光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。

屋月 トム伽

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闇のシード 7

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「ロクサス……!!」
「イゼル様……ただいま帰還いたしました」
「ああ、よく帰って来てくれた……だが、セレスティアは、どうした? 魔道具として渡した転移のシードは帰還分の一つしかなかったはずだ」

ロクサスが聖女機関から持って来ていた転移のシードは使い捨ての魔道具。イゼルは、なぜ、セレスティアではなく、自分を連れて帰還したのかと言いたげにこちらを厳しい目つきで見た。

「それが……」

ロクサスも、言いにくそうにこちらに視線を移した。

「……っこんな時まで、セレスティアを隠す気か!? シュタルベルグ国は、カレディア国を滅ぼす気か!!」

マティアス殿下が、怒りを露にして詰め寄ってくる。その首を掴んで、壁に叩きつけた。

「……っく、何をする!!」
「黙れ。お前に用はない。殺すぞ」

「キャアァーー!!」

冷たく殺気立って言い放つと、ロクサスが「やめろ!!」と止めてくる。
マティアス殿下の隣にいた聖女は、顔を覆い怯えて悲鳴を上げた。

「なら、邪魔をするな」

そう言って首を離すと、そのまま咳き込みながら腰から落ちていくマティアス殿下に、ロクサスが支える。

漆黒の闇に包まれた球体。そこにセレスティアがいる。躊躇することなく、そのまま進んだ。

「……っロクサス! なぜ、あの男を連れて来た! 必要なのは、セレスティアだろう!!」
「それが……セレスティアは、あの中にいるのです」
「そんなはずは……セレスティアは、あの王弟殿下ヴェイグとシュタルベルグ国へと逃げたはず……」

漆黒の闇の球体を見て、戸惑うロクサスに、マティアス殿下が驚愕している。

「まさか……あれに、セレスティアは、取り込まれているのか……」

イゼルが呆然と呟く。

「……ヴェイグ殿が、言うには闇のシードは、器を探しているそうです」
「そうだ……そのために、カレディア国が光の魔法で封じていたのだ。だから、誰にも近づけさせないために、国と聖女機関の機密として隠していたのだ」

誰が器になるかわからない。だから、誰にも知られないように隠していた。

「セレスティアは……その器として狙われていたと言うのです……」
「セレスティアは、聖女だぞ!」
「その光の聖女で、誰よりも能力が高かったから、今まで無事でいられたのですよ! 一人で必死で抵抗していたのです!! それなのに、マティアス殿下がセレスティアを無下になどするから、こんなことに……彼女は、あなたを好いておられたのに……!!」
「セレスティアが……そんな素振りは、なかったぞ!!」

マティアス殿下が、初めて知ったセレスティアの気持ちに愕然とする。

「でも、今は……」

そう言って、ロクサスが顔を上げた。
後ろのロクサスの説明が段々と小さな声に聞こえる。セレスティアがマティアス殿下を好きだったのは、ずっと昔のこと。今は違う。それでも、悩んでいたのは間違いない。

セレスティアは、闇のシード(魔法の核)を受け入れられるほどの能力があった。それ以上に、資質があったのだろう。

だから、闇のシードに穢されても無事だった。

周りの闇が伸びて絡みついてくる。でも、黒竜のドラゴニアンシード(竜の核)のおかげで、浸食されることはない。
それ以上に、恐れも何もない自分に、これを必死で抑えていた聖女や聖騎士たちが、化け物でも見るかのように驚いてたじろいでいた。

「セレスティア。迎えに来た。ここから出て来てくれ……」

静かに言いながら、そっとセレスティアに触れるように漆黒の闇の球体に手を添えた。
セレスティアの反応は何もない。

まるで分厚い壁のように感じた。
セレスティアは、こんなことで俺が引くと思っているのだろうか……。

セレスティアのことは知っていた。二年ほど前に、兄上が陛下になる前にカレディア国に連れてこられた時に、見たことがあった。

カレディア国の王城にいるのが窮屈で、暇つぶしに近くの森を散策していた時に、偶々聖女機関の聖騎士たちが魔物討伐に来ていた。その時にセレスティアもいた。

クリスタルブルーの髪を煌めかせた娘が、一生懸命に聖騎士たちを守り癒している。
それが、美しいと思えた。

こっそりと出て来ていたために、姿を見せることもなかったが、不思議な気分だった。

もう一度会えればいい。
大聖女候補だとも、王太子殿下の婚約者とも知らずにそう思っていた。

それが、まさか天井から落とされて再会をするなど予想外だった。
しかも、セレスティアは探していた闇のシード(魔法の核)に穢されている。

もっと早く会いに来るべきだった。

セレスティアを想い、漆黒の闇の球体へと飲み込まれるように入って行くと、聖女機関の面々が悲鳴を上げるのが聞こえた。

誰が自分から、この中に入る人間がいるのか……誰もがそう思うのがわかる。

でも、自分にだけは、この闇さえも心地の良いものだった。



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