知らない内に番にされ婚約させられたにも関わらず、本日婚約破棄を言い渡されたが俺はそれを甘んじて受ける

Q矢(Q.➽)

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6 歳上の男が最高なんじゃない。俺の男が最高なんだ。(藤川side)

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「入籍するまでは、番の相手が俺だという事は、伏せて欲しい。」

洸さんは、それを特に強く希望した。

まあ、彼の立場を考えれば、理解は出来る。

洸さんがΩである事は一部の関係者以外には伏せられている事らしい。
その方が要らぬ波風が立たないからという、大学側の配慮だろう。
それなのに‪α‬の学生と番になったなんて事が知れれば、それが無駄になる。洸さんがΩだと言う事もバレてしまう。
多くの人間に接する人が Ωというバース性を晒す事は、少なくはない差別と危険が伴うのだ。
最悪、何かしらトラブルでも起これば、失職もありうる。例えΩが悪くはなくてもだ。
再就職するにしても、前職を辞めざるを得なかった経緯は聞かれるだろうし、それにより やはりトラブルメーカーになるかもしれないΩを採るのは憚られる…なんて偏見を持たれて敬遠されるかもしれない。
それに、未だ学生で親に扶養されている俺が洸さんを扶養ってのもどーよ、って話だし、万が一そうなると、俺の家…両親を頼らざるを得なくなる。
経済事情だけで言えば、困る訳ではない。
俺の実家は会社をやっててそれなりに恵まれてるし、洸さん1人扶養が増えたってそんなに苦ではない。
ウチの両親も顔合わせ以来 洸さんを気に入ってくれてるし、事情によっては仕送りを増やしてくれと言っても文句は言われないだろうが…、洸さん本人が嫌がりそうだ。
 第一、俺がかっこ悪い。自分の番ひとり支えられないなんて頗るかっこ悪い。はやく大人になって、親じゃなく自分で経済力を持ちたい。

うん、やはり最悪の事態を想定するならば、番の相手が洸さんである事は死んでも隠し通さねば…。


色々2人で相談した結果、ごく親しい関係者にならば 番が出来た事を言うのは構わないが、誰が相手かは伏せるという事、卒業までは子供は作らない事、卒業して入籍するまでは一緒には住まない事、セックスに関しては主に洸さんの体調を優先する事、とりま俺は卒業までしっかりがんばれ…  

みたいな取り決めをした。

表面上、今でも大学では俺と洸さんは教授と教え子でしかない。
必要な会話を交わす程度、すれ違いざまに会釈する程度。

誰が見ているかわからない以上、仕方のない事とはいえ、少し寂しいではある。

でも仕方ないな
洸さんを守る為なんだから。







番になってそろそろ5ヶ月。、俺と洸さんのお付き合いは順調だ。
とはいえ、俺はともかく、ほ…っとんど顔と名前だけ(うろ覚え)しか知らない、単なる一学生でしか無かった俺と、ある日突然、前触れも無く番になってしまった洸さんは、内心物凄いショックだっただろう。
にも関わらず、そんな事はおくびにもださず馴染む努力をしてくれている彼は、本当に大人だ。
そりゃそうだよな…。洸さんは、元々俺が洸さんを好きだったのを知らない。
俺も酒の勢いで流されただけの被害者だと思ってるんだろうから…。


最近は週2で俺が洸さんの家に泊まりに通う、というペースで落ち着いてきた。

これは俺がかなり譲歩した。
あまりにも突然、生活の中に俺という異物が入り込んだ訳だ。
彼のような繊細で几帳面そうな人は、日々のルーティンが乱されると ストレスになるのでは、とは思った。
しかし、俺の方も愛する洸さんに触れられないとストレスが溜まる訳で…。
話し合って妥協して貰った結果だ。
だって俺はまだ若干20歳。
元気と精力が有り余ってるのだ。

それでも洸さんの体が最優先。色々と負担にならないように、週2。
内訳は今の所、週中で控えめに1回、週末は抱き潰す、みたいなパターンである。

俺って優しい‪α‬。






「へえ…上手くいってんのか。歳上の男Ωって、そんなに良いもんなんだな。」
「言い方。」

向かいの席に不機嫌そうにふんぞり返って座っている小柄な女顔の男は、榊。
相談があると俺に呼び出され、カフェで惚気を聞かされている暇人である。
俺の幼馴染で腐れ縁、小中同じで高校は別れたが、大学で再会した。
因みにβ。付き合って3年の香織ちゃんというカノジョと同棲中。クソ羨ましい。俺も早く洸さんと住みたい。

「歳上の男Ωが、じゃなくて俺の彼氏が最高なんだっつの。」

正直に言うわ。
洸さんの講義中、大体勃起してる。
あんな澄ました顔をしてる可愛い人を、俺だけが好きにできるなんて幸せ過ぎ。


「はいはい。そりゃ良かったな。」

呆れたようにズズっとストローを鳴らし残り少なそうなドリンクを飲む榊。行儀悪いぞ。
榊にも念の為、相手が洸さんだとは言ってない。
察しの良い奴なので、訳ありだと踏んだらしく深くは聞いてこなかったのはありがたい。

「つか、真面目な大人の人、っつーのはわかったけどさ。卒業して入籍までデートも出来ねえの?つまんなくね?」
「それな…。それはマジでそれな。」

そうなんだよなー。
クリスマスもハロウィンも年末年始もバレンタインもゴールデンウィークも…。
イベントは卒業して社会人になってから沢山行こう。温泉とかも行きたいな~。

それまではお家デートを楽しもう。

あれだけ可能性が無いと思ってた人と番になれただけでも幸せなんだから。

正直、今でも罪悪感はある。 
意識の無い相手を、勝手に噛んだ事。
合意も得ずに抱いた事。
大人の責任感に、つけ込んだ事。
俺に何の感情も持っていなかった洸さんを、無理矢理縛りつけた事。

洸さんに打ち明ける気は無い。
多分、俺はこれらを墓の中まで持っていく。

その代わり一生幸せにすると誓うから、許して欲しいと、洸さんの寝顔を見る度、心の中で謝っている。

だからこそ、俺も努力をしているのだ。
洸さんを支えられる大人の男になる為に。

洸さんの食生活と健康を管理できるように内緒で料理教室にも通い出したし、忙しい洸さんの部屋をいつも綺麗に保つ為に清掃の技も学んで来たし、Ωの体の造りを理解して更なる快感を与えるべく勉強中だし、結構健気に尽くしてると我ながら思うぞ…。

それもこれも、俺を選んでもらった事を、後悔させない為。


とまあ、そんなこんなを黙って聞いてくれていた榊。
 
「お前がなあ…。人を好きになる感情なんか無いと噂されてた、お前がなあ…。同じ奴は2度と抱かないとか厨二みたいな事言ってたあのお前がなあ。」

と、感慨深そうに呟く。
え、俺そんな風に思われてたの?お前に?皆に?

軽くショックなんだが?


何とも言えない微妙な気持ちで榊を見ると、奴は何故か数回頷き、若干目を潤ませていた。親戚のおばちゃんか。

「でもま、いい変化だよな。お前、よっぽど番さんに惚れてんな。」
「…当たり前だろ。」

じゃなきゃこんなに必死になんかならない。


「…で、そんなお前の努力は番さんには伝わってるん?」
「え……あー…… 」

それは…どうかな?

「そろそろ向こうも惚れてくれてんじゃね?
お前みたいな‪α‬にそこまで尽くされて絆されない人間がいるとも思えねーしよ。」
「……。」

そう、見えるのか、傍からは。


「…なあ、俺ってお前から見ても、そう見える?結構良い男?」
「…今更変な事聞くなよ。嫌味か。昔からお前は俺の知ってる中じゃ最高の‪α‬だよ。」
「…そっか…。ありがとう。」

(知ってる中で、最高の“‪α‬”か…。)

学生(ガキ)の中では、最高。
でも、半人前…なんだよな、男としては。

ここまで何だかんだ頑張ってるアピールしてたけど、実は俺、洸さんの事になると途端に自信が無くなる。

番になってから、もう何度も体を重ねた。
段々俺の愛撫にも慣れて、時には自分から求めてくれるようにもなってきてる。
最近 乳首でイケるようになったからか、昨夜なんか、 恥ずかしそうに

「舐めてほしい…」

って部屋着のTシャツを両手で捲り上げておねだりしてくれた。
破壊的にかわいかった。
一瞬で勃って、鼻血出た。(クソダサい。)
洸さんの体質的にこれまではあまりヒートが来てなかったらしいけど、番になったんだし、お互いの体に馴染んでホルモンバランスが安定してきたら意外と定期的に来るようになるんじゃないかな…。ヒートの洸さんかぁ…。
思わずニヤけてしまう。楽しみ過ぎるんだが。

笑顔だって、2人きりの時にはよく見せてくれるようになったし、よく喋ってくれるようになった。
気を許してくれてるな、と感じる事も増えた。
でも。
気は使ってくれているし、嫌われてはいないだろうが、番として好かれているのかはいまいち自信が無い。


あの日から、5ヶ月。少しでも 俺に気持ちは傾いてきているのかな。責任感や義務だけじゃなくて、そろそろ何か別の感情が芽生えてても良いんじゃない?
セックスだけじゃない俺の愛、届いてる?



(知りたい、あの人の心を。)


何とかして。

少しでも洸さんの中に俺に対する気持ちがある事さえわかれば、もっと安心出来るのに…。


そんな事を考えた俺は、救いようの無い馬鹿だ。


「榊。ちょっと協力して欲しい事がある。」




本当に、大馬鹿者だ。


















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