傾国の性悪Ωは悪役令息に恋をする

Q矢(Q.➽)

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エリっちとダベりたい俺

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「エリオ様」

  今日もエリオは中庭にいた。
  もうそろそろ冬だというのに寒くはないのだろうか。白い頬が外気で更に青白く見える。
  前回と違うのは、今日はバッチリ起きてるって事。
  あと、マフラーもしっかり巻いてる事。
  冬の陽に透けて茶色く見える黒髪が綺麗だ。横顔には長い睫毛。
  俺が後ろから声をかけたので、驚いて肩が跳ねていた。
  ごめん。

「えっ、あ、セス…様…」
「私の名をご存知だったのですね」
「そりゃ…はい」

そうだよな。俺もエリオとは違う意味で有名人ではあるもんな。ましてや、今は婚約者の浮気相手…いや、本命かも、なんて言われてる外国人なんだから。
  俺は立場的に、エリオに嫌われてる可能性が高い自覚があった。

  だけど今、エリオは俺を睨みつける事も逃げようとする様子もなく、キョトンとしているだけである。なので俺は、ベンチに座っているエリオのそばに腰掛けた。
  前回と同じように。
  エリオはその時やっと訝しげな顔をした。警戒されてしまっただろうか。
  見れば、エリオの膝の上にはやはり本。好きなんだな、本が。

「私に、何か?」

  エリオは読んでいた本に栞を挟みながら俺を見た。人の話をする姿勢が出来てるな。やっぱり彼は聡明な人だと感じる。

「エリオ様と、お話をしてみたくて」

  俺はにこりと微笑んだ。

「私と、話を…?」

  エリオは不思議そうに首を傾げて、それが俺の胸にヒットする。

ヴッ、可愛い…ッ

「ご迷惑でなければ、少し」

  エリオは少し考えて、頷いた。

「わかりました。良いですよ」

  なんて良い子なんだ。(同じ年)

「王太子殿下の番、お断りになられたんですね」

  俺が話をしたいと頼んだにも関わらず、どう話を持っていくか逡巡していたら、意外な事にエリオから話を振られて驚いた。

「ええ。だって、殿下にはエリオ様というご立派な許嫁がいらっしゃる事ですし、他国の人間である私の出る幕では…」

  俺はそう言いながら苦笑した。するとエリオは意外そうに、

「あの、だって、殿下とお付き合いされているのでは?」

と聞いてきた。
  お付き合い…お付き合いね…。
この際はっきりさせておくか。

「エリオ様。
確かに殿下は友好国からの留学生である私の事をお気にかけて下さり、お気に召しても下さっていたようですが、私と殿下が深いお付き合いをしているというのは、誤りです」

「えっ?そう、なのですか?」
「そうなのですよ。
他の方々にはどう見えているのかは存じませんけれど、私と殿下はそういった関係にはございません。…恐れ多くも、申し込んではいただきましたが…お聞き及びの通り、きちんとお断りしております」

  いやまあ、惚れるような思わせぶりな事をしたのは否定しないけどな?あざとい仕草とか。
  でも、色恋沙汰を思わせるような決定的な言葉は一言だって口にしてない。勿論、肉体的接触だって無い、
  それなのに、大事な人がいながらも都合の良い勘違いをするのはα共の勝手だ。惑わされた奴に浮気心があるのが悪い。
  だけどそれはわざわざ言わなくて良い事だよな。

  エリオは俺が王太子との関係を否定するのを静かに聞いていたが、聞き終わると長い溜息を吐いた。

「そうだったんですか…。
残念です」
「え?」

  残念?

  エリオは肩を落として本当にガッカリした様子。何だ?俺、何か変な事言った?ガッカリされてるの、何で?
  浮気じゃなかったんだから喜ぶとこじゃないのか?あ、いや、婚約者のポンコツ振りを知ってのガッカリかな。

  しかし次に彼の口から出てきた言葉は、そんな予想とは全く違ったものだった。

「やっと、婚約破棄していただけると思ったんですけど…」
「……え?」
「私、殿下とは結婚したくなくて…」
「…あ、やっぱり…?」
「え?」
「え?」

お互いに困惑を隠せない俺達。

……これは色々擦り合わせが必要なようだな。





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