魔法の鏡、DKに転生する〜モブですらない無機物キャラだった筈ですが〜

Q矢(Q.➽)

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10 箱入り姫宮の小さな冒険 (姫宮side)

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高等部に上がる頃になると、バカ王子はすっかり学園に馴染んでいた。
いや、馴染むどころではなく、完全に俺と元・小人達以外の学園内の人間達の人心を掌握していた。
それというのも、奴には昔と同じく王子を地で行くルックスに加え、小賢しいので成績は良く、凄まじいまでに外面が良く、トドメにハーフの帰国子女という付加価値があったから。そして、俺ほどではないにせよ、実はそこそこ強かった。
そういった事もあり、高等部に上がる頃には、『鳴り物入りの大型新人』として1年時から時期風紀委員長候補として名が上がっていたのだ。

何故かあんな屑が、ルックス・能力・人望三拍子揃ったカリスマとして持て囃され、何なら生徒会役員達すらバカ王子に心酔していたからウチの学園、終わってる。
正直、学園内で生徒会だの風紀委員だのが権力者だ~とか言ってるのなんてマンガかよと思うしクッソくだらないんだが、ウチの学園、どうやら他とはかなり違う特殊な校風らしいから俺ひとりがツッ込んだってどうにもならない。
せいぜいバカ王子に焚き付けられた風紀委員のバカ共のマークに引っかからない程度に、売られた喧嘩や求愛を陰でコソコソ、過剰防衛にならない程度に撃退するしかなかった。 
あのサイコパスは、俺が自分の好みから外れて興味は失せても、自分の支配から逸脱する奴は許せないらしく、どうにか暴れん坊で問題児(単なる正当防衛だ)の俺を退学させてやろうと思っているらしいのが見て取れた。

マジで性格悪い。

流石の俺も暴力沙汰で停学や退学になって親を泣かせたくはないので、かなり気をつけて過ごしていたのだが、その分ストレスでイライラしていた。

そんな時だ。
二坂と五木が、『なんか昨日南京塚の駅の方行ったら、すっごく覚えのある気配を纏った奴が歩いてて…』と話してきたのは。

すっごく覚えのある気配。つまり、前世の関係者。
だけど、現在、特に縁の深かった前世関係者は、記憶のある無しに関わらず、殆どが俺の周囲に転生して存在してた。
前世で早くに亡くなった母も、ボンクラ王だった親父も、森に逃がしてくれた狩人も、城の召使い達も、あのバカ王子も、バカ王子の親達も。

その時点で会ってなかったのは、悪縁である方…つまり白雪姫を害した継母の魔女くらいだった。

まあ、探しに行くかは正直、迷った。
六条にも一の宮にも、やめておけと言われた。
確かに再三に渡って殺されかけはしたが、結局白雪姫は死ななかったのだし、にも関わらず継母ババアの命は取る事になったから、イーブン以上に復讐は遂げているじゃないか、と。彼女は命で罪を贖ったのだし、もしかして記憶は無いかもしれない。
そんな相手に、怒りをぶつける為にわざわざ捜さなきゃいけないのか、と。

でも、そう正論を言われると天邪鬼を起こす捻くれ者が現世の俺だ。
いや勿論、本当に記憶が無いなら何をする気もなかった。今どんな人間になっているのか、悪さはせずに過ごしているのかを知りたいという、ただの好奇心だ。でも絶対に見つけ出してやる、なんて執念を燃やしてた訳じゃない。あくまでも、今世でも縁があるのなら出会えるかもな、程度の気持ちだった。
俺は小煩い7人に何も告げず、1人で二坂と五木が気配を察知したと言っていた、南京塚駅に向かった。

ウチの学園からは20分程歩いたところにある南京塚の駅は、利用客も多い、そこそこ大きな駅だ。学園にも通学で使う生徒はいるらしいが、俺は路線が違うから使わないし、来た事もなかった。
だからあんまり周辺の様子も駅の中の様子もよくわからないまま、ブラブラと歩いていただけだった。
ウチの学園の制服は白くてちょっと目立つ所為か、ジロジロと二度見、三度見されながら当てどもなくブラついて、気がつけば細く寂しい通路を歩いていた。

(…迷った…)

実は、顔の女々しさをカバーする為に体だけは鍛えて来たものの、その他の部分は依然として温室育ちだった俺。
小等部に入って元・小人だった7人に再会してからずっと、何処に行くにもその中の誰かは一緒だったから、1人歩きには慣れていない。
今まで経路なんかも人任せにして歩いてたから、でっかい案内板があっても見方がいまいちわからなかった。

(仕方ねえ。確かアプリで経路検索とかできるんだったよな)

行き先への経路が曖昧になると、いつも誰かがスマホで検索していたのを思い出して、試みてみようと上着の内ポケットからスマホを取り出した。

「えっと…あ、アプリダウンロードするとこから始めなきゃなのか…。じゃ、どのアプリをダウンロードすりゃ良いのか検索してみるか」

世間知らず過ぎて初歩の初歩で躓いてしまった。こんな事なら道場での鍛錬ばっかしてないで少しはその手の知識も入れておくんだったと後悔。

その時だ。
スマホを手に悩みながら歩く俺の横を、黒い学ランを着た生徒が通り過ぎたのは。

すぐにわかった。これがアイツだと。
何故なら脳裏に、何度かババアの部屋を覗いた時に見た事のあった鏡が鮮明に思い浮かんだからだ。
反射的に振り返り、走り寄って学ランの袖を掴んだ。

鏡よ鏡

俺はお前に聞きたい事も言いたい事も、山程あるんだ。




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