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しおりを挟む昨日からずーっとリンゴの匂いがしっ放し。
リュックとか中の持ち物全部嗅いでみたけどよくわかんない。お風呂に入っても鼻うがいしても変わんない。
別にリンゴは大好物だけど、鼻がおかしくなってたら嫌だなと思ってお母さんに言ってみた。でもお母さんは、リンゴの匂いなんかしないけど、って首を傾げる。
だから僕も、気の所為かもね!と思って普通に過ごしてたんだけど、夜に仕事から帰ってきたお父さんの身に異変が。お父さん、玄関からのただいま~が聞こえてから、僕らの居るリビングに来るまでにしっぽがへにょってなってた。そんでキョロキョロしながら部屋中を見回して、
「誰か来てたのか?」
なんて言う。
「今日は誰も来てないけど…」
不思議そうにお母さんが答えて、次にお父さんは僕の方を見て、ハッとした顔。
「ら、嵐太、お前か?」
「え、僕?何?」
「何か大きな獣の匂いがする」
「大きな…?」
……あっ!
僕は思い出した。
壱与君、グリズリーだった。
「お昼休みに、熊の友達と一緒したよ」
それを聞いてお父さんは警戒を解いたんだけど、今度は
「昼ってご飯一緒に食べただけか?」
って聞いてくる。
「そうだよ?あ、でね、お母さん料理上手だねって褒められた!」
「あらぁ~、良い子じゃないの~」
お母さんは満更でもない笑顔になって、お父さんはまだ何か怯え顔。
「でもこの匂い、何時もの熊の友達とは違わないか?」
何時もの、って佐久間君の事かな。ずっと4人で食べてたし。
「うん、違うよ。壱与君はこないだ保健室で会ってね、最近友達になった子。おっきくて綺麗でとっても優しいんだよ」
「熊さんなのね」
「うん、グリズリーだって!」
「あらすごい」
僕とお母さんの会話を聞いて、グリズリー…と真っ青になってるお父さん。ウチの父さんってこういうとこ気が小さいんだよね。
「…でもお前、この匂いの付き方って…」
って、なんかゴニョゴニョ言ってる。匂い…匂いなんかするかなあ?お風呂も入ったばっかりなのに?
でもその時、ふと聞いてみた。
「お父さん、それってどんな匂い?」
「どんなって…お前、わからないのか。こんだけ匂いつけられてるのに」
「リンゴの匂いとかする?」
「そんな訳あるか。熊だぞ?」
だよねえ。熊さんは熊さんの匂いだよねえ。じゃあこのリンゴはやっぱり僕の気の所為か。でも帰ってきた父さんですら気づく熊さんの匂いもわかんないってのが引っかかった。
嗅覚がおかしくなってるのかな?でもそもそもレッサーパンダってあんまり嗅覚良くはないから、僕は普通だと思うんだけどね?お父さんは神経質なとこがあるから、普通よりもちょっと鼻も耳も良いみたいだけどさ。…と、そんな事を考えてて思い出した。
お昼休みが終わって教室に戻った時、相模君に『大丈夫か?』って言われた事を。あれってもしかして、相模君はこの壱与君の熊さんの匂いの事を言ってたのかな?…でも相模君って純人だよね。
大丈夫か、って、何に対して言ったんだろう?
鼻も変だし、まさか僕、どっか変なのかな?!
何だか色々気になってきて急に食欲が落ちてしまった僕は、その後のご飯のおかわりも2回しかできなかった。つらい。せっかくお母さんのから揚げの日だったのに…。
お母さんも心配して、
「やっぱり明日、病院行ってみる?」
って言ってきた。僕はから揚げを口に入れながらこくんと頷く。
味はするけど…やっぱり今日は15個しか食べられないよ…。
目の前のから揚げの山を見ながら、こんなに食欲が落ちてしまって、もし変な病気だったらどうしようと胸がきゅーっとなる。
「…ごちそうさま…」
「もういいの?」
「うん…」
お父さんも心配そうに僕を見てる。
「いつもの半分も食べてないじゃないか…。やっぱり具合いが良くないんだな」
今夜はゆっくり休め、だって。母さんも僕の額に手を当てて言った。
「熱は無いみたいだけど…とりあえず明日の朝になったら学校に連絡入れるから、一緒に病院に行こうね」
「うん」
心配で、デザートのリンゴシャーベットも1個しか食べられなかった。つらい。
翌日、僕は学校を休んでお母さんと近くの市立病院に向かった。
病気の心配とか病院に行く緊張とかで一晩中寝られなくて、朝は更に食欲が無かったから、お茶漬け5杯しか食べられなかった。
はあ…。
昨日はあんなに楽しかったのに、今日は壱与君にも会えない。
病院に着いて、症状が症状だからって耳鼻科にどーぞって事で診察と嗅覚検査を受けてみたけど、問題無し。レッサー獣人としては標準だった。
念の為内科に回って血液検査もしてみたけど、やっぱり異常無し。でもその間もずっとリンゴの匂いはしてる。
診察室の中、検査結果を説明してもらいながら、変だなあ、これはもしやメンタル的な?って流れに傾きかけた時、ふと思いついたようにお医者さんが言ったんだ。
「バース専門科に行ってみたらどうでしょう?
アルファなんですよね、嵐太君」
「バース専門科…」
「そっちに関係する事かも、という…あくまで可能性ですが」
まあそんなお医者さんの助言で、僕とお母さんはアルファとわかった時からお世話になってるかかりつけのバース専門病院に向かったんだ。
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