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天井から男が落ちてきました

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「やっと、出来上がったわ……」

カレディア国の城の一室。薄暗い自分の部屋の中で、私の手の中には、やっと出来上がった探索のシード(魔法の核)があった。

シード(魔法の核)は、魔法を使う人間には備わっているというもの。生まれつき、自身に備わっていることがほとんどだけど、新しい魔法を覚えるのに、このシード(魔法の核)をつかうこともある。身体に魔法でシード(魔法の核)埋め込めば、その力が顕現するのだ。

それが出来るのは、聖女だけだった。

そして、探索のシード(魔法の核)を私は自分で作った。
三ヶ月もかかった。苦労して造ったと思い出せば感無量になる。

「見てなさい……」

探索の魔法の紋様を刻まれたシード(魔法の核)をギュッと握りしめて、不気味に笑みが零れたままで、身体に埋め込むために魔法を使う。
手のひらから、光が溢れてきた。しかも、黒みを帯びた光だった。

私の髪色と同じだと思える。薄いクリスタルブルーのような髪色だった私に段々と一部分だけ黒髪が出現してきたのだ。

黒髪は闇属性の色。光の聖女と呼ばれる我が国では有り得ない色だった。
でも、光魔法も使える。そもそも、ウィンターベル伯爵家は、青い髪色が多いのだ。それが、私だけ薄いクリスタルブルー……でも、聖女で光魔法が顕現したからだと言われていた。

それが、今では違う。

その時に、魔法が暴走したように探索のシードが私の身体ではなく、天井へと向かっていった。そして、カッと眩い光が爆発した。

__重厚な破壊音が響く。ガラガラと天井が壊れる音と共に、何かが落ちてきた。

「キャアァ……っ!」
「クッ……なんだ?」

突然の出来事に避ける暇もなく崩れた天井の瓦礫の中で、なぜか私の上に天井から落ちてきた男が乗っている。

「誰!?」
「何をした! 貴様……っ!」
「勝手に落ちて来たのは、そっちですよ!!」
「やかましい!」

男が覆いかぶさったままで怒っている。そして、ふと手を見れば、あの探索のシード(魔法の核)がなくて青ざめてしまう。

「キャーー!!」

あれだけ苦労して造ったシード(魔法の核)がない!!

「何事ですか!!」

手のひらに握っていたシード(魔法の核)がなくて驚くと、扉がドカンと勢いよく開けられた。そして、私と私の上に乗っている男を見て、飛び込んできた近衛騎士たちが固まってしまった。

「ちょっと……っどいてくださ……っ」
「少し黙ってろ」

囁くような声音で天井から落ちてきた男が耳元で言う。
天井から落ちてきた男を押しのけようとすると、反対に腕を掴まれて口元を塞がれた。
近衛騎士たちは、何も言えず困惑したまま動かなくなってしまった。

「何の騒ぎだ!」

固まった近衛騎士たちの後ろからは、マティアス殿下がやって来た。こんなタイミングで来ないで欲しいとは思うが、もうどうにもならない。
私たち二人を見るなりマティアス殿下も驚いている。そして、驚いたままのマティアス殿下が上ずった声で叫んだ。

「こ、婚約破棄だーー!!」

私の部屋は天井が崩れて、この現状にカオスだった。





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