ロミオ化した元彼から逃れる為に求人広告で歳下コミュ障陛下の側室になった俺の、楽しい後宮ライフ

Q矢(Q.➽)

文字の大きさ
16 / 27

16 一夜明けたら位が上がってた

しおりを挟む


 その後、俺と陛下は抱き合ったまま横になって、ぽつりぽつりと互いの事を話した。そうしている内に、さっきはあれだけ興奮材料になっていた互いの体温と声に、今度は心地良く睡魔を誘われて...。いつの間にか寝落ちてしまい、気づいたのは午前5時のアラーム。シュウメイさんにいわれて、色気の無い機械音じゃなくて鳥の囀りにしてあったから

(こんなんで起きられるかな)

なんて内心不安だったんだけど、案外すぐに目が覚めた。
 囲われた腕の中から上半身を捻って手を伸ばし、ヘッドボードに置かれた小さな目覚ましをタッチして音を止める。 良かった。涎垂れ流して寝たりなんてだらしないところを見られるのは避けられたぜ。ふぅ...。
 陛下を見ると、俺が動いたにも関わらずまだ目を覚ます気配はなく、穏やかな寝息を立てている。端正な顔に閉じた瞼、逆扇状に影を落とす睫毛。...え、睫毛なっが。俺も長い方だと思ってたけど、陛下の睫毛は黒くて長い上に密度がびっしり。思わず暫し観察する。
 
 なるほどな、俺のは上向きにくるんとカールした睫毛なんだけど、陛下のは長いけどまっすぐなんだな。下睫毛も長い。額から鼻先までまっすぐに通った芸術的に高い鼻。唇は薄く見えて、実は下唇にやや厚みがあって肉感的。俳優やモデルにも、こんな完成度の顔、見た事ない。

 はぁ~...、と感嘆が漏れてしまった。

 まさかこんな人が陛下だったなんて。改めて嬉しい誤算だった。しかも俺の事がとっても大好きなんだろ?いや俺だって完全に惚れちゃったけど。

 暫くじいっと陛下の寝顔に見蕩れていた俺だったが、ハッと思い出す。

(...あ、いけないいけない。人目につかないように朝は早目にお部屋に帰さなきゃいけないんだっけ)

 よくわからないけど、初夜はそういうしきたりらしい。その後は、相性と関係性によるとシュウメイさんは言ってた。ちなみに先帝である上皇様は、関係性が深かった側室さん達とは一緒に朝食まで取ってから帰っていったとか。まあ、慣れた相手なのにいつまでも時間厳守ってのも堅苦しいもんね。俺も、本当に陛下が通ってくれたらその内一緒に朝食を食べたりするのかなあ、なんて自然と顔がにやけた、けど...。とりあえず、陛下を起こさなきゃな。

「っと、その前に...」

 俺はベッドから降りてバスルームに向かった。正確には、バスルームの前にある洗面所にだ。急いで歯磨きをして、顔をぬるま湯ですすぐ。フェイスタオルで水気を拭いながら鏡に映る自分を見た。

 うむ。短い睡眠時間だったにしては瞼や顔のむくみも無し。特に目立つ寝癖も無し。肌状態...何故かかなり良し。

 ...陛下のアルファフェロモン浴びたからか?

 髪を手櫛でさかさか直してからベッドに戻る。

「陛下、陛下。そろそろ起きましょう」

 すやすや寝ているのを起こすのは忍びないなと思いつつ、心を鬼にして陛下の肩を優しく揺する。陛下は目を閉じたまま眉を顰めて、小さく唸った。

「...ん...」

「陛下」

 もう一度呼びかけると、 ふ、と薄目が開いた。それから、ぼんやりした目を俺に視線を向けて、数秒。

「...ユウリン...」

 ふわっと微笑んで、陛下が俺を呼んだ。その甘えたような声にダメ押しのずっきゅん。

「はい」

「ユウリンと過ごした時間は夢ではなかったんだな...」

 か、可愛い...。歳下ってこんなに可愛いのか?いや、陛下が可愛いだけだな。
 言い寄ってくる相手にも歳下は居たけど全然興味を引かれなかったもんな。なんとなく自分には歳上が合ってるんだと思い込んでいた。だけど陛下とこうなってみると、必ずしもそうではないんだと思う。
 年齢じゃない。相手によるんだ。

