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念書は反故にする予定の王太子
しおりを挟む王太子アレスは面白くなかった。
「何故なんだ。」
何故、セスは今更俺を拒否するんだ。
俺の事が好きな癖に。
婚約者であるエリオより優先してやれば、納得して俺のものになると思ったのに。
俺はαでイケメンでこの国の王太子だぞ…何の不満があるんだ。
アレスには、自分と同じように他人にも好みがあるという事を理解できない。
それはアレスが王太子だからとかαだからと言うより、単なる性格である。
いや王太子ってのは少しは関係ある…か?
父王の子供は王妃にも側室達にも子供は姫ばかりで、年齢を重ねてからやっと男子であるアレスを授かった。
なのでアレスは それはもう、大切に可愛がられて育った。
上はαと言えど、姉ばかり。
美しい姉達も皆、唯一の弟王子をとても猫可愛がりしてどんな願いでも叶えるように動いてくれた。
そんな環境で人に傅かれて育った子供が、自分が世界の中心と思い込むのに時間はかからない。
ナチュラルに傲慢に育ったアレスは、父の美しい側室たちや姉達に囲まれチヤホヤされて育った為、幼くして目が肥えた。
美しい者と見ると、男女見境無く傍に召し置きたがる癖が出来たが、中でも特にハマったのがレニングスト公爵家の美しい兄弟だった。
長男は歳上だが、凛々しく、妙に色香のある精悍な美しさを持つαで、幼いながら骨格もしっかりして、成人した暁にはさぞかし逞しい美丈夫に…というような少年。
一方、弟の方は。
これがまた、女性ですら見た事の無いような、ひなにも稀な…というようなとびきりの美少年で、アレスはこのエリオという弟に夢中になり、入れ込んだ。
どうせなら何方も欲しかった。
兄の方は常に傍に置くのに良い騎士にもなりそうだし、弟は連れ歩いて見せびらかすにも、ずっと閨に侍らせて可愛がるのにも良い。
アレスは何でも全部手に入る事に慣れてしまっていて、公爵家の息子達にも2人同時に自分に嫁いで来いと言った。
慌てたのは公爵である。
息子は2人だけ。既に婚約者もいる跡継ぎの長男を召されてはかなわないし、次男だって未だ子供だ。
この色狂いのクソガキ王子は何を考えているんだ、と戦々恐々として、王にそれと無くクレームを入れた。
長年、自身も後継問題に頭を悩ませていた王には公爵の危惧は身につまされるものがある。
王子に、いくら家臣とはいえ、あまり無茶振りはしないように注意した。
そんな訳でその時はアレスも父王の手前、凪になるしかなかったが、13歳になったエリオが学園に入ってくると、目の色が変わった。
再燃である。
数年振りに見るエリオは、それはもう輝くような美しさだった。
2、3年前見た時は、幼児体型が抜けきらなかったものが、背が伸びてきてほっそりとして、華奢に伸びた手足がまた長い。
青い海の色が幾層にも重なったような複雑な色合いの大きな瞳は、長い睫毛の下で物憂げに揺れて、それを向けられた者は一瞬で恋に落ちた。
艶やかな黒髪は少し癖があり、柔らかいウェーブがかかっている。
アレスは焦った。
アレは自分が目をつけた者なのに、このままでは誰かに奪られる事になりはしないか?
そう思ってから毎日のように、授業時間以外はエリオに張り付いた。
父王にも連日手紙を送り、公爵家に再三の婚約の申し入れをした。
そして、とうとう折れたレニングスト公爵はこう王に告げた。
「次男のエリオは、未だバース性が判定されておらぬレアケースだと医師から言われております。
もし、この先次男がΩと発現するのならば殿下のおそばで生きるのも良いかもしれませぬ。
ですが、それ以外ならば、その時は本人の思う道を歩かせてやりたく思います故、婚約は解消していただきたく。」
次いで、公爵はそれについての念書を取り交す事も願い出た。
王は、それは尤もな事だなと思った。
子を成せるΩであるならば、正妃でも側室でも傍に置く理由になるが、只の男性であるβや、よりによってαを傍に置くにはどういう理由をつけたら良いのかわからないからだ。
それでも、本人同士の間に愛があるとかそういう事なら話は別だが、そういう訳でもないし。
いくら王族でも、同性に関心も無く恋愛感情も無い男を、我儘だけで縛り付けておく訳にはいかない。
王は苦労人だったからか、そういう面ではまともな人物だった。
息子の教育には失敗したが…。
息子が一方的にゴネてるだけだ、という負い目のある王は、念書の事も、それで良いと頷いた。
かくしてアレスとエリオは、一応の婚約関係を結んだのだが…。
当のアレスはエリオのバース性が何と出ようが、手放す気は無かった。
Ωなら文句無く正妃に出来るが、βでもαでもあの美しさだ。
とにかく抱きまくりたい。
他の者の手には渡したくない。
それに、最近では隣国からの留学生であるセスにも目をつけている。
あれはΩでも最上級のΩだ。
なよやかで美しく、エリオとは違う大人びた色気がある。
ヒートを抱いたらどんなに悦いだろうか。
「俺は王太子だ。
何方も手に入れて良い筈だ。」
アレスは自分が2人に嫌われている事を知らない。
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