何かモデルみたいでカッコ良いな。イケメンってやっぱ得だな。


「じゃ、行こっか。」

「ああ。」

車は滑るように動き出した。




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