17歳、男子高校生、聖女経験あり〼。

Q矢(Q.➽)

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疑惑の男

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「遅かったじゃん…」


玄関を開けた瞬間、飛んでくる声。

仁王立ちの颯である。

(あちゃー…)

怒っている。マジで仁王ジャン…顔。


「今日ってバイトの日じゃなかったよな。」

…ソウデスネ…。

「バイトでもないのにLINEも返ってこないし電話も取らないし、一体どこで何やってたのか教えてくれる?」

一応顔は笑っているが、声には微妙な怒気が含まれている。

「…ごめん…。」
「…謝るような事してきたんだ?」

颯の目が細く眇められる。ヒェ…怖…。
顔が整ってるだけに、怖…。

「いや、そういう訳じゃなくて…連絡に気づかなかった事に…。」

これまで俺が連絡無しに遅くなる事や、連絡自体が取れなくなるって事はまず無かった。いつもなら制服のスラックスのポケットに入れてる事が多いスマホを、今日は話の邪魔になるかなあとリュックに入れっぱで、話し込んでいたらチェックするのを怠ってしまった。
実際には、連絡しなきゃってタイミングは数回あったんだけど、その都度会話の流れで霧散してしまい…。

靴を脱ぎ、框を上がりながらすれ違いざまに袖を引いてもう一度謝る。

「ごめんな。怒んないで。ちゃんと話すから。」
「…しょうがないな…。」

つり上がってた眉が緩んだのを見て少しホッとする。
早く帰ってくると思って晩御飯をあっためたりして用意してくれていたのに一向に帰ってくる気配は無いし連絡も取れなければ、そりゃ普通に心配するよな。
事故や事件に巻き込まれたのか、とか。
しかも、あの後車で送って貰いがてら、話し込んでしまって結局バイトの日よりも遅くなって申し訳なかったと、綾門さんにはすごい謝られた。食事がてらどこか店に入れば良かったよね、とか言われたが、御飯は絶対弟と摂るのが我が家の決まりなんでそれはどっちにしろ無理です…。


「心配した…。」

こつん、と軽く肩に額を埋めてくる颯。

「…だよな。ごめん。」


相変わらず両親もろくに帰って来ないこの家で、俺達は2人きりなのだ。





「え、何それ。うっさんくさ。」

現在、時刻は23時20分。
バイトの日ですら22時半には帰り着いてるっつーのに。
すっかり遅くなってしまった晩御飯を一緒に食べながら 綾門さんに旧いお邸に連れていかれてた経緯を話すと、颯に眉を顰められてしまった。
…大根の味噌汁、美味いね…。  
ウチのキーパーさん、マジで優秀なんじゃね?


「そっかなあ?旧いけど良いお邸だったよ。庭が特に良い。」
「そういう事を言ってんじゃねんだわ。」

じゃあどういう事よ。

俺の怪訝な表情を見て取った颯が、ハア…と溜息を吐いた。

「だってさ。つまりそれってまるでさー、左近の為に店出すみてーじゃん。」
「いやそんな訳無いだろ…。」

綾門さんは純粋に、静かな癒し空間のプロデュースをだな…。
と続けようとしたが、それより早く颯が捲し立てた。

「だってどう考えても不自然だろ。
え、従業員1人?客来なくても良い?売り上げ無くても給料出す?店出すまでに補修費も改装費も、備品とか機械とかの費用もかなりかかるのに?
それってさあ、」

一呼吸。

「正直、ソイツが左近を囲おうとしてるようにしか見えねーんだけど?」
「……囲うって…(笑)。」
 
それは、極端では? 


「え、マジでなんなのソイツ…。
会って間もないんだよな?いくら何でも多少気に入った程度で普通そんな事考える?絶対怪しいでしょ…。」
「……ダヨネ。」

聞いてくれないし、綾門さん、ボロカス言われとる…。

まあ、そうだよなぁ。
いくら金持ちの道楽とは言え、よりによって出会って間もない未成年の男に持ち掛ける話じゃない。
つーか、素朴な疑問なんだけど、実際ほんとに殆ど利益上がんなかったらやっぱ不味くない?

「大体、何で急に不利益前提でそんな店やろうとかって考えになる訳?
百歩譲って、元々珈琲好きで詳しくて、いつか自分の店持ちたかった、って事ならわからなくもないけどさ。違うんだよね?」

気に入らないなあ。

と、颯は眉を顰めっぱなしだ。

(でも…)

さっきお邸で感じた違和感の正体が、なんとなくわかった気がする。

“囲おうとしてる”

って言葉が颯の口から出た時、ドキッとした。

颯には前世関連の話なんかした事は無い。
なのに、そういった事情を全く知らない状態の人が聞いても、この話は違和感だらけって事なんだな。
でもなあ…。
もし、俺が今でも女性だったとしたら、前世での関係上、囲おうとしてる、ってのもありうるか…、危険かな、って考えるかもしれないけど、男だからな…。
どっからどう見ても、男だよ俺…。

って事を、颯に言ったら、

「馬鹿だね、左近。
男が好きな男だってたくさんいるだろ。」

と、言われて、ちょっと血の気が引く。

………確かにな?

「同性の恋人や愛人囲いたい男だっているだろ。」
「…でも俺、別に綾門さんの恋人でも愛人でもないし…。」

婚約者だったのはだいぶ前世の話なのでこれは嘘じゃない。


「これからそうしてやろうって事かもな。」
「………。」

颯は喋りながらイライラしてきたらしく、
クソッ…と悪態を吐きながらご飯を掻き込んだ。
我が弟ながら、たまにガラが悪い。
兄ちゃん、そんな風に育てたっけかな…?

「なんかソイツ、めっちゃ怪しい。
信用すんなよ。」

綾門さんの名誉の為に反論してあげたかったが、こうなった時の颯には火に油を注ぐ事になりかねないので、やめておく。
綾門さんごめんなさい。
ウチの弟は心配性なだけで根は良い子なんです。

「クソっ、ムカつく。今後の為に顔を拝んどくべきだな…。」


…良い子なんです…。







(※颯は左近の強火過激派。)
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