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第三章
202話目
しおりを挟む部屋に戻りオリヴィア様と私各々お風呂に入り、二人で窓辺のソファーで夜景を見ながらくつろぐ。
「今日はありがとう、とても楽しい一時でした。 サフィリア様も満足されたみたいでしたよ」
「それは良かったです。 オリヴィア様も色々手助けしていただきありがとうございました」
「いえいえ、今回の私の役目を果たしただけですもの」
そう言って微笑むオリヴィア様。
「そう言えば、瑠璃さんからアルコール用のポーションを頂いたのですが、オリヴィア様も飲まれますか?」
「私ですか? そうですね……、今回あまり飲まなかったので酔っていないんです。 ですから桜さんに差し上げますよ、かなり嗜まれていたでしょう? 気分が悪くなる前にお飲みになって」
アイテムボックスから取り出してオリヴィア様の前に差し出したら、その手を軽く抑えられてしまった。
こちらの様子も把握されてたんですね。 飛んだ醜態を晒してしまった。
「私はさっき強制的に長谷川さんに瓶を突っ込まれて飲ませられたので大丈夫ですよ。 効能凄いですね、一瞬で酔いが醒めました」
恥ずかしさを悟られないように話題を変える。
オリヴィア様は私のそんな機微も察しているのか、クスクス笑って話題に乗ってくれた。
「あらそうなの? 初めて飲んだのかしら?」
「はい、初めて飲みました。 なので正直言うとちょっと物足りないです」
「あらまぁ」
オリヴィア様がからかいを含んだ声でそう言う。
「オリヴィア様、夜酒お付き合いいただけませんか?」
「私でいいのかしら?」
「はい、オリヴィア様に飲んでもらいたいお酒があるんです」
「そうなの? 楽しみね、ではご相伴にあずかろうかしら」
オリヴィア様から許可を得たので、この前あちらの果物で作ったフルーツビールをいくつかアイテムボックスから取り出した。
フルーツビールの瓶には使われた果物をスマホで撮影した写真が使われている。
それをパソコンに取り込み加工し、専用のシートで印刷しシールにした。
果物は酸味の強い山ブドウのような形のルルスの実、柑橘系のような味のレモナの実、青いラズベリーのようなサマーベリーの三種類。
他のも試したかったが味の調整に時間がかかって、時間的に三種類が限界だった。
本当はシュワシュワしているレガージュの実も作りたかったんだけど、最初に試したら、二次発酵でなんでか知らないが泡だらけになってしまった。
原因特定に時間がかかりそうだから見送ったんだよね。
そう思いながらオリヴィア様にフルーツビールの瓶を手渡す。
「これは……私たちの世界の果物? この果物のビールでしょうか?」
「そうなんです。 ……と言いましても、酵母はこっちの世界のなんですけどね。 私まだあっちの世界のエール作り見たことないので」
「それでも……それでもすごいわ……飲んでみてもいいかしら?」
「はい、グラスを出しますね。 おつまみも何か出しますか? ご希望はありますか?」
「ありがとう。 おつまみまで? 私は何でもいいわ、桜さんの感性に任せます」
残りのビール瓶をソファーに一旦置き、ソファー横のテーブルを移動する。
その上に二人分のグラスを出し、ビール瓶も置きなおし、おつまみを考える。
夜ごはん食べたばかりだし、夜も遅いし、胃に負担のかからないよう重い物じゃない方が良いよね。
フルーツビールの味は、ビールよりもサワーとかに近い風味だったからそれに合うようなものかな?
そう考えて丸い箱に入っているチーズを取り出した。
あ、折角だからカットしてある果物も出そうかな? 同じ果物なら合うよね。
小皿も出し、その上にカットしたフルーツを取り分けていく。
それからナッツ類とかでいいかな?
器を取り出し、小分けの袋に入ったナッツを袋のまま入れる。
……塩気も欲しいかも。 生ハムもだしてみよう。
こちらの世界のパックに入った生ハムを取り出し蓋を開ける。
こんなものかな。
そう思い準備が出来たとオリヴィア様を見た。
ポカーンと口を空けていた。
「オリヴィア様? いかがなされましたか?」
「色々な物が出てくるのですね、少し驚いてしまいました」
そう言い、手で口を覆い恥ずかしそうにするオリヴィア様。
「色々入ってますよ。 いついかなる時でも大人数で飲み会が開けます」
こっちの世界に宿泊するときは魔法がつかえない。 なので予め色々な食べ物を取り寄せてアイテムボックスに常備してある。
特に廃村に行ってからは毎日宿泊だし人数も多い。 皆の要望に応えられるようあらかた大容量で用意してる。
まあ……でも、主にお酒やおつまみ系が多いけど。
だから二人での飲み会なんて余裕余裕。
「あらあら、それは頼もしいですね」
そしてオリヴィア様にグラスを渡す。
「オリヴィア様、どのビールになさいますか?」
「そうね……サマーベリ―にしようかしら?」
「かしこまりました」
アイテムボックスから栓抜きを取り出し瓶の蓋を取る。
ポンッという小気味の良い音が鳴る。
手作りビールキットの瓶は茶色く色づいている。
「オリヴィア様、グラスをこちらに傾けてください」
「はい」
オリヴィア様にグラスを差し出されそこにサマーベリーのビールを注いだ。
「――青い」
フルーツビールを作る際、実を潰して入れた。
サマーベリ―はラズベリーを青くしたような形なので、皮は剥けずにそのまま使用した。
なのでサマーベリーの青がビールにしたらより鮮やかになった。
色はブルーハワイの青に似ている。
私も手酌でグラスに注ぐ。
個人的には見た目だけなら甘ったるそうな感じがして敬遠しちゃいそう。
でも……
「では乾杯」
「乾杯」
こつんとグラスが鳴る。
私は一口飲みオリヴィア様の様子を伺う。
「……美味しい、これがビールなの? 本当に?」
お気に召してもらえたようでホッとする。
私個人的には好みの味だ。
味はラズベリーのフルーツビールに似ているかな?
サマーベリ―の香りが口のなかに広がり、その後に味が来る。 ただビールの酵母を使っているから甘さは控えめだ。
後味にほんのりビールの苦みがある。 だから口の中にいつまでも残らずスッキリとした味わいだ。
「正真正銘サマーベリ―を使用したビールですよ。 今度あちらのエールの酵母を入手出来たら、完全なるあちら産のフルーツビールを作って見せます。 そしたらまたオリヴィア様飲んでくれますか?」
「私でいいのかしら? 楽しみにしているわ」
「もちろんです」
他のビールも開けて二人でフルーツビールを楽しんだ。
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