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第三章 進路とダンジョン攻略

66話目 2回目のダンジョンアタック 6

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罠に気を付けつつしばらく進むと今度は狼の群れが出た。
10匹くらいの大所帯だ。

これも桜井さんのスキルで事前に察知出来たおかげで不意打ち攻撃を防ぐことが出来た。
私もスキルで狼の群れを分断させた。

伊勢さん達の方に3匹、こちらに2匹、結界でこちらに来れないのが5匹。

こちらに来た狼は葵が水魔法で首をはね、五十嵐に突撃し、跳ね返されたところを茜がハンマーで一撃。

私の出番は無かった。

伊勢さん達の方を見ると、伊勢さんが狼の背を触っているようだ。
一見すると撫でているようにも見えるが、狼の動きが鈍い。
まるで関節が固まってしまったかのように前後に不規則な動きを見せている。
ただその場から逃げ出す力はないらしい。

伊勢さんがその様子を開いている方の手で撮影する。
その狼を助けようとしたのか別の狼が飛びかかる。

鈴木さんが飛びかかり無防備になったお腹を横から蹴る。
蹴られた狼はそのまま壁に激突し、光となって消えた。
もう一匹の狼は桜井さんに仕留められたようですでに消えていた。

「橘さん、そっちの残りの狼、逃げないよう後ろも塞いでもらっていいですか? こっちは少しばかり撮影したいので」

「いいですよ……あっち仕留めておきますか? ウズウズしてるのが二人いるので」

「あー……そうですね。 任せました」

伊勢さんが撮影しながらそう言うと、茜と葵が結界に阻まれキャンキャン言っている狼の下へ走った。

「私の獲物」

「私にも頂戴よ」

「……私が3、茜が2」

「えー……まぁいいか。 サンキュー!!」

「結界解除が先でしょうに!!」

結界解除するより先に3匹が、結界解除した直後に2匹が2人の手によって光となった。

「なんか……橘が振り回されるのって新鮮だな」

五十嵐にそんな感想を述べられた。

「別に振り回されてなんか……なにそれ」

「ん?」

五十嵐は競って狼を刈ろうとする2人をほったらかしにして、同じようにほったらかしにされているアイテムを回収していた。
返事をしながら振り返ると、五十嵐の手にはふさふさの何かがあった。

灰色で長さは30cmほど。 例えて言うなら先ほどの狼のしっぽのような大きさ……しっぽか!!

「五十嵐君」

「君?」

「そのしっぽはいただこう」

「しっぽ? あぁ、これのことか? ほれ」

ポイっとぞんざいに投げてよこした。
それをキャッチする。
硬く野性味溢れる毛並みだがそれもまたよし。
両手でにぎにぎしていると自分達が倒した狼から落ちたアイテムを回収し終えた2人が戻って来た。

「遥なにそれ」

「しっぽ? しっぽ?」

貸して貸してと2人にせがまれる。
どうやら2人が倒した狼からは出なかったようだ。

葵に渡す。

「野性味良き」

「ああ、私も私も!!」

葵が次に茜に渡す。

「お土産用の狐のしっぽみたい。 これ良い!!」

「良い」

「美雪と美緒さんの分も狩ろう!!」

「「良い」ね」

私達が狼狩りで盛り上がっていると、

「……お前らの感性怖いわ。 羽ウサギのしっぽと言い……なんなんだそのしっぽに対する執着……」

五十嵐からそんなことを言われた。



「いやーお待たせお待たせ」

撮影とアイテム回収を終えた伊勢さん達もやって来た。

「伊勢さん、どうでした? やっぱり魔物相手にも使えました?」

「使えた使えた、……とその件は拠点に戻ってからにしよう。 まずは探索だ」

「そうですね」

再び桜井さんに探知のスキルを使用してもらい、ダンジョンの先に進むことにした。

8階に降りてから間もなく3時間、魔物部屋にも当たらず、順調に攻略していた。
7階の感じからすると間もなく9階への階段が見える頃だ。

「そろそろ荷物がいっぱいになってきたわね」

「時間も時間だな」

「……そこ階段じゃないか?」

「おお!!」

「丁度いい、今日はここまでにして拠点に引き返そう」

「そうですね」

9階への目途がついたのでここで拠点へ戻ることにした。
手探り状態の攻略と違い、来た道を戻るだけの撤退は1時間ほどで終わった。

「あら、おかえりなさい」

「食事準備してあるよ」

「見てみてー狼のしっぽ!! カッコ可愛くない?」

「カッコいい!!」

「可愛いわね」

「ここの女性の感性よ……」

「五十嵐うるさい!!」

五十嵐は男性陣に肩を組まれて、その話題おさわり厳禁とばかりに連行されていった。

7階の拠点へ戻ると食事の準備がされていた。

「お腹空いたー」

「旨そう」

「手を洗ってきてね」

「拾ったアイテムはこっちのテントに置いてくれ、明日自衛隊の拠点の護衛に戻る組に持たせるから」

「「「「はーい」」」」

私と葵と茜が鞄からアイテムを取り出し、テントに置きに行った。
伊勢さんや鈴木さん達がそれらを運びやすいように新しい鞄へと詰めていく。

「結構アイテム落ちましたね」

「な、使えるかどうか分からんけどな。 ゴブリンの腰蓑なんて死んでも要らん」

「私も要らないです」

「しっぽ欲しい」

「しっぽ良いよね。 加工してキーホルダーにしてベルトに着けたい。 絶対可愛い」

「あはは……」

伊勢さん達は苦笑した。
そうは言ってもアイテムは全部提出なのでしっぽ含めて全て置いた。

「しっぽ……」

「皇さん、名残惜し気にしてもダメだって、まだ前回のも全部鑑定出来てないんだから」

伊勢さんの言葉に興味を惹かれた。

「鑑定出来たら貰えるかもしれないんですか?」

「んー亘理さんが確かそう言ってたと思う。 金策がどうのこうのってなー」

「亘理さん独り言で色々呟いてますからね」

「そう言えばアメリカのあの臨時速報のダンジョンはなんか言ってましたか?」

私達には何も教えられてないけれども、その亘理さんの独り言を聞ける立場に居る社会人組なら何か知ってるかもしれない。
そう思い質問したが、

「あぁ……外務省の役立たずめ!! って言ってたぞ。 なんも情報こないみたいだ」

「……亘理さんの独り言、それはそれでいいの? 情報駄々漏れじゃん」

「まぁ、俺たちしか聞いてないからな」

そう言って伊勢さん、鈴木さん、桜井さんが苦笑した。



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