ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q矢(Q.➽)

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急いで教室に戻ってジャージを脱いで体操着から制服に着替える。リュックの中からお弁当の袋を取り出して、それを持って教室を出ようとすると慌てたような声で呼び止められた。稲取君だ。

「おい、ランたん?どこ行くんだよ、昼飯だろ?」

そうだった。何時も稲取君、佐久間君、湯川君と4人でお昼食べてるから、黙って行くの悪いよね。
そう気づいた僕は、振り向いて稲取君にキリッとした顔を作って言った。

「今日は別で食べてくる!」

「え?どこで?」

「まだわかんないけど!」

それだけ答えて教室を出たら、今頃帰ってきた佐久間君と湯川君が、教室から飛び出してきた僕を見てびっくりしてた。

「あれ、どうしたの?」

「今日のお昼は別々!」

「あ、うん、わかった」

「じゃ、またあとで!」

僕はそう言ってCクラスに急いだ。1年はSクラスが1番奥で、次いでA、B、C、って並んでる。走っちゃいけないから早足で。

Cクラスに着くと、開いていた後ろの出入り口に立って壱与君を探した。

「あ、壱与君!」

壱与君は一番後ろの窓際の席に座ってた。僕が呼ぶとこっちを向いて、来い来いと手招きをされた。
え、入れって事?良いの?
教室内をぐるっと見渡すと、僕の方を見ている生徒達が結構いた。うわー、流石の僕でも初めて別クラス入るの緊張する。

「お邪魔しまーす…。」

僕はそう言ってそろそろとCクラスに足を踏み入れて、壱与君の席に近づいた。彼は自分の前の席の椅子を指差して僕に言う。

「こっち座りな。そこの主は何時も別のとこ行ってるから。」

「そうなの?じゃあ…お借りしまーす。」

椅子を動かして、壱与君の方に向けてから座る。壱与君の机の上にはコンビニの白い袋が乗ってた。
僕は置くとどかっと音がするお弁当袋を机に置いて、壱与君の顔とコンビニ袋を交互に見た。
まさか、お昼ご飯って…。

「なに?」

壱与君は不思議そうにしながら袋から紙パックの牛乳と鮭のおにぎりを取り出した。嘘でしょ?おにぎりとお茶じゃなくて牛乳なの?合うの?しかもおにぎり、1個しか入ってなくない?

僕は呆然としながら壱与君を見つめてしまった。

「壱与君、もしかしてそれだけなの?」

あ、驚き過ぎて疑問が口から出ちゃった。

「うん、まあ」

「えぇ…そんなに背も高いのに?」

熊なのに?
でもそういや佐久間君も何時もおにぎり2個とかだな。熊さんってたくさん食べるのかと思ってたのに、もしかして少食なのかな。単なる個人差?佐久間君や壱与君がそうなだけ?

それにしたって、と僕は心配になってしまった。もしかしてこないだ具合い悪そうだったの、貧血とかだったんじゃないかと思ったんだ。でも壱与君は、ハハッと笑った。

「俺、自宅以外だとあんまり落ち着いて食べられないんだ」

「そうなんだね」

壱与君は繊細さんなんだな。そんな感じする。何だか育ちも良さげだし。

「吉田のおべんとはでっかいね。重そうな音がした」

壱与君は僕がお弁当を袋から出して包みを解くのを興味津々って顔で見ている。
…お母さん、今日の結び目めっちゃ固いんだけど。

「重いよ。毎日重い」

解き終わった僕が神妙な顔で答えると、壱与君も神妙な顔になって、

「ちょっと持たせて?」
 
と言ってきた。探究心旺盛だね。
僕は彼の前に無言でお弁当箱(2段)をツツッと指先で滑らせた。壱与君はそれを両手でそっと持ち上げて、目を丸くした。

「ずっしりしてるな。弁当の重さじゃなくない?1キロ超えてそう」

「ご飯だけで600gだって言ってたよ」

それもこれも、成長期の僕がたくさん栄養を摂取しておっきくて立派なアルファになる為なんだよ。だからお母さん、共働きなのに毎日前日の夜からおかずの仕込みしてくれてるの知ってる。特に唐揚げが最高なんだよね。

「僕、早くおっきくなりたいからさ」

「…幼稚園の頃に思いがちな事…」

牛乳のパックにストローを挿しながら壱与君が言った言葉に、ちょっぴりうぐっとなる僕。たしかに、他の人にはそうなのかも。でも僕の場合は、幼稚園から高一の今までずっと現在進行形での願いなんだけどね。

「もしかして毎日そんな感じのおべんと?」

紙パックを右手に持った壱与君がこてんと首を傾げる。濃い茶色の髪がサラッと揺れて…ひゃー、か、かわいい~。僕は内心もだもだしながら頷いた。

「吉田はなんでそんなに大きくなりたいの?」

「それは…やっぱアルファはおっきくないとだし…」

僕がそう答えた瞬間、壱与君の目の瞳孔がちょっとおっきくなったように見えた。え、僕なんか変な事言った?!

「…そっか。吉田、ちゃんとアルファって自覚あるんだ?」

「え、そりゃ…検査受けたし」

「…だよなあ」

何故か不思議そうな顔をした後、ふふっと笑う壱与君に、教室内でお昼を食べていた生徒達が見蕩れているのがわかった。
だよね。壱与君、素敵だよね。なのに、何故だろ?さっき壱与君が廊下に立ってた時も、僕が今しがたお弁当持ってCクラスに来た時も思ったけど、この教室で壱与君は遠巻きにされてる気がする。気の所為かなあ。
もう入学して2週間近く経つのに、壱与君は親しくなったクラスメイトはいないのかなあ?















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