光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。

屋月 トム伽

文字の大きさ
55 / 55

ブラックローズ

しおりを挟む
__シュタルベルグ国の離宮の夜。

光の祝祭から一ヶ月以上も経ち、今はシュタルベルグ国でヴェイグ様と暮らしている。
カレディア国もシュタルベルグ国の属国になり、ヘルムート陛下はヴェイグ様に褒美もくれたが、ヴェイグ様は気にもしてなかった。

離宮の庭園には、毎日シード(魔法の核)を育てており、それが収穫(?)と言っていいのか、とにかく収穫できる頃になっており、土の中から取り出せば、煌めくようなシード(魔法の核)が出来上がっていた。

「セレスティア。リリノアを連れて来たぞ」
「まぁ、お待ちしてましたわ」

リリノア様にシード(魔法の核)を埋め込むために、ヴェイグ様に連れて来てもらったが……思わず眉根が上がる。

リリノア様がヴェイグ様と腕を組んで来ていたのだ。

「別にくっついて来てくださいとは言ってないのですけど……」
「呼んで来いと言ったのは、セレスティアだぞ」

まぁ、ヴェイグ様からすれば、妹のような存在なのだろうけど。

「セレスティア様。私に御用とは何でしょうか?」

少なからず不機嫌さを現わした表情に、ヴェイグ様との結婚がまったく無くなり、私に恨みもあるらしい。でも、リリノア様の性格では、何も私を落とす策略など考えもできないようで、何もできずにいたのだ。

「リリノア様。ちょっとだけヴェイグ様から離れて、こちらへいらしてください」
「ここでは、ダメなのですか?」
「良いものを差し上げます。ですから、これで元気を出してください」

むすっとした表情で、ヴェイグ様に背中を押されて私の前に立ったリリノア様に、腕を出すように言った。

「いいですか。少し身体に違和感があるかもしれませんが、すぐになじむと思いますので……馴染めなかったら、言ってくださいね」

馴染めなかったら、それは、シード(魔法の核)の適正がないと言うことで、身体からはじき出されるだろう。
でも、リリノア様は生まれつきシード(魔法の核)持ちだと言う。そう考えたら、馴染めないことはないと確信に似たものを感じる。

「それは?」
「私が造ったシード(魔法の核)です。癒しの魔法の紋を刻んでいるので、それをどう育てて極めるかはリリノア様次第です」

シード(魔法の核)を埋め込む魔法で、リリノア様の身体にシード(魔法の核)を埋め込むと、自然と吸い込まれるように入っていく。
シード(魔法の核)を埋め込む魔法の光に茫然としたリリノア様と違って、私は安堵した。
吸い込まれるような状況は、そのシード(魔法の核)が身体にあっているということだから。
だから、探索のシードが私ではなく、側にいたヴェイグ様に吸い込まれたのだ。

「……魔法……」
「はい。癒しの魔法がこれで使えます。癒しの魔法なら、失敗しても誰にも迷惑をかけないと思いますので……遠慮なく使って、精進してください」
「魔法が使える……私にも……?」
「上級魔法がすぐに使えるわけではありませんが、それはリリノア様次第です」

これで、自信に繋がればいい。何かに夢中になれば、きっと誇りに思えることが出てくるはずだ。
私ができるのは、ここまでだ。
リリノア様の人生は背負えないし、ヴェイグ様を譲ることもできない。
でも、自信がなく、父親や王妃様に結婚などで振り回される彼女の悩みが少しでも解消されればいいと思うし、手助けはしたいと思う。

「……セ、セレスティアお姉さま!!」

感無量で泣きながら、前触れもなく抱き着いてくるリリノア様に驚いた。

「私、これで魔法が使えるのですねっ……失敗しても誰にも迷惑をかけずにっ……」
「そうですけど……私はお姉さまではありませんよ」
「意地悪でふしだらなな聖女様かと思って、酷い態度を取って申し訳ないですわ!」
「そんなことを思ってましたか……」
「お茶に下剤も盛ったのに、騒ぎが起きて二人ですぐにどこかへ行ってしまい……飲まなくて良かったですわ!!」
「それは知りませんでした!」

いきなり言葉も選ばずに暴露するリリノア様。
何もできないでいただろうと思えば、そんな可愛い意地悪をしていたとは!?
しかも、華麗に空振りしている状況になっていた。
そう思われていたのだと思うけど、口に出されると複雑だ。

でも、聖女機関での嘲笑や侮蔑のほうが酷かった。
そう思えば、リリノア様のは可愛いものなのだろう。

「あんまり構うと、懐かれて大変なことになるぞ」
「そのようです……」

抱き着くリリノア様から、私を引き離すヴェイグ様も少し呆れ気味だ。

「リリノア。少し落ち着きなさい」
「はい……セレスティアお姉さまに嫌われないようにします」
「そうしなさい。それと、王妃もセレスティアとの結婚にもう反対はできないから、心配するな」
「私は、頑張らなくていいのですね……」
「お前のは、俺に対してあったのは愛じゃない」
「意地悪です」
「だが、間違いないだろう」

