魔法の鏡、DKに転生する〜モブですらない無機物キャラだった筈ですが〜

Q矢(Q.➽)

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15 それは初心者向けではありません

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 なんだろう。気の所為かもしれないんですが、なんだか不味い気がします。

 肩から降りてきて腰を抱いた、木崎君の手。ただそれだけの事に、どうしたことか僕の本能が危険信号を発しているのです。お、落ち着かない…。

 木崎君の距離感がバグっているのはいつもの事なんだから慣れている筈なのに、今日は何故こうもソワソワしてしまうんでしょうか。かといって今更木崎君の腕を外して距離を取るのも不自然だし…と、少し困って俯いた時でした。

 

「宇一」

「ひょっ?!」

 耳元で呼ばれて変な声が出てしまいました。一瞬聞き間違いかと耳を疑いましたよ。何故なら、宇一、なんて下の名前で呼ばれたのは初めてだからです。再会してから今まで、各務でも鏡でも、木崎君が僕を呼ぶ呼び方はどっちにしろカガミでした。って、僕の下の名前覚えてたんですか木崎君。
 
「き、木崎君…僕のなま」

 驚きと困惑を隠せないまま木崎君の方を見ると、そこには木崎君の綺麗な顔が。

「え…」

 その1文字を最後に、僕の声は木崎君の唇に飲み込まれていきました。あたたかくて、柔らかな弾力。
 
 なんと僕は、木崎君に唇を奪われてしまったんです。
 前世は無機物。今世で初めて人の身を得た僕にとって、それは初めての口づけでした。でも、だからこそ何が起きたのかわからず、状況の把握が遅れてしまい、結果的に僕の唇は木崎君に好き放題されてしまったんです。
 ちゅ、から始まり、舌で唇をこじ開けられ、先ずは歯を舐められました。次には口内を舐め回されてから舌を吸われました。そして情けなくもその間、僕はずっとボーッとされるがままだったのです。
 だって、こんなの初心者にするキスでしょうか?!衝撃で呆然としていた僕でしたが、その内息苦しくなってきました。だってこんなの初心者に(ry

 
 視界が暗くなったと思った後、再び目を開くと、最初に見えたのは焦ったような心配そうな、木崎君の顔でした。しかしその背景はめちゃくちゃ見知ったウチのリビングの天井だったので、自分が寝ているのがソファだとわかった僕は、暫くぼんやりと木崎君の顔を見つめていました。

「大丈夫か?」

「……」

「苦しくないか?水、飲めるか?」

 ぼんやりとしたまま、僕は頷きました。苦しくはありませんでしたが、何故か声を出すのが億劫だったからです。
 木崎君はホッとしたように表情を弛めて、僕を片腕で抱き起こしてから反対側の手でテーブルに用意してあったらしい水の入ったグラスを持ち、ゆっくりと飲ませてくれました。

 こくっ、こくっ 

 静かなリビングに、水を飲み下す喉の音がいやに耳につく気がしました。自分にしか聞こえてないんでしょうけど、なんかそんな気がしました。

 少量ずつ、4、5回飲んだところでグラスの水が半分になり、僕はもう要らないと唇を離し、小さく首を振りました。

「もう良いのか?大丈夫か?」

 テーブルにグラスを置いて空いた手で僕の髪を撫でながら、木崎君は眉を寄せて聞いてきました。

「うん、だいじょぶ…」

 僕が言葉を発した事で本格的に安心したらしい木崎君が、そうかと言って目を細めます。そうすると、普段は吊り目がちの目が優しくなって、僕の一番好きな表情になりました。

「…ごめんな。俺が考え無しに突っ走っちゃって」

 木崎君は、今度は申し訳なさそうにそう謝ってくれました。水を飲んで人心地ついた僕は、現状に至るまでの記憶を徐々に思い出し、いたたまれない気分になりました。羞恥でどんどん顔に熱が集まってきます。多分、今の僕の顔は真っ赤です。

「どうして、僕にあんな事を…」

 小さく声を絞り出してそう聞くと、木崎君はちょっと目を見開いたようでした。

「どうしてって…なんでそんな事聞くんだ?」

 なんと。ここでまさかの質問返し。しかも、本気で心外という顔をしています。まじか。え?もしかして聞いた僕がおかしいの??

 ……いや、そんな事ないでしょ。突然ファーストキスを奪われたんだから、理由を聞くのは当然の権利の筈だ、流されるな、僕。

「質問してるのは僕なんだけど…」

 そう言うと、木崎君はやれやれというような、慈愛のような表情をしました。腹立つゥ…。
 
「そうだったな。お前は昔から色恋には鈍感だったもんな」

「…」

 鈍感もなにも、今より前は無機物ですのでね?

僕が むっと唇を尖らせたのを見て、不機嫌になったと思ったんでしょうか。木崎君はよしよしと赤ん坊をあやすようにまた頭を撫でてきました。

「俺はお前が可愛いだけだ、昔も今も。…いや、それだけじゃないな、今は」

「?」

 木崎君は僕の顔をまじまじと見つめながら、思案顔になりました。それから、暫くしてこう言ったのです。

「俺、その目に俺以外が映るのに嫉妬するくらい、お前の事を好きなんだわ」

 そう言い終わった時の木崎君の顔は、見た事もないような清々しいものでした。まるで晴れ渡った空のような…。

「だから、二度と白雪なんかと会わせたくない」

「……」


…ええっと…。

 これはつまり、恋の告白って事なんでしょうか?






 










 

 
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感想 6

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みんなの感想(6件)

さくらこ
2023.04.16 さくらこ

2ページ目で既にやられましたー。作者様の創作力に🤣

2023.04.16 Q矢(Q.➽)

ありがとうございます

妄想力だけが取り柄です🤞

解除
こここ
2023.03.26 こここ

エブリスタで読ませて頂いて続きが読みたくて来ました。
面白いです!(* ´艸`)クスクス

2023.03.26 Q矢(Q.➽)

ありがとうございます〜!!

こちらでもまだ10話までなんですが…がんばりますね!😊

解除
Madame gray-01
2023.03.17 Madame gray-01

爆笑〜🤣
更新が楽しみ過ぎます‼️

2023.03.18 Q矢(Q.➽)

ありがとうございます!
お楽しみいただけていたなら幸いでございます😊

解除

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