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第四章 それぞれの生活
96話目 変化
しおりを挟むダンジョン攻略室
「上への報告は上げた。 私にできることはここまでだ」
橘君から預かった薬の類を付けて上司に提出を行った。
こういうのは迅速に上げるに限る。 下手に温めておくと腐ってしまうからな。
「私の首も切られるか挿げ替えられるか……」
せめてなにかしらの責任を押し付けられないことを祈るのみだ。
錬金術師という他の国では聞いたことのない職業の金の卵をみすみす誰かに攫われてしまった。
その責任を私一人に押し付けられたのではたまらない。
まあ、押し付けられたところで上司の何人かは道ずれにするつもりではあるけどな。
そう思って覚悟を決めた。
報告を上げてから不気味なほど平穏な毎日を過ごしている。
何かしらの連絡があっても良さそうなのだがそれもない。
不思議に思っていたら
「ニュース見てないんですか?」
そう三波君に言われてしまった。
「私は今世捨て人と言われても良い位な仕事っぷりだと思うのだが」
身辺整理という名の引継ぎ資料作りでこもりっきりだからな。
「では拾ってください。 これです」
新聞を見せられた。
そこには現政府のスキャンダルが所狭しと書かれていた。
「なんだこれは」
「連日いたるところから紛糾されているスキャンダルです。 与野党関係なく、各党の重要人物を狙い撃ちです」
「与野党関係なく?!」
新聞を読み込むと汚職だの不倫だの、パワハラだのよくもまあここまで一度に出せたものだなと思えるぐらいの量の不祥事が書き連ねられていた。
「……この対応で私の上げた報告書がおろそかになっているのか?」
「それもあるかと思われます」
「他にもあるのか?」
「今、足立先生が動かれてます」
そう言い、三波君が初めて私に対し綺麗に微笑んでくれた。
美しい笑みと足立先生の関係性が理解できず、ただただ三波君が美しいなと思ってしまった。
現政権が総辞職に追い込まれるまでそう日はかからなかった。
「聞いたか? 新しい政権」
「あぁ、あんなにダンジョン特化に振り切るってスゲーな」
「ダンジョン庁の設立なんて思い切ったな」
「政府主導の専門機関の設立もするらしいな」
今日も私は訓練に向かう、その最中街ではそんな話が聞かれた。
優奈の話がきっかけになったのかはわからない。
ただそこから話が変わったのは事実だ。
前政権は近年まれに見るスキャンダルだらけで倒れ、その波は野党まで広がった。
総選挙が行われ、そこから新たなリーダーが生まれ、現総理となった。
足立義彦
テレビで報道されていた経歴を見ると長年議員秘書を務めてきた人らしい。
その手腕は選挙期間中随所に見られ、民心をがっちりと掴み、選挙の結果は足立率いる与党の圧勝で終わった。
現政党の顔と呼ばれる大臣の中に私達が見慣れた人物が居たことに私はとても驚かされた。
歴代最年少での大臣就任、それが我らがダンジョン攻略室の室長であった亘理だ。
後任のダンジョン攻略室の室長には三波さんが就く運びとなった。
駐屯地についても話題はその話で持ち切りだ。
三波さんに向かっておめでとうと祝福する声や亘理室長に向けて激を飛ばす人達。
そんな人達を横目に訓練の準備をする私の横に五十嵐がやって来た。
「私たちにとっては良いことだよね」
「まぁな」
優奈の消息は依然として不明のままだ。
あれからしばらくしてもなんの音沙汰もない亘理室長を問いただしては見たが、選挙の準備や演説やらで多忙を極め中々進展は見込まれない。
私の決意は何だったのかと思うぐらい私の周りは静かなものだった。
「あ、橘君、今いいかな?」
「……なんでしょう、亘理室長」
そんな中でもみくちゃにされながら人垣を掻き分け亘理室長が私の元までやって来た。
進展しない苛立ちからかつい冷めた視線を投げてしまう。
「……情報が入った。 訓練後応接室に来てくれ」
「――!! 分かりました」
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