図星を刺されたみたいで、リリノア様が目を伏せた。

「頑張るのは他のことにしなさい」
「……はい。ごめんなさい。ヴェイグ様」
「いい子だ」

優しくヴェイグ様が頭を撫でると、リリノア様が頬を染める。
リリノア様の初恋はヴェイグ様なのだろう。子供が年上に憧れるものに似ている。

「私、魔法を頑張ります」
「きっと上手くいきますよ。シード(魔法の核)が吸い込まれたということは、リリノア様にその魔法と相性がいいからです」
「セレスティアお姉さま……嬉しいです」

また、涙をながすリリノア様に、シード(魔法の核)を造って良かったと思えた。
一生懸命にハンカチで涙を拭きながら、何度もお礼を言って去っていくリリノア様を見送り、姿が見えなくなった。

「あんなに喜んでくれるなんて……」
「ずいぶん悩んでいたからな。落ちこぼれだと言われるのは、気持ちのいいものではない」
「そうですね……リリノア様なら、良い癒し手になると思います」

無垢な彼女なら、慈しむように癒しの魔法を使える気がする。

「ヴェイグ様にも、見せたいものがあるのです」
「俺に?」
「はい。一緒に庭園へ来てください」

ヴェイグ様の手をとり庭園へと向かうと、以前ヴェイグ様から贈られたブラックローズの花が咲いており、それを美しく幻想的に照らすように周りに埋めたシード(魔法の核)が光を放っていた。
腰を下ろしてブラックローズをよく見ると、ヴェイグ様も腰を下ろして愛おしそうに見ていた。

「蕾から咲いたのです」
「ああ、綺麗なものだな。シード(魔法の核)もまた造っていたのか?」
「周りで光っているのは、光の祝祭で割ったシード(魔法の核)です。光の魔力を入れただけのものですので、光らせるのにちょうどいいかと……」
「珍しいシード(魔法の核)だぞ」

ククッとヴェイグ様が笑みを零し、つられて私もふふっと笑ってしまう。

「でも、光の祝祭のシード(魔法の核)は魔除けなどの意味も込めて玄関先や部屋に飾る人も多いのですよ。旅人は、光を放つシード(魔法の核)をお守りとして持って行くのです」
「効果抜群だな。では、ブラックローズが散れば、このシード(魔法の核)はお守りとして、アクセサリーに変えるか? 二つに割れば二人で持っていられるし、また野営する時は役に立ちそうだ」
「それは良いですね。でも、また野営する時が来ますか?」
「カレディア国にあった闇のシード(魔法の核)は、欠片だと聞かなかったのか? 言った気もするが?」
「欠片……?」

そう言えば、そんなことを言っていた気がする。

「ということは……」
「また、どこかで闇のシード(魔法の核)が見つかれば探しに行く。どうせ、あれに馴染む奴はいないかなら」

それは、ヴェイグ様にしかできないことだ。
いずれ、また闇のシード(魔法の核)を探しに行くのだと予想される。そして、逃亡しそうな気がする。

自由気ままなヴェイグ様は、誰にも止められない。

「でも、しばらくはここにいる。結婚して、新婚生活というものを味わってみたい」
「お手柔らかにお願いしますね」

無言で見つめるヴェイグ様の顔が近づくと、頭を添えられるように支えられて口付けをされていた。





しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

オル
2025.09.02 オル

すごく、面白かったです。外伝ぜひ!

解除
yuki
2024.12.11 yuki

そして逃亡で、正式な調印するんじゃいか?
って言ってます
じゃないか?では?

2024.12.11 屋月 トム伽

修正いたしました。ありがとうございます!

解除
かかし
2024.01.24 かかし

完結、お疲れ様です!軽妙なやり取りにクスリ、としつつ魅力的な2人の行く末を楽しみにしてました!
続編…もし、余力がおありでしたら、みたいです!😍

2024.01.25 屋月 トム伽

ありがとうございます。
とっても嬉しいです!

解除

あなたにおすすめの小説

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

追放された聖女は魔獣を祓い、王子に愛される 〜あるいは抹消された王子が憎悪に燃える聖女を人間にするまで〜

香月文香
恋愛
「聖女ロザリンド=イースを告発する」「私、マリアベル=レ=ジルレーンは、聖女ロザリンドの偽りを断罪します!」「平民のあなたに、聖女の椅子は大きすぎるのでは?」「さようなら、ロージー」十六歳の誕生日。第一王子との婚約発表を行うはずだった大広間で、私は聖女を解任された。私は聖女だけど、魔獣を祓うこと以外は何にもできなくて、偽物なのだと。まぁ一人の方が魔獣祓いも効率的にできていいかもしれないわ。なんて前向きに考えていたら、「身柄は<黄昏の宮>預かりとする」だって。皆さんざわついているけれど、<黄昏の宮>ってどこ? え? 第二王子がいるって? なにそれそんなの聞いてない──! だって、私は魔獣を殺せさえすればいいのだから。 ※小説家になろうにも掲載しています

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。

As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。 例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。 愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。 ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します! あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 番外編追記しました。 スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします! ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。 *元作品は都合により削除致しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。