12 / 14
疑惑の男
しおりを挟む
「遅かったじゃん…」
玄関を開けた瞬間、飛んでくる声。
仁王立ちの颯である。
(あちゃー…)
怒っている。マジで仁王ジャン…顔。
「今日ってバイトの日じゃなかったよな。」
…ソウデスネ…。
「バイトでもないのにLINEも返ってこないし電話も取らないし、一体どこで何やってたのか教えてくれる?」
一応顔は笑っているが、声には微妙な怒気が含まれている。
「…ごめん…。」
「…謝るような事してきたんだ?」
颯の目が細く眇められる。ヒェ…怖…。
顔が整ってるだけに、怖…。
「いや、そういう訳じゃなくて…連絡に気づかなかった事に…。」
これまで俺が連絡無しに遅くなる事や、連絡自体が取れなくなるって事はまず無かった。いつもなら制服のスラックスのポケットに入れてる事が多いスマホを、今日は話の邪魔になるかなあとリュックに入れっぱで、話し込んでいたらチェックするのを怠ってしまった。
実際には、連絡しなきゃってタイミングは数回あったんだけど、その都度会話の流れで霧散してしまい…。
靴を脱ぎ、框を上がりながらすれ違いざまに袖を引いてもう一度謝る。
「ごめんな。怒んないで。ちゃんと話すから。」
「…しょうがないな…。」
つり上がってた眉が緩んだのを見て少しホッとする。
早く帰ってくると思って晩御飯をあっためたりして用意してくれていたのに一向に帰ってくる気配は無いし連絡も取れなければ、そりゃ普通に心配するよな。
事故や事件に巻き込まれたのか、とか。
しかも、あの後車で送って貰いがてら、話し込んでしまって結局バイトの日よりも遅くなって申し訳なかったと、綾門さんにはすごい謝られた。食事がてらどこか店に入れば良かったよね、とか言われたが、御飯は絶対弟と摂るのが我が家の決まりなんでそれはどっちにしろ無理です…。
「心配した…。」
こつん、と軽く肩に額を埋めてくる颯。
「…だよな。ごめん。」
相変わらず両親もろくに帰って来ないこの家で、俺達は2人きりなのだ。
「え、何それ。うっさんくさ。」
現在、時刻は23時20分。
バイトの日ですら22時半には帰り着いてるっつーのに。
すっかり遅くなってしまった晩御飯を一緒に食べながら 綾門さんに旧いお邸に連れていかれてた経緯を話すと、颯に眉を顰められてしまった。
…大根の味噌汁、美味いね…。
ウチのキーパーさん、マジで優秀なんじゃね?
「そっかなあ?旧いけど良いお邸だったよ。庭が特に良い。」
「そういう事を言ってんじゃねんだわ。」
じゃあどういう事よ。
俺の怪訝な表情を見て取った颯が、ハア…と溜息を吐いた。
「だってさ。つまりそれってまるでさー、左近の為に店出すみてーじゃん。」
「いやそんな訳無いだろ…。」
綾門さんは純粋に、静かな癒し空間のプロデュースをだな…。
と続けようとしたが、それより早く颯が捲し立てた。
「だってどう考えても不自然だろ。
え、従業員1人?客来なくても良い?売り上げ無くても給料出す?店出すまでに補修費も改装費も、備品とか機械とかの費用もかなりかかるのに?
それってさあ、」
一呼吸。
「正直、ソイツが左近を囲おうとしてるようにしか見えねーんだけど?」
「……囲うって…(笑)。」
それは、極端では?
「え、マジでなんなのソイツ…。
会って間もないんだよな?いくら何でも多少気に入った程度で普通そんな事考える?絶対怪しいでしょ…。」
「……ダヨネ。」
聞いてくれないし、綾門さん、ボロカス言われとる…。
まあ、そうだよなぁ。
いくら金持ちの道楽とは言え、よりによって出会って間もない未成年の男に持ち掛ける話じゃない。
つーか、素朴な疑問なんだけど、実際ほんとに殆ど利益上がんなかったらやっぱ不味くない?
