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しおりを挟む日比谷は、拒否する俺の唇をキスで塞いだ後で、また俺の心臓を止めるような事を口にした。
「知られたくないんだろ?子供の頃の事。」
その言葉で確信したよ。コイツ、知ってる。俺がガキの頃、親に売られてたのを知ってるんだ、って。
「……なん、で?」
日比谷に問いかけた俺の唇も声も震えた。いや何で知ってる?って思うじゃん。あの汚ったない密室で起きてた事をさ。
俺と同じ歳の日比谷が客だったなんて事は有り得ない。俺が覚えてる限り、一番若いお客でも多分、20代半ばくらいだったから、今ならもう30過ぎてるだろ。ロクに小学校だって行ってなかったし、友達らしい友達もいなかった。そして何より、あの頃俺と日比谷は学区が違った。
なら、何で、何処で。
少しの沈黙の後、日比谷は震えて俯いた俺の耳元に唇を寄せて、吐息みたいに言った。
「…じゃ、此処じゃなんだからハルんちで話そっか。」
「……俺んちで?」
ダメだって頭の中で警報が鳴った。コイツをこれ以上テリトリーに入れるなって。だけど、理由を聞き出さなきゃいけないって声もしたんだ。
日比谷の言う通り、人気が無いとはいえ此処は校舎の一角で、いつ何時通りすがりの誰かに聞かれてしまうかわからない。完全に他の人間を遮断して話せる場所って事なら、ウチに連れてくのが一番良い。それはわかってても、迷った。でも結局、選択肢なんて無いんだよな。
俺は日比谷を初めてウチに連れて帰る事になったんだ。
そして案の定、恐れてた事は起きた。
リビングで話して、呆然としてる間にソファに押し倒されて。俺の制服のシャツを乱暴に剥ぎ取りながら、日比谷は笑いながら言った。
「やっぱり此処にホクロがある。」
それは右の乳首の少し上にあるホクロで、日比谷はそれに嬉しそうに唇をつけたよ。
「…やめ…やめて、日比谷…」
始まってしまうって怖くて、俺は日比谷の目を見ながら頭を振った。でも日比谷はやめてはくれずそのままホクロを舐めて、上目遣いで俺の反応を見てたよ。怯えるのを楽しんでるみたいな、そんな顔だった。
押し倒してくる前に日比谷は、ガキの俺が中年のオッサンのチンポを咥えてる動画を観せてきたんだ。多分、あの頃お客の誰かが携帯電話で撮ってたやつ。所々ブレてるし画像は粗めだけど、距離が近いから顔はハッキリわかる。しかも、日比谷が持っていたのはその動画だけじゃなかった。小さな画面の中には、ケツを犯されて人形みたいに揺さぶられてるあの頃の俺がいた。苦しくて喉を引き攣らせて気を失う所まで、延々と。
「安心しろよ。コレは俺しか持ってないし、流出もしてない。元の持ち主はもうこの世に居ないしな。」
俺の肩を抱きながらスマホを見せつけてきて、日比谷はくつくつ笑ってた。俺の顔色がどんどん悪くなってくのが楽しそう。
「ま、俺の部屋のPCにも保存してあるけど。」
終わった、と思った。元の持ち主がもうこの世に居ないって事は、俺のお客だった誰かが死んだって事か。そんでソイツの携帯を日比谷が持ってるって事?近しい人間だったんだろうか。家族の誰かなのか?
でも、そんな事はもう知ったって仕方ない。だって、今ソレを手にしてるのは日比谷なんだから。
流出なんか出来る訳ないよな。こんな違法なもの。お客は自分が観て愉しむだけの為に撮ったんだろう。まさか何年も経って誰かの手に渡るなんて思わずに。
「な。可愛いよな。何度もコレで抜いた。高校で初めてハルに会った時、すぐにわかった。だってハル、この頃と全然顔変わってないんだもん。」
「…そんな筈、ないだろ…。」
そんな筈、ないんだ。
お客の差し入れで生き延びて骸骨みたいに痩せこけてた頃と今とじゃ、今の方が断然肉もついて人間らしくなった筈だろ。顔だって、成長したから変わってる。
けれど、日比谷は鼻で嗤いながら言う。
「ほっそい体にちっさい顔に、でっかい目。ハル、お前さ。自分が思ってるより人の目惹いてるからな。前髪伸ばして隠してるつもりかもしんないけど、見てる奴は見てる。」
「そんな…、」
何度目かの『そんな筈は無い』は、日比谷に押し倒された衝撃で消えた。
「そんな事、あるんだよ。男を知ってる奴は大なり小なり男の目を意識するもんだろ?お前、わかり易かったよ。エロい目つきしてさ。」
「……。」
そんな、そんな事、ある筈が無いって何度も思うのに、もう口が動かなかった。そうなのかもと思い始めたんだ、何度もセックスされたからそうなっちゃったのかもしれない。自分では自覚症状無くそういう媚みたいなのが出てるのかもしれないって。
俺、どんどん血の気が引いてくばかりだった。メンタルを殴りつけてくる日比谷の言葉にダメージを受けて、抵抗する気力も奪われて。
「ハルが誘惑したんだ。その目で。」
そう言いながら近づいてくる日比谷の顔を避ける事も出来なくて、後は、さっき言った通り。日比谷は俺の制服を剥いて、好き放題に犯した。前からも後ろからも、口も。
その日を境に、俺は日比谷の恋人になった。と言えば聞こえが良いけど、要するにオンナにされたって事だ。
でも俺は、王様日比谷にはたくさんのセフレが居る事も知ってた。日比谷は俺を恋人に据えた後も彼女達を切らなかったから、俺は少しだけ望みを抱いてたんだ。
日比谷がすぐに俺に飽きてくれる事を。
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