拾う神なんていない

Q矢(Q.➽)

文字の大きさ
4 / 14

4

しおりを挟む

日比谷は、拒否する俺の唇をキスで塞いだ後で、また俺の心臓を止めるような事を口にした。

「知られたくないんだろ?子供の頃の事。」

その言葉で確信したよ。コイツ、知ってる。俺がガキの頃、親に売られてたのを知ってるんだ、って。

「……なん、で?」

日比谷に問いかけた俺の唇も声も震えた。いや何で知ってる?って思うじゃん。あの汚ったない密室で起きてた事をさ。
俺と同じ歳の日比谷が客だったなんて事は有り得ない。俺が覚えてる限り、一番若いお客でも多分、20代半ばくらいだったから、今ならもう30過ぎてるだろ。ロクに小学校だって行ってなかったし、友達らしい友達もいなかった。そして何より、あの頃俺と日比谷は学区が違った。
なら、何で、何処で。

少しの沈黙の後、日比谷は震えて俯いた俺の耳元に唇を寄せて、吐息みたいに言った。

「…じゃ、此処じゃなんだからハルんちで話そっか。」

「……俺んちで?」

ダメだって頭の中で警報が鳴った。コイツをこれ以上テリトリーに入れるなって。だけど、理由を聞き出さなきゃいけないって声もしたんだ。
日比谷の言う通り、人気が無いとはいえ此処は校舎の一角で、いつ何時通りすがりの誰かに聞かれてしまうかわからない。完全に他の人間を遮断して話せる場所って事なら、ウチに連れてくのが一番良い。それはわかってても、迷った。でも結局、選択肢なんて無いんだよな。
俺は日比谷を初めてウチに連れて帰る事になったんだ。

そして案の定、恐れてた事は起きた。

リビングで話して、呆然としてる間にソファに押し倒されて。俺の制服のシャツを乱暴に剥ぎ取りながら、日比谷は笑いながら言った。

「やっぱり此処にホクロがある。」

それは右の乳首の少し上にあるホクロで、日比谷はそれに嬉しそうに唇をつけたよ。

「…やめ…やめて、日比谷…」

始まってしまうって怖くて、俺は日比谷の目を見ながら頭を振った。でも日比谷はやめてはくれずそのままホクロを舐めて、上目遣いで俺の反応を見てたよ。怯えるのを楽しんでるみたいな、そんな顔だった。

押し倒してくる前に日比谷は、ガキの俺が中年のオッサンのチンポを咥えてる動画を観せてきたんだ。多分、あの頃お客の誰かが携帯電話で撮ってたやつ。所々ブレてるし画像は粗めだけど、距離が近いから顔はハッキリわかる。しかも、日比谷が持っていたのはその動画だけじゃなかった。小さな画面の中には、ケツを犯されて人形みたいに揺さぶられてるあの頃の俺がいた。苦しくて喉を引き攣らせて気を失う所まで、延々と。

「安心しろよ。コレは俺しか持ってないし、流出もしてない。元の持ち主はもうこの世に居ないしな。」

俺の肩を抱きながらスマホを見せつけてきて、日比谷はくつくつ笑ってた。俺の顔色がどんどん悪くなってくのが楽しそう。

「ま、俺の部屋のPCにも保存してあるけど。」

終わった、と思った。元の持ち主がもうこの世に居ないって事は、俺のお客だった誰かが死んだって事か。そんでソイツの携帯を日比谷が持ってるって事?近しい人間だったんだろうか。家族の誰かなのか?
でも、そんな事はもう知ったって仕方ない。だって、今ソレを手にしてるのは日比谷なんだから。
流出なんか出来る訳ないよな。こんな違法なもの。お客は自分が観て愉しむだけの為に撮ったんだろう。まさか何年も経って誰かの手に渡るなんて思わずに。

「な。可愛いよな。何度もコレで抜いた。高校で初めてハルに会った時、すぐにわかった。だってハル、この頃と全然顔変わってないんだもん。」

「…そんな筈、ないだろ…。」

そんな筈、ないんだ。
お客の差し入れで生き延びて骸骨みたいに痩せこけてた頃と今とじゃ、今の方が断然肉もついて人間らしくなった筈だろ。顔だって、成長したから変わってる。
けれど、日比谷は鼻で嗤いながら言う。

「ほっそい体にちっさい顔に、でっかい目。ハル、お前さ。自分が思ってるより人の目惹いてるからな。前髪伸ばして隠してるつもりかもしんないけど、見てる奴は見てる。」

「そんな…、」

何度目かの『そんな筈は無い』は、日比谷に押し倒された衝撃で消えた。

「そんな事、あるんだよ。男を知ってる奴は大なり小なり男の目を意識するもんだろ?お前、わかり易かったよ。エロい目つきしてさ。」

「……。」

そんな、そんな事、ある筈が無いって何度も思うのに、もう口が動かなかった。そうなのかもと思い始めたんだ、何度もセックスされたからそうなっちゃったのかもしれない。自分では自覚症状無くそういう媚みたいなのが出てるのかもしれないって。
俺、どんどん血の気が引いてくばかりだった。メンタルを殴りつけてくる日比谷の言葉にダメージを受けて、抵抗する気力も奪われて。

「ハルが誘惑したんだ。その目で。」

そう言いながら近づいてくる日比谷の顔を避ける事も出来なくて、後は、さっき言った通り。日比谷は俺の制服を剥いて、好き放題に犯した。前からも後ろからも、口も。

その日を境に、俺は日比谷の恋人になった。と言えば聞こえが良いけど、要するにオンナにされたって事だ。
でも俺は、王様日比谷にはたくさんのセフレが居る事も知ってた。日比谷は俺を恋人に据えた後も彼女達を切らなかったから、俺は少しだけ望みを抱いてたんだ。
日比谷がすぐに俺に飽きてくれる事を。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

処理中です...