「大体、何で急に不利益前提でそんな店やろうとかって考えになる訳?
百歩譲って、元々珈琲好きで詳しくて、いつか自分の店持ちたかった、って事ならわからなくもないけどさ。違うんだよね?」
気に入らないなあ。
と、颯は眉を顰めっぱなしだ。
(でも…)
さっきお邸で感じた違和感の正体が、なんとなくわかった気がする。
“囲おうとしてる”
って言葉が颯の口から出た時、ドキッとした。
颯には前世関連の話なんかした事は無い。
なのに、そういった事情を全く知らない状態の人が聞いても、この話は違和感だらけって事なんだな。
でもなあ…。
もし、俺が今でも女性だったとしたら、前世での関係上、囲おうとしてる、ってのもありうるか…、危険かな、って考えるかもしれないけど、男だからな…。
どっからどう見ても、男だよ俺…。
って事を、颯に言ったら、
「馬鹿だね、左近。
男が好きな男だってたくさんいるだろ。」
と、言われて、ちょっと血の気が引く。
………確かにな?
「同性の恋人や愛人囲いたい男だっているだろ。」
「…でも俺、別に綾門さんの恋人でも愛人でもないし…。」
婚約者だったのはだいぶ前世の話なのでこれは嘘じゃない。
「これからそうしてやろうって事かもな。」
「………。」
颯は喋りながらイライラしてきたらしく、
クソッ…と悪態を吐きながらご飯を掻き込んだ。
我が弟ながら、たまにガラが悪い。
兄ちゃん、そんな風に育てたっけかな…?
「なんかソイツ、めっちゃ怪しい。
信用すんなよ。」
綾門さんの名誉の為に反論してあげたかったが、こうなった時の颯には火に油を注ぐ事になりかねないので、やめておく。
綾門さんごめんなさい。
ウチの弟は心配性なだけで根は良い子なんです。
「クソっ、ムカつく。今後の為に顔を拝んどくべきだな…。」
…良い子なんです…。
(※颯は左近の強火過激派。)
玄関を開けた瞬間、飛んでくる声。
仁王立ちの颯である。
(あちゃー…)
怒っている。マジで仁王ジャン…顔。
「今日ってバイトの日じゃなかったよな。」
…ソウデスネ…。
「バイトでもないのにLINEも返ってこないし電話も取らないし、一体どこで何やってたのか教えてくれる?」
一応顔は笑っているが、声には微妙な怒気が含まれている。
「…ごめん…。」
「…謝るような事してきたんだ?」
颯の目が細く眇められる。ヒェ…怖…。
顔が整ってるだけに、怖…。
「いや、そういう訳じゃなくて…連絡に気づかなかった事に…。」
これまで俺が連絡無しに遅くなる事や、連絡自体が取れなくなるって事はまず無かった。いつもなら制服のスラックスのポケットに入れてる事が多いスマホを、今日は話の邪魔になるかなあとリュックに入れっぱで、話し込んでいたらチェックするのを怠ってしまった。
実際には、連絡しなきゃってタイミングは数回あったんだけど、その都度会話の流れで霧散してしまい…。
靴を脱ぎ、框を上がりながらすれ違いざまに袖を引いてもう一度謝る。
「ごめんな。怒んないで。ちゃんと話すから。」
「…しょうがないな…。」
つり上がってた眉が緩んだのを見て少しホッとする。
早く帰ってくると思って晩御飯をあっためたりして用意してくれていたのに一向に帰ってくる気配は無いし連絡も取れなければ、そりゃ普通に心配するよな。
事故や事件に巻き込まれたのか、とか。
しかも、あの後車で送って貰いがてら、話し込んでしまって結局バイトの日よりも遅くなって申し訳なかったと、綾門さんにはすごい謝られた。食事がてらどこか店に入れば良かったよね、とか言われたが、御飯は絶対弟と摂るのが我が家の決まりなんでそれはどっちにしろ無理です…。
「心配した…。」
こつん、と軽く肩に額を埋めてくる颯。
「…だよな。ごめん。」
相変わらず両親もろくに帰って来ないこの家で、俺達は2人きりなのだ。
「え、何それ。うっさんくさ。」
現在、時刻は23時20分。
バイトの日ですら22時半には帰り着いてるっつーのに。
すっかり遅くなってしまった晩御飯を一緒に食べながら 綾門さんに旧いお邸に連れていかれてた経緯を話すと、颯に眉を顰められてしまった。
…大根の味噌汁、美味いね…。
ウチのキーパーさん、マジで優秀なんじゃね?
「そっかなあ?旧いけど良いお邸だったよ。庭が特に良い。」
「そういう事を言ってんじゃねんだわ。」
じゃあどういう事よ。
俺の怪訝な表情を見て取った颯が、ハア…と溜息を吐いた。
「だってさ。つまりそれってまるでさー、左近の為に店出すみてーじゃん。」
「いやそんな訳無いだろ…。」
綾門さんは純粋に、静かな癒し空間のプロデュースをだな…。
と続けようとしたが、それより早く颯が捲し立てた。
「だってどう考えても不自然だろ。
え、従業員1人?客来なくても良い?売り上げ無くても給料出す?店出すまでに補修費も改装費も、備品とか機械とかの費用もかなりかかるのに?
それってさあ、」
一呼吸。
「正直、ソイツが左近を囲おうとしてるようにしか見えねーんだけど?」
「……囲うって…(笑)。」
それは、極端では?
「え、マジでなんなのソイツ…。
会って間もないんだよな?いくら何でも多少気に入った程度で普通そんな事考える?絶対怪しいでしょ…。」
「……ダヨネ。」
聞いてくれないし、綾門さん、ボロカス言われとる…。
まあ、そうだよなぁ。
いくら金持ちの道楽とは言え、よりによって出会って間もない未成年の男に持ち掛ける話じゃない。
つーか、素朴な疑問なんだけど、実際ほんとに殆ど利益上がんなかったらやっぱ不味くない?
「大体、何で急に不利益前提でそんな店やろうとかって考えになる訳?
百歩譲って、元々珈琲好きで詳しくて、いつか自分の店持ちたかった、って事ならわからなくもないけどさ。違うんだよね?」
気に入らないなあ。
と、颯は眉を顰めっぱなしだ。
(でも…)
さっきお邸で感じた違和感の正体が、なんとなくわかった気がする。
“囲おうとしてる”
って言葉が颯の口から出た時、ドキッとした。
颯には前世関連の話なんかした事は無い。
なのに、そういった事情を全く知らない状態の人が聞いても、この話は違和感だらけって事なんだな。
でもなあ…。
もし、俺が今でも女性だったとしたら、前世での関係上、囲おうとしてる、ってのもありうるか…、危険かな、って考えるかもしれないけど、男だからな…。
どっからどう見ても、男だよ俺…。
って事を、颯に言ったら、
「馬鹿だね、左近。
男が好きな男だってたくさんいるだろ。」
と、言われて、ちょっと血の気が引く。
………確かにな?
「同性の恋人や愛人囲いたい男だっているだろ。」
「…でも俺、別に綾門さんの恋人でも愛人でもないし…。」
婚約者だったのはだいぶ前世の話なのでこれは嘘じゃない。
「これからそうしてやろうって事かもな。」
「………。」
颯は喋りながらイライラしてきたらしく、
クソッ…と悪態を吐きながらご飯を掻き込んだ。
我が弟ながら、たまにガラが悪い。
兄ちゃん、そんな風に育てたっけかな…?
「なんかソイツ、めっちゃ怪しい。
信用すんなよ。」
綾門さんの名誉の為に反論してあげたかったが、こうなった時の颯には火に油を注ぐ事になりかねないので、やめておく。
綾門さんごめんなさい。
ウチの弟は心配性なだけで根は良い子なんです。
「クソっ、ムカつく。今後の為に顔を拝んどくべきだな…。」
…良い子なんです…。
(※颯は左近の強火過激派。)
19
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる
桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」
首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。
レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。
ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。
逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。
マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。
そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。
近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる