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手紙
手紙はクライド様からだった。私へと出して下さったのだ。
ライラさんとテーブルにつきクライド様からの手紙を開けると、『早く会いたい』と私を恋しんでくれていることが書いてあった。近いうちに帰ると……。
「ライラさん。クライド様が近いうちに帰るそうです」
「そう……早く帰って来て欲しいわ」
「私もです……」
近いうちに帰るといっても、一週間以上はかかるとわかっている。でも、始めてもらったクライド様からの手紙は嬉しくて、ベンが力いっぱい握りしめてシワになった手紙を大事に握りしめた。
「……プリムローズさんは、クライド様が好きなのね」
「……怖い時もありました。すごく怖くて……」
目が覚めて初めてを奪われた時は、顔も見られないほど怖かった。
でも、その後はずっと優しかった。未だに、いきなり私の処女を奪ったことはよくわからないけど、眠りに付いていた私を救ってくれたことも、プレスコット伯爵家から出してくれたことも感謝している。
「でも、今は違います……クライド様が大好きで……ライラさんは、違うのですか?」
「そんなことないわ……クライド様は、父に媚びないもの……」
「お父様と何かあるのですか?」
そう聞くと、ライラさんが鋭く私を睨みつけて来る。聞かれたくないのだ。
あんなにしょっちゅう来ているから仲のいい親子だと思ったけど、違うのかもしれない。
「あなたが邪魔だってことよ……やっぱり、お茶はいらないわ!」
不機嫌になってしまったライラさんに申し訳なくなった。
ベンとのやり取りには助け舟を出してくれたのに……
「ライラさんを怒らせてしまったわ……お父様と何かあるのかしら?」
「私にもよくわからなくて……私が来た時には、すでにライラ様は婚約者としてレイヴンクロフト次期公爵邸におられましたので……」
お茶の給仕をしているリアムに聞くと、リアムもよくわからないらしい。
だけど、私はやっぱり邪魔者らしい。どこにいても私の居場所はないのかもしれない。
そう思うと、どうしても落ちこんでしまう。
結局ライラさんとお茶は出来なくてグリモワールの塔に行くと、沢山のグリモワールが床に散らばるように落ちていた。
「……リアム。これはなんでしょう? もしかして誰かが勝手に入り込んだのでしょうか?」
泥棒だったらどうしようと思い、青ざめてしまう。
(グリモワールの塔の扉は鍵が閉まっていたのに……)
私が通って整理していたのに、こんなことになってしまいクライド様に申し訳ないと思っていると、リアムはグリモワールを拾いながら落ち着いていた。
「おそらく、妖精の仕業です。クライド様がいないから、プリムローズ様にいたずらをしているのかもしれません」
「私に……?」
「新しい人間が来ると、こういう事をするのですよ。……プリムローズ様はクライド様に愛されていますから、もしかしたらヤキモチを焼いている可能性もあります」
「妖精はクライド様が好きなの?」
リアムとルノアとグリモワールを拾いながらそう聞いた。
「妖精の言っていることはわかりませんが……ヴェルナーさんから以前に聞いたことがあるのは、妖精たちは先代よりもクライド様に協力的らしいですよ。クライド様に好意的なのは、間違いないと思います」
「先代というと、今のレイヴンクロフト公爵様のこと?」
「そうです」
クライド様はお父様やお祖父様よりも魔力が高いと言っていたから、もしかしたらその辺も関係あるかもしれない。
「……クライド様は、妖精が何を言っているかわかるのかしら?」
「どうでしょうか? 妖精の言語は私たち人間と言葉も発音も違いますから……」
クライド様がいない間、ずっといたずらするのだろうか……それは、困る。
いつもなら、上の本棚のグリモワールはクライド様が魔法で片付けているのだから、そんなところのグリモワールを落とされたら、私では片付けられない。
「リアム……大変だわ。クライド様がいなくても妖精たちをなんとかしないと……」
「話なんか聞かないと思いますよ? これくらいで済んでいるのも、クライド様が妖精たちに注意しているからです。だから、気にすることありませんよ」
そう言いながら、リアムはテキパキと片付けていた。
「プリムローズ様。今日は遅くなりましたから、片付けだけして帰りましょう。遅くなるとクライド様が心配します」
ルノアも、グリモワール拾い集めながら言う。だけど、早く帰ってもクライド様はいない。
「早く会いたいわ……」
そう呟きながら、グリモワールを拾い集め片付けていた。
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