光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。

屋月 トム伽

文字の大きさ
40 / 55

闇のシード 5

しおりを挟む

__手が届かなかった。

不安気な様子で泣いていたセレスティアに手が届かなかったのだ。

セレスティアが消えたこの場所には、ロクサスが魔法で身を庇っていた。セレスティアの闇が強すぎるのだ。だが……

「……出せ」
「何を……」
「転移のシード(魔法の核)を持っているのだろう! 早く出せ! セレスティアを迎えに行く!」
「どこに行ったか分かっているのか!?」
「当たり前だ! あれはカレディア国の闇のシード(魔法の核)のせいだ!」

ロクサスが、闇のシードの存在を俺が知っていることに驚く。そして、憎々しく歯を軋ませた。

「セレスティアが、カレディア国の秘密まで話したのか……それほど、この男がいいのか……」
「馬鹿々々しい。セレスティアが、話すわけない。あれは、遥か昔にカレディア国が封印したものだ。シュタルベルグ国にも、その話が伝わっているだけだ」

初めて知る情報なのか、ロクサスは驚いたままだった。それに酷く苛ついて、自然と視線が冷ややかな鋭いものになる。

「……フェルビアの砦の時も、そうだった。お前は、セレスティアが好きだと思ったが、大事なのは、セレスティアではないのだな。今も、聖女機関の秘密のことを頭に巡らせている」
「そんなことはない! 俺は、セレスティアを守るつもりで……っ!!」
「なら、さっさと転移のシードを出せ!! 俺はお前と違ってセレスティアのことしか頭にない!!」

セレスティアのことを指摘されて、一瞬躊躇するロクサス。そんな時間すら惜しくて、殺気立ってしまう。

「出す気がないなら、それでもかまわん。殺して奪い取るだけだ」

冷たい声音で言うと、周りの闇に触発されたように、身体中からでた闇が竜の形をしてくる。

「まさか……ドラゴニアンシード(竜の核)!?」

殺気立つものを感じたロクサスが、迷わず剣を抜いた。光の魔法を付属した剣は、美しく煌めく。
深淵のような漆黒の竜の形どった魔力。抵抗しようとするロクサスに、手をかけようと魔力とともに竜が蠢いた。

「止めろ!! ヴェイグ!!」

その怒号とともに、ロクサスと自分の間に炎で遮られた。
炎を使うのは、赤竜のドラゴニアンシード(竜の核)を持っている兄上だった。
炎の方角へと視線を移せば、嚇怒(かくど)した兄上が自分と同じように竜の形どった赤竜を背後に周りが赤くなっていた。
違うのは、自分のは黒竜で、兄上のは火の属性の赤竜だということ。

「……ロクサス殿。今は緊急事態だ。知らぬこともあるだろうが、カレディア国もこのままでは無事では済まない。ヴェイグをカレディア国に送って頂きたい。あれに、抵抗できるのは、ヴェイグだけだ」
「だ、出す気がないわけではない。ただ、あれはシュタルベルグ国では使えない。カレディア国でしか使えない魔道具なのです。せめてカレディア国の国境まで行かねば……」
「では、すぐにヴェイグと行って頂きたい。飛竜なら、一番近いカレディア国の領地に一日もかからずに行けるはずだ。そこで転移のシードを使ってヴェイグと聖女機関に行ってもらいたい」
「……っ、いいでしょう。セレスティアのためだ」
「そうだといい」

ロクサスが剣を収めると、兄上が赤竜を収めながら振り向いた。

「いいな。ヴェイグ。セレスティアは、おそらくお前を待っている」
「……すぐに連れて帰ります」

そう言って、自分の黒竜を身体に収めた。




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

欲深い聖女のなれの果ては

あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。 その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。 しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。 これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。 ※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

義妹に苛められているらしいのですが・・・

天海月
恋愛
穏やかだった男爵令嬢エレーヌの日常は、崩れ去ってしまった。 その原因は、最近屋敷にやってきた義妹のカノンだった。 彼女は遠縁の娘で、両親を亡くした後、親類中をたらい回しにされていたという。 それを不憫に思ったエレーヌの父が、彼女を引き取ると申し出たらしい。 儚げな美しさを持ち、常に柔和な笑みを湛えているカノンに、いつしか皆エレーヌのことなど忘れ、夢中になってしまい、気が付くと、婚約者までも彼女の虜だった。 そして、エレーヌが持っていた高価なドレスや宝飾品の殆どもカノンのものになってしまい、彼女の侍女だけはあんな義妹は許せないと憤慨するが・・・。

処理中です...