89 / 113
第四章 それぞれの生活
89話目 優奈の行方
しおりを挟む「ここ……どこ?」
私はただいま白い壁と毛足の長い触り心地の良い絨毯が敷かれた部屋の中に居た。
広さは高校の教室程。
この部屋にはソファーやテーブルもあるがテレビやエアコンと言った電化製品は見当たらない。
なんていうかヨーロッパの洋館のような部屋だなと思った。
なんで私は絨毯の上に座り込んでるんだろう?
そんなことを思いながら立ち上がった。
部屋には私以外誰もいない。
「うーん……お姉ちゃんは? あれ? 亘理さん見送ってたんだよね? あれー?」
瞬きの瞬間のような暗闇が一瞬だけあり、その次に目に飛び込んできたのがこの部屋だ。
「スマホスマホ……うそ……持ってない?!」
スマホで取りあえずお姉ちゃんに電話しようと思いポケットをまさぐったが、私のスマホは無情にもリビングのテーブルの上だった。
それどころか着の身着のままである。
持ち物は今着ている服と靴のみ。
流石にまずいと思ったら扉が開いた。
「ミーリア様、落ち着いてくださいめー」
「ユースケユースケ連れてきたヨ」
「分かった分かった、押すなミーリア」
扉から現れたのは角を生やした女の子に背中を押された父となんだか可愛らしい御爺さんだ。
「……お父さん?」
「優奈!! 会いたかったよ!!」
私と目が合うと父は花が咲いたような笑顔になり抱きしめてきた。
ぐはっ。
ぎゅーっと抱きしめられ苦しさから背中をタップする。
「あぁ、すまんすまん久しぶりだな優奈」
「久しぶりー……だけどここどこ?」
父に会えて嬉しい、けれども今は困惑の方が勝っている。
辺りを見渡しながら父に尋ねた。
「ここは魔族領だヨ」
「あなたは? ……お父さんの隠し子?」
「違う!!」
随分若い子、私よりも年下なのかな?
そう思うと、先ほどそんな子と仲の良さそうに現れた父の姿を思い出され、疑惑が口を継いで出た。
そしたら速攻父から否定された。
「私はミーリア。 魔王軍の第8師団長だヨ。 転移のミーリア。宜しくナ、ユースケの娘」
「その声……あの時聞こえた声……? それよりも魔王軍? 転移?」
「そうだヨ、私が連れてきたんだヨー」
人懐っこくにひっと笑う口元には八重歯が見えた。
気になるワードはスルーされたが、こんなちっちゃい子が師団長って凄いなと思った。
「優奈!! 取りあえずここ座ったらどうだ? ここ」
父は私から離れるとソファーに座り自身の膝の上をバシバシ叩いた。
膝の上に座って欲しいのか?
座らないけど。
向かいのソファーに座ったら私の隣にミーリアが座った。
「あはははユースケ気持ち悪いナ」
父の様子を見てお腹を抱えて笑っている。
取りあえず私は家から、このミーリアって子によって連れてこられたと言う事は理解した。
「粗茶ですがめー」
「あ、ありがとうございます」
羊のようなおじいさんが紅茶のような色の飲み物を入れて来てくれた。
「メリューラの葉のお茶ですめー」
「メリューラの葉?」
「魔族領で栽培されている茶葉ですめー」
「魔族領?」
「はい。 魔族領ですめー」
また出た。 魔族。 魔族って魔族? その角ももしかして本物?
ここってどこだ。
「あー優奈が目の前にいる。 可愛いなぁ……あれ? ミーリアとめー爺と言葉が通じてる? 俺の娘凄いな。 な!!」
娘が戸惑うぐらい褒めてくれる。
昔は嬉しかったけどこの年になってもそう褒められるとなんだか気恥ずかしい。
「言葉? 言葉分かるよ? ミーリアさんが日本語喋ってるんでしょ?」
魔族でしょ……? 魔族なんだよね?
ならば見た目からして魔法が使えそうだもん。
というか転移が出来るならそう言う魔法も使えるんじゃないの?
小首を傾げながらそう尋ねた。
「日本ゴ? 何そレ。 日本てなニ?」
ミーリアさんも同じように笑顔のまま首を傾げた
「……すり合わせしようか」
そう言うとお父さんは真面目モードに入ってくれた。
22
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!
まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。
そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。
生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる