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第二章 変わりゆく日常
33話目 配信2
しおりを挟む『荒川さん、世界狙いませんか?』
荒川さんは宮部さんからスカウトされていた。
『のっけからとんでもない記録が出ましたね。 続いて背筋を測定しましょう』
測定の結果、背筋は250kg、スクワットが232kg、握力が79kgと出た。
宮部さんの目が憧れを宿して輝いた。
その後も色々やってもらって、宮部さんと荒川さんがワンツーマンで指導されるような、謎の映像がしばらく続き元の配信部屋に戻って来た。
『……という訳で途中不適切な映像が流れましたが、驚きの結果がわんさか出ました』
『ありがとうございます』
荒川さんは最初とは打って変わり朗らからな感じの笑顔を見せた。
『ここからはどうやって荒川さんがこのような力を手に入れたのか聞いていきたいと思いいます』
『はい』
『この力はいつ頃気づかれたんですか? 小さい時からとかですか?』
『いえ、いつって言われると……最近ですね。 それこそ学祭の準備しているときに重い物運ぶから手伝ってって言われて……』
『本当につい最近ですね。 それはトレーニングとかされての結果なんですか?』
『いえ、先ほども宮部さんに話しましたが、トレーニングらしいトレーニングはしたことなかったんです。 ジムに行ったのも今回初めてでしたし、あ、ダンベルぐらいは買ったことがあります』
『そうなんですか? 他に変わったこととかはなにかあれば視聴者の皆様の為にも教えていただきたいのですが』
配信者の人が、ずいっと荒川さんに言い寄る。
『……実は、俺……職業……ステータスが出たんです』
その剣幕に押されたのか荒川さんが口ごもりながらおずおずと言った感じで語り出した。
『職業? ステータス……ですか? 職業は何か働かれてるとか?』
『いえ、俺は大学生です、その職業とちょっと違ってまして……』
思わず出てきた言葉に配信者の人がポカンとした表情を浮かべた。
荒川さんは意を決したように一度瞳を伏せ配信者を真っ直ぐ見つめた。
『えーっと……皆最初は冗談って思ったみたいなんですけど、この力を見て一緒に検索してくれるようになったんです。
この話を受けた理由も、俺と同じような人が居るんじゃないかって、俺が何か発信したら同じような人が見つかるんじゃないかって思って……受けたんです。
正直突然こんな力がでたのって……気味悪いじゃないですか。
何かの病気かもしれないし、精神病の類かもしれないですし』
『そうだったん……ですか。 すみません、面白おかしく茶化してしまい……。 申し訳ありません、大変失礼しました』
『あ、いえ、いいんです。
受けたのは俺の意志ですし、こんないろんな人に発信してくれる場を提供してくれて感謝してます。
俺一人だったらこんなジムを貸し切りにして検証なんて出来なかったですし、色んな人に知ってもらうことだって……、それに褒めてくれる人が居るって分かっただけでも嬉しい事ですから』
真摯に謝罪する配信者に対し荒川さんが慌てたように宥めた。
『ありがとうございます。 ちなみに、その……職業やステータスというのはどうやって見るんですか? 我々にも見えたりするんでしょうか?』
『残念ながら他の人には見れませんでした。 俺自身が見る時はステータスオープンって言うと表示されるんですけど』
『ステータスオープンですか? なら今荒川さんの前には表示されてるんでしょうか? 差支えなければ内容を教えて頂いても宜しいでしょうか?』
『はい。 私の目の前にはタブレットサイズの表示が出てます。 そこには名前と職業とレベル、ステータスやスキルが表示されてます』
『……まるでゲームのようですね。 残念ながら私は出ませんでした』
『そう……ゲーム見たいです。 同じサークルのメンバーでも出た人は居ませんでした』
半信半疑ながらも配信者の人は興味深そうに質問を続ける。
『ちなみに荒川さんの職業とレベルを教えてもらえますか?』
『おれの職業は兵士って出てます。 レベルは13です』
『兵士……? 兵士ってあの?』
『ゲームとかで出てくる兵士だと思いいます。 スキルは剣術でした』
『本当にゲーム見たいですね。 まぁ最近スライムが現れましたし何があっても不思議ではないですからね。 では俺も私もステータスが出たという方は私の方に連絡貰えるようお待ちしております。 一人で悩まないでご相談ください』
そんな内容の配信が続いた。
動画の締めの荒川さんの表情は最初と打って変わって晴れ晴れとしたものになっていた。
「兵士来た!!!!」
「他の職持ち判明した!!!!」
その配信を見て私と姉は思わずハイタッチした。
「あの配信者いいネタ見つけたね」
荒川さんだけでこの視聴者数だ。
配信されて1日と経っていないのにすでに10万再生突破している。
これは今後も数が見込まれるキラーコンテンツだね。
すかさずチャンネル登録しておいた。
「荒川さんは私たちの神様だね」
私たちに情報を授けるために自らを犠牲にしてくれるなんて……なんていい人なんだろう。
心の中で荒川さんに感謝をささげた。
「まぁ、当の本人は私たちのことすら知らないんだけどね」
「そうなんだよね」
そして姉と二人でSNSで色んな人達の反応を漁った。
その反響は凄まじくSNSのトレンドに「ステータスオープン」 というタグが入っていた。
「スレも当然立ったね」
「そうだね。 情報増えるかな?」
立ったスレの名前は【嘘か】職業スレ【真か】となっておりすでに書きこみが殺到していた。
自称勇者が多数出現している。 聖女や聖者も人気だ。 薬師や薬剤師なんかも多い。 もちろん錬金術師や鑑定士も多数出現している。 他には剣士や魔術師、魔道具師とか……というか皆なりたいものを書きこんでいる?
そういうスレなのかここは。
他にもスキル報告スレ、スキル予想スレ、ステータス当落スレ、職業当落報告スレ等色々あった。
中二病満載なスキルから、自分が考えたカッコいいスキル名みたいなものが書きこまれている。
「なんだかみんな楽しそうだね」
「そうだね」
なんだか求めていた情報から路線が変わって行ってる気がした。
「……そのうち求めていた情報が出てくるかな?」
「……厳しいんじゃないかな」
「そうだね……」
私と姉はあきらめに似た気持ちを抱いた。
そんな私たちの予想とは打って変わって、SNSの方に職持ちらしき人達が名乗りを上げ始めた。
こうして緩やかに力を持つ人たちが注目をされるようになった。
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