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第三章 小話集
過去編 (幼馴染) 後編
しおりを挟む姫様が木登りをしたせいで、父上にかなり𠮟られてしまった。
そして、友人と呼べる人が誰もいない事も聞いた。
いずれ姫様も聖女の認定を受けるから、俺をその目付け役か護衛にでもしたいからただ引き合わせただけかと思ったが少し違った。
純粋に友人という話し相手が欲しかったのだろう。
…こいつ呼ばわりして悪かったかな。
しかしまた木登りをされては父上に𠮟られるし…どう謝ろうかと思っていた。
姫様のいる居住スペースに行くと、また庭に案内された。
今日も貴族の令嬢達を呼んでいるらしい。姫様たちは敷物の上で人形と遊んでいるのを見ると、女の子なんだからきっとその方が合うのだろうと思う。
でも、その様子を見ると姫様は上手く輪に入れてないと思った。
使用人たちも心配そうに見ている。
そしてあろうことか、令嬢の一人が姫様の人形のリボンを取ってしまった。
姫様は言いにくそうにだが、一生懸命ダメだと辿々しく言っている。
「勝手に取ったらお父様にしかられない?」
「姫様は沢山持っているから貰っても大丈夫!友達だし!」
「じゃあ私も貰おう!」
「そ、それは…お父様が…ダ、ダメです…!」
姫様よりも一つ二つぐらい歳上なのだろうか…強引な令嬢達だった。
使用人が止めに入ろうとしたが、凄く気分が悪くて先に止めに入った。
「それはフィリス様のだぞ。返せ」
「サイラス…?」
「姫様がくれたのよ」
「返さないなら使用人もすぐにくるぞ。返すんだ!」
令嬢達は今初めて使用人に見られていた事に気付いたように焦り、目を反らしリボンを置いて逃げてしまった。
両親に泣きつきに行ったのかもしれない。
置いて行ったリボンは青生地に金糸入りの刺繡のある珍しいリボンだった。
「…こんな高そうなリボンを人形に使うなよ」
「ありがとうございます…お父様がガイ…ラル…?の商人さんから買ってくれました…」
「ガイラルディア?」
「そんな名前でした…」
「ガイラルディアは知っている。母上がガイラルディアから来たんだ」
「…フィリスにはお母様はいません」
姫様の母上は高齢出産の後、身体が弱くなり姫様がもっと小さい頃に亡くなっていた。
陛下は忙しく、兄上二人は歳が離れすぎて、しかも学業にも忙しく姫様に一日中構う事は出来ない。
幼いながらに孤独なのだろう。
「サイラス…ごめんなさい。フィリスのせいで叱られてしまいました」
「俺もすみませんでした…」
「ま、また遊んでくれますか?」
「…人形遊びはしませんよ。木登りも絶対にしません!」
姫様はまた泣きそうになってしまった。どれだけ木登りにこだわっているのか。
「別に毎日木登りをしているわけじゃありません」
「しないのですか?」
「しません!…姫様、遊ぶなら何か別のものを」
「…お、お絵かきはどうでしょう?お父様が絵の具を買って下さいました!」
「お絵かきなら…」
それなら危険はないから、父上に叱られるような事は無いはず!
お絵かきをすることになったら、姫様は何か言いたそうに見ている。
「サ、サイラス、お友達になってくれますか!?」
「いきなり何を…もう友達でいいでしょう」
「ほ、本当に!?じゃあフィリスと呼んで下さい!さっきはフィリスでした!」
「フィリス様でいいですか」
「お友達ならきっと様はいりません」
「…父上に叱られそうなので、人前以外ですよ」
「はい…!」
その日からフィリスと遊ぶようになった。
フィリスも俺も聖力を生まれつき持っていたから、一緒に教会にも通うようになっていた。
一緒に勉強もして、フィリスは聖女に…俺は聖騎士になれば周りの勧めもありフィリスの護衛へと入隊した。
やはり、公爵家の出自で、しかも嫡男ではなく聖騎士になるであろうと思われた俺はフィリスと歳も近く、将来フィリスの護衛にでもしたかったのだ。
そして、フィリスとは以外と気が合った。お互い恋愛感情が芽生えることは恐ろしいぐらい全くなかったが、友情は確実にあったのだ。
そんなフィリスが嫁ぐ事になった時は、これ以上無いほどに心配をした。
あの、大国ガイラルディアに嫁ぐのだ。しかも相手はあの王子でありながら前線に出るような強者に…。
ミアは、フィリスがたった一人でガイラルディアに行くことに涙を流していた。
「どうしてフィリス様が一人で…使用人すら連れて行けないなんて…どうにかならないの?」
「無理だ…これ以上ガイラルディアと争う事は出来ないし、その隙に他国から戦をしかけられたらルインみたいな小さな国は終わりだ。同盟を強固にするには王女が輿入れするのが効果的なんだよ」
辺境の領地争いとはいえ、国に全くダメージがないわけでは無い。
既に敗戦国として他国には隙を見せていることになっている。今他国から攻められると、それこそ国の被害は計り知れなくなる。ルインを滅ぼさない為には大国ガイラルディアと同盟を組むのは間違いではないのだ。
ましてやフィリスは王女だけではなく聖女でもあり価値が高い。
ルインはその価値の高い王女が輿入れするのだから、ガイラルディアが同盟を反故にすることがないようにと暗に言っているのだろう。
実際敗戦国として支払う金もフィリスが輿入れすることによりかなり減額されている。
フィリス一人がガイラルディアに輿入れする事によってルインは安泰なのだ。
「ミア…戦が終わったから、国の移動も昔の様にきっと戻る。そうなったら母上の実家を訪ねよう。きっとフィリスにまた会える。結婚式が決まれば陛下の警備にも志願する。それまではフィリスを心配させないようにフィリスの前で泣かないようにするんだ」
「絶対よ…!」
悲しむミアを抱き寄せて二人でそう決めた。
そして、泣きそうなのを知られないように我慢してフィリスはたった一人でガイラルディアの人間になった。
でも、次に再会した時はあのフィリスがレックス王子を好きだと言った。鈍いフィリスは気付いてなかったけど、どう見てもレックス王子もフィリスが好きだと思った。
この二人の様子に心の底から祝福した事は言うまでもなかった。
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