17歳、男子高校生、聖女経験あり〼。

Q矢(Q.➽)

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あなたのそばに (颯)

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(あ、まただ…)



深く落ちていく、深く、深く…。


やっと地に足が着くが、そこは地とも言えない汚泥のような場所。
そしてそこに落ち切れば、歩けるようにはなる。ただ、それは自分の意思ではないけれど。

そしてその歩みはすごく遅い。
スローモーションで歩いてるみたい。

腕も足も重い、頭も。

周囲は薄暗く、何も見えない。

物音ひとつ聞こえない。


(いつも思うけど、ここって何なんだろ?夢…だよな…。深層心理?)

夢を見ている自覚がある夢を、明晰夢と言うらしい。
そしてそれはある程度は自分でコントロールできたりする、と何かの本で読んだ。

でも、小さい頃からよく見るこの夢は、自覚はあるのに全然思い通りになった試しがない。

いっつも落ちてきた先で、同じ景色(と言えるのか、これは?)の中で、延々と歩き続けるだけ。
疲れて立ち止まりたくても止まれない。
誰かが出てきた事もない。
アラームが鳴ってやっと解放される。

目覚めたら目覚めたで、睡眠をとった後だというのに、既に疲労感で直ぐには動けない。


そんな厄介な夢。

(朝練無理だなあ。授業は…体育あったっけ。)


体調に影響するのが予めわかっているので、予定は立て易いと言えば立て易い。

いつものように延々と歩き続けながらそんな事を考えて、あとどれくらいで起きられるのか考える
いつもそうだ。
起床まで気の遠くなる行進だ。


(罰ゲームみたいだ…。)


ところが今日は様子が違っていた。


遠くの方に何か明かりが見える。


(…え?何あれ…。)


こんな事は今迄無かった。

急いで確かめたいが、スピードアップなんかできる訳もなく。

延々と、延々と。

その甲斐あって、近づいたその明かりは、その中に何かが蠢いているように見える。

目を凝らすと、女の子が見えた。
黒に近い茶色の髪に、深い青…紫?の…大きな瞳…、派手なドレス。 だがその裾は破れ、汚れている。
背後は煌びやかな装飾の柱や…それが火に巻かれ、燃え上がり…。

屋敷?城?

たくさんの人間が折り重なり倒れている。

そこかしこに火が回り、それでも彼女はそこから動かない。



にげろ!焼け死ぬぞ!


叫んだ筈の声は声にならない。

とことん思い通りにならない夢だ。

夢だからとわかっていても、目の前で人が死ぬのを見るのは嫌なものだろ?

だから、叫ぼうと思ったのに。


見ている…いや、見せられている事しかできない。

何なんだ、これは。
何でこんなもの見せられてんだろ…。

どうせ夢だから、まあいっか。

仕方ない。

相変わらずそこにはゆっくり歩き続けていたし、過ぎていくものかと思っていたら、何と足が止まった。

え、本格的にこれ見ろって事か。


なんて悪趣味な…。


仕方ないから見続けなければならない。


嫌だな…
人が焼け死ぬのを、見てなきゃなんないとか。

目も逸らせやしないし、閉じる事も出来やしないし。


只ぼんやりと、燃えていく場面を眺める覚悟をする。


…と。  

彼女が此方を見た。目が合った。

ヒュッ、と喉が鳴る。

怖。



彼女が口を開いた。



「あなたは、わたしよ」


「おぼえておくのよ。わたしのつみを。」

「あのひとに、こんどこそ」

「あのひとを、こんどこそ」



距離があるのに妙に明瞭な声。
耳というより、頭に直接響いてくるような。

目が合った途端、すごい話しかけてくるじゃん?

とビビった瞬間、急激に何かが脳に流れ込んで来た。


(…あ…!)
 
頭が痛い。気持ち悪い、苦しい

悶えたいのにそれも出来ない。
死ぬほど頭が痛いのに、ずっと彼女と目が合ったままだ。

いよいよ彼女のドレスや髪に火がついた。
焼け落ちてくる梁の下敷きになり…。

「こんどは、ぜったいに、」

顔半分が燃えてどろどろになりながら彼女が微笑んだ。


「し…あわ…せ、に…」


その瞬間、理解した。
 


(…あ、あれ、俺だわ…)



彼女は消し炭になり、俺は知らない記憶を脳に叩き込まれた。

いや、思い出したと言う方が良いのか…。




そしてその朝、魘されていた俺を起こしてくれた左近の顔を見て、俺は全てを悟った。



「ニィ……。」
「…大丈夫?」


夢の中の彼女は俺だった。

彼女は俺に、荒療治で思い出させた。
俺が、何時までもダラダラ周回してるばっかりだったから。
自分の最期を見せてまで。



(俺は、この為に…)



聖女アリアナの魂を、追いかけて。


死後の、無限とも言える孤独な地獄を耐え抜いて、今度こそ、あの美しい魂のそばに 生まれる為に。

あの清らかな人を、手に入れる為に。



(左近……)



「魘されてたぞ。…またあの嫌な夢、見た?」

冷や汗をかいている俺の顔を心配そうに見て、自分のシャツの裾で拭ってくれる。
兄は子供の頃から、俺がこの夢に苦しんでいる事を知っている。
抱きしめて背中を撫でてくれるので、心細い子供を装って抱きしめ返した。

兄は優しい匂いがする。



「…ニィ…すき…」
「ふはっ   甘ったれだな。…俺もだよ。」   


トントンと赤ん坊にするように軽く背を叩いてくれる。

その肩に顔を埋めて、存在に安心する。


(やっとつかまえたんだ…。もう二度と、離さない。)



そうだ。
 
俺はこの人に会うために、生まれてきたんだ。




前世で髪の毛1本触れられなかったあなたの全てを、今度こそ手に入れる為に。



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