 名残惜しいけど、という気持ちを込めて頬にキスをすると、途端に陛下の目が見開かれた。

「ゆ、ユウリン...今...」

 と動揺したように言う陛下。驚いて目が覚めたもよう。良かったね。

「もう起きられてお戻りになるお支度をなさいませんと。初めてのお渡りはそういう決まりだって聞いています」

「そうだった...そうシュウメイに聞いていたのだった」

 陛下の方もきちんとレクチャーされていたらしい。身を起こしてキリッとした表情でベッドの上に胡座をかいて髪をかき上げた。ほっぺちゅーの動揺の名残りか、少し顔が赤いような。

「陛下、洗顔されるならこちらへ。身支度のお手伝いをします」

「うん」
 
 素直にベッドを降りて履き物に足を通し、差し出した俺の手を取る陛下に思う。
 
...なんだかマジで躾の良いワンコみたい。

 
それから15分程度ばかり、俺は陛下の支度を手伝った。と言っても、陛下も成人男性なので普通に自分で顔も洗うし歯磨きもする。俺がしたのはせいぜい、横でタオルを持って立ってたり、着てきた夜着を着せ直したり、髪を梳いてあげたりという程度のサポートだ。陛下は寝起きにも関わらずご機嫌で、目が合う度に照れ臭そうに微笑うので、俺の方もキュンキュンしながら微笑み返す。

 ただ、せっかく梳いた髪を、部屋を出る前にばさりとすだれヘアーに戻した時は少し微妙な気分になったけど...。陛下、もしかして公の場でもあれで通してるの?嘘でしょ?
 今まで夜伽に呼ばれる事も無かろうと陛下に全く興味も持ってなかったから検索した事無かったけど、陛下をお見送りしたら皇室関係の過去ニュース検索かけてみなきゃ。


 だけど陛下を送り出した俺は、無事に(?)初夜伽を終えた事で昨日一日の緊張と疲労が一気に押し寄せたのか、即睡魔に襲われた。
 後から聞いた話だと、朝食を持って来た侍女ちゃんの挨拶にも、「う~ん...」と1度反応しただけで、そのまま眠り続けていたらしい。
 そのまま昼過ぎまで寝てしまい、目が覚めたのは13時を過ぎていた。

「おめでとうございます。総指南役様から2度ほど、ご連絡がございましたよ」

なんてニコニコしながら言われて、しまったと思う。ほんとはシュウメイさんからの連絡を受けて大体の事、報告しなきゃいけなかったのに。
 うっかり寝てしまった俺の馬鹿馬鹿!!


 だがその後、部屋を訪れたシュウメイさんは、俺が寝てしまってた事にも全然怒ってはいなかった。
それどころか、微笑みながら俺に言ったのだ。

「おめでとうございます、ユウリン様。
本日、貴方様は正式なご側室とおなりあそばされました。ご快挙でございます。
 これを持ちまして、ユウリン様は嬪の位に就かれた事になります」

「ひ、嬪?」
 
「ご側室にも階級がございます事、先日ご説明申し上げましたでしょう。とりあえずの一番下の位ですが、今のところ唯一の位持ちですよ!その調子でガンガン行きましょう!」

「え、でもあの...実はまだ最後まではしてないんですけど...」

 正直にそう言った俺に、シュウメイさんは肩を竦めながら答えた。

「良いんですよ、そんなの。そんな事言ったら私なんか今此処には居ません。お渡りがあったという事実が大事なんです」

「はあ、そういうものなんですか...」

「そういうものです。それに...、」

 拍子抜けした俺に、シュウメイさんは意味深にニヤリと笑った。

「陛下のあのご様子からしても、どうせ時間の問題でしょうしね。これからは週に2日、スケジュールを組みますね」

「あっ...あはは...はい」


 陛下、どうやら本気だったらしい。













 





 




 
 
 
 
 
 

 
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...