光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。

屋月 トム伽

文字の大きさ
8 / 55

深夜の野営

しおりを挟む

王都から出発して、すでに深夜だった。
馬車はひたすらに進んでいる。馬車の中では、長い足を組んで座っているヴェイグ様の隣に座っていた。

「ヴェイグ様。どこまで行くのですか? シュタルベルグ国は、一日では着きませんよね」
「フェルビアの砦に飛竜を置いている。少しでも早くフェルビアの砦に着きたいから、もう少し進む予定だ」
「すっごく遠いのですけど……」

シュタルベルグ国は、竜騎士団が有名だった。飛竜に乗ってカレディア国に来ることもあるけど、飛竜のいないカレディア国では、竜騎士団の飛竜の世話が出来ないという理由で、砦を貸すことがよくあるのだ。今回は、フェルビアの砦を貸していたらしい。

あんな大きな飛竜が城にいる場所を確保するのも大変だと言うのが、理由の一つでもある。

「明日は、早馬に乗り換えるから、馬車よりは早く着くだろう」
「でも、このままだと街は通りませんよ」
「そうだろうな。今夜は野宿だ」
「……私、迷惑かけてます?」

王弟殿下に野宿させるなんて、畏れ多いことではないだろうか。

「むしろ、助かったのだが? あの探索のシードは貴重だ。それに、なかなかに質が良い」
「そうでしょうね……あんな便利なシード(魔法の核)は売ってませんから……」

苦労して造りましたからね。どんな気配や探し物でも出来るように、いくつもの魔法紋を組み合わせて造ったのですよ。

「でも、お仕事は大丈夫ですか?」
「……目的の一つは達成した。数か月後のカレディア国で行われる光の祝祭の警備の話も付いたしな」
「ああ、それで来ていたのですか?」

王弟殿下だから、外交に励んでいるのかもしれない。……でも、なぜ、天井に?

「ヴェイグ様……」
「なんだ?」
「……天井裏を通るのが趣味なのですか?」
「そんな趣味の奴はいない」

だったら、なぜ、私の部屋の天井を通過するのですか。未だにその理由がわからない。
すると、馬車がやっと止まった。

「ヴェイグ様。今夜はここで休みましょう。すぐに、野営の準備に入ります」
「ああ、頼む」

停まった馬車の外から、ヴェイグ様の部下がそう話しかけてくる。
馬車のカーテンをそっと開けば、真っ暗な森の中だった。

「……今夜は野宿で我慢してくれるか? 明日は、どこか宿を取ろう」
「気にしていません。聖女として、森に出向くときもありました。その時は、野宿することもありましたので……むしろ、私のせいでこんなことになったのだと思うと、申し訳なくて……」
「気にしなくていい。不貞を疑われたのは、俺の責でもある」

それは、そうだと思う。でも、私を助けてくれたのも、ヴェイグ様だ。
今も、馬車を降りて野宿の準備を御者に指示し始めている。途中で合流したヴェイグ様がシュタルベルグ国から連れて来た騎士たちも、馬から降りて野宿の支度を始めていた。

「ヴェイグ様。私も手伝いますよ」
「手は足りているが……」

あっという間に準備に取りかかる騎士たちを背後に、ヴェイグ様が馬車の扉の所に戻って来た。

「少し休め。大したもてなしはできんが、これくらいはさせてもらう」

そう言って、あっという間に野宿の準備が整った。
真っ暗な森の中で、騎士たちが焚き火を真ん中に囲みスープのいい匂いがしてくる。

馬車の扉を開けたままで座っている私に、ヴェイグ様がお茶を出してくれる。暖炉もない森の中はひんやりとしており、ヴェイグ様の貸してくれたマントに身体を包んでいる私がそっと口を付けると温かくてホッとした。

「……美味しいです」

甘いのに、さっぱりとしたお茶は香りが良い。

「シュタルベルグ国から持参したお茶だ。口に合って何よりだな」
「まぁ、シュタルベルグ国から……」

私の側でヴェイグ様もお茶を飲んでいると、騎士がスープとパンも持ってきてくれる。
用意がいい。少しの食事だけど、休みなくここまで来た私には、有り難いものだった。







しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】悪女を断罪した王太子が聖女を最愛とするまで

空原海
恋愛
 王太子リヒャードへの贈り物。そこへ毒を盛った幼馴染の令嬢。  彼女は国内でリヒャードの婚約者筆頭候補と目されていた。  令嬢を凶行に駆り立てたのは、果たして。  一方、守りたかった友人の命を、己の判断として奪わなければならなかったリヒャード。  友人の不名誉を挽回することすら叶わず、心に深い傷を負った。  そんなリヒャードの元へ、宗主国の皇女バチルダが婚約者として訪れる。  バチルダは言った。 「そなたがいかにわらわに無礼を働こうと、この身を斬って捨てるような隠匿のかなわぬ著しい狼藉でもない限り、なんの咎もないということよ。  わらわは貴国への親愛を示す献上品である」 ※ ざまぁはありません。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

追放された聖女は魔獣を祓い、王子に愛される 〜あるいは抹消された王子が憎悪に燃える聖女を人間にするまで〜

香月文香
恋愛
「聖女ロザリンド=イースを告発する」「私、マリアベル=レ=ジルレーンは、聖女ロザリンドの偽りを断罪します!」「平民のあなたに、聖女の椅子は大きすぎるのでは?」「さようなら、ロージー」十六歳の誕生日。第一王子との婚約発表を行うはずだった大広間で、私は聖女を解任された。私は聖女だけど、魔獣を祓うこと以外は何にもできなくて、偽物なのだと。まぁ一人の方が魔獣祓いも効率的にできていいかもしれないわ。なんて前向きに考えていたら、「身柄は<黄昏の宮>預かりとする」だって。皆さんざわついているけれど、<黄昏の宮>ってどこ? え? 第二王子がいるって? なにそれそんなの聞いてない──! だって、私は魔獣を殺せさえすればいいのだから。 ※小説家になろうにも掲載しています

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...