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父親

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リヒトは目覚めた時、陛下は一目散にリヒトに駆け寄った。

「父上?」
「バカもの、心配させおって。」

リヒトは陛下の肩越しにクライス達を見た。

「クライス達が起こしたのか?」
「賢帝がリヒトを助けた。」

リヒトはそうか、と言い陛下を抱きしめた。

「マルク、リアを部屋に連れて帰ってくれ。俺が戻るまでリアから離れないでくれ。」

クライスの言葉にリヒトは一緒に行かないのか?といつもの調子で言った。

「リヒトに話がある。」

クライスはリヒトを見据えて言った。

「マルク、帰りましょう。」

リアはマルクとキースを連れて、クライス達親子だけにした。


皆が出て行ったのを確認し、クライスはリヒトにより話かけた。

「リヒト、大丈夫か?」
「…俺の心を見たんだろ?」
「賢帝が見せなかった。」

リヒトは頷き少し安心したようだった。

「俺の心には何もないからな。」
「バカを言うな。」

陛下の言葉にクライスも頷いた。


「父上、クライス、本当に何もないんだ。俺は今まで努力したこともクライスのように大事なものもない。ただいるだけだ。昔から勉強で苦労したこともなく運動でもない。何をやっても一番になれる。陛下の第1子だから身分も申し分もない。何も夢中になれないんだよ。」
「だから孤独なのか?」
「それもよくわからなかったが、クライスとリアをみて初めて感じた。孤独なんだと。」

クライスは何も言えなかった。
もしかしたら、自分達が追い詰めていたのではと感じたからだ。

だが、陛下が話した。

「リヒトもクライスも大バカものじゃ。」 
「父上?」
「リヒト、お前は私が選ばれなかった賢帝のシードに選ばれた。一人ではない。先ほども賢帝はお前を守っていたのじゃ。」
「賢帝が?」
「それに、優秀な二人の息子がそれぞれドラゴニアンシード持ちの私の気持ちも考えてくれ。いくら心配してもつきん。」

陛下は二人が黙ったまま聞いていたが話続けた。

「クライスはリアを溺愛し、リヒトは飄々としておる。何も無いなら、私に心配をかけるな。それに、お前には賢帝も私達がおる。」

「父上は俺が心配なのですか?」
「そう言っておる!」
「…ちょっと意外でした。」
「いくら優秀でもお前は人の心に触れようとしとらん。だからわからないんじゃ。」

陛下の言葉にリヒトは言い返せなかった。

「…父上、俺にもまだわからないことがあるようですね。」
「当たり前じゃ。」

「クライス、父上にはかなわないな。」
「俺も父さんにはかなわない。」

二人は、陛下が父親でよかったと思い、クライスはリヒトはもう大丈夫だと安心した。
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