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11 転生白雪姫は(多分)メンヘラ (姫宮side)
しおりを挟む色濃く漂う良く知る気配。
それが何故、普通の人間の男子高校生から感じられるのかと考えた時。
それはその人間がその気配の主か、或いはその気配と身近に接しているかしかない。
まして、俺の記憶の中のその気配の主は、人ではなく"物"だった。心を持たない筈の、"物"だった。
なのに確かに目の前の人間がアイツだと確信したのは、何故だったんだろう?
すれ違って、追いかけて、捕まえて、振り向いたソイツの顔には僅かに驚きの表情。
短い黒髪に、普通程度は整った輪郭、二重瞼のごく平均的な大きさの目、高くも低くもない高さの鼻、薄い唇。体型は中肉中背。
(なんつー特徴の無さだよ...)
思わずそう突っ込んでしまいそうなモブ具合。でもこれだけ特徴が無いと、逆にそれが特徴と言えそうな気もする。
少なくとも俺の周りではそうそう見ないタイプの人間だが、見ていて嫌悪感を抱くような顔ではない。寧ろ......。
何故だかその男子生徒と目が合った瞬間、俺の心臓はどくりと音を立てた。
(...??)
これは、前世での縁の証だろうか。
やはり俺はコイツの纏う気配をよく知ってる。この気配は、白雪姫が継母の留守中によく部屋を覗き見ていた時に感じたもの...。
「くそ、手こずらせやがって...」
俺を見てどんどん顔色が変わっていく男子生徒。それを見ながら、俺はソイツの腕を掴んでいる右手に力を込めた。
「...え、あ...」
口をパクパクしているが、言葉にならないといった様子に確信する。
コイツだ。やっぱりだ。コイツがあの鏡なんだ。だってこの目、絶対に俺が誰だかわかってる。記憶があるんだ。
神の悪戯か気紛れか、本当に魔法の鏡は人間の器を持って生まれてきているらしい。
「まさかマジだったとはな。お前を見るまで半信半疑だったぜ」
俺は確信を持ってそう言い放ったが、ソイツはそれに何も返して来ず、ただ俺の顔を呆然と見つめるだけになっていた。
(あれ?)
だが、数秒待ってもソイツは何の返事もしない。
ここに来て初めて、俺はほんの少しだけ不安になった。
まさか、こんだけ濃い気配をさせといて人(物?)違いって事はないよな...?
「ん?あれ?お前、そうだろ?鏡ヤローだよな?」
そう問いかけてみると、ソイツはやっと反応を返してきた。
「...ひめ、さま...」
姫様。
ソイツは確かにそう呟いたんだ。その時の俺の安堵感がわかるだろうか?
「やっぱそうなんじゃねえかよ!ビビらせやがって...」
さっさと意思表示しろよ!と心の中で毒づいて、俺はソイツを睨みつけた。そして安心すると同時に、ある事に気づく。
それは、ソイツの気配に混ざった、癇に障るあの気配。
俺(白雪姫)を目の敵にして殺そうとした、あの忌々しい継母の魔女の気配だ―――。
(転生してもコイツの傍にはあのババアがいるのかよ)
それを察知した俺の肌はぶわりと粟立ち、胸の中にはふつふつと憎しみが込み上げて来た。いくら恨みは晴らしただろうと言われたって、非力なガキの頃に再三殺されかけた恨みは簡単には浄化されないのだ。
今世で16年生きてきてつくづく思うんだが、どうやら俺はかなり執念深いらしい。前世で俺をモラ縛りしていたバカ王子の場合は、執着心は強いものの、一旦見切りをつけたものは意外なくらいあっさり手放すタイプだった事が今世で実証された。が、対して俺は生死を越えても執拗く恨みつらみを持ち続けるタイプ。
何ならバカ王子よりタチが悪いかもしれない。何なら、実はバカ王子以上に執着心が強いかもしれない。
もう正直に言おう。
白雪姫と呼ばれていた俺は、ずっとババアの持っている鏡が欲しいと思っていた。何なら生まれ変わった今でもその時の気持ちは欠片として胸の中に残ってる。
まだ幼かった白雪姫は、1日に何度も鏡に向かって話しかけ、その答えに満足げに微笑んでいた継母が羨ましかった。
魔女だった継母が断罪されて、その所有物だった魔法の鏡が、"人身を惑わせる罪深き魔道具"として白雪姫の知らない場所に封印されてしまったと聞いてからも、白雪姫の心の片隅にはずっとあの鏡の事があった。
別に、継母のように世界一の美女だという賛辞が欲しかった訳ではなく、ただただあの神秘的に煌めく鏡に触れて、間近でその声を聴いてみたかった。
結局、かなわなかったけれど...。
俺は、捕らえたままの男子生徒の顔を見た。その茶色い瞳は、その辺を歩いている人間のものと変わらないようでいて、煌めきが全く違う透明感がある。
その瞳に自分の姿が映っているのを見て、ざわりと胸が騒いだ。
この感情が何なのか、俺にはわからない。少しばかり執拗な子供の所有欲求というだけかもしれない。
でも、胸の中の欠片が囁くのだ。今度こそは手に入れろ、憎い継母から奪って自分のものにしろ、と。
俺はすうっと息を吸って、言った。
「ずっと探してたぜ、クソ鏡」
ずっと会いたかったぜ、魔法の鏡。
「お前の所為で何度も殺されかけた事も、気持ち悪い王子と結婚しなきゃならなくなった事も、全然忘れてねえからな。」
そう言葉をぶつけると、男子生徒の顔が曇った。
人に生まれたなら生まれたで構わない。意思の疎通が出来るのなら好都合だ。人の心を持っているのなら、こうして罪悪感を植え付けるのも容易い。
その為だけに俺は怨嗟を吐く。
「ようやく恨みを晴らせる時が来たぜ」
お前が人間に生まれたのはきっと、今度こそ俺のものになるためだ。
きっとその筈だ。
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