69 / 70
そして彼は、今までの失敗を学ぶ……
第68話正論と正解……
しおりを挟む
時刻は午後七時……。
文化祭の準備のために居残りをしていたが、それも今ちょうど終わった。
いつもならだれよりも早く帰るところだが、今日はそうはいかない……。
花が帰ろうと、鞄にプリントなどをしまっているところに声をかける。
「なぁ花……。この後時間あるか……?」
そう聞かれた花は、鞄を肩にかけると。
「あるわ……」
っと、一言そう言った。
俺は花についてくるように言って、ある場所へ向かう。
行く道中も花は、これから何をするのか? などの質問はしてこなかった。
俺が今から何を言うのか察しているのだろうか……?
そして俺は、国語研究室の前に花を連れて来た。
別にここである必要はないのだが、今から話すことはあまり人には聞かれたくなかった内容なので、人気がないところに来た。
連れてこられた花は、早速本題に入るように促してきた。
俺がここに花を呼んだ理由。
それは……。
「花、嫌なことは承知でお願いする……。阿澄に謝ってくれ!」
俺は腰を九十度に曲げて、阿澄に謝るように花にお願いする。
だが……。
「嫌よ……。だいたい何であなたにそんなことお願いされなくてはいけないの?」
もっともな返答が返ってきた。
でも俺はここで簡単に折れるわけにはいかなかった。
どんなに正論を言われようと、俺が諦めたらまたあの時のようになってしまう……。
「自分でもおかしなことを言っているのは分かる。プライドの高いお前が人に頭を下げたくないのも知っている……。でも頼む! これは他ならぬ花のためなんだ」
「私のため? もっと意味が分からないわ……。何故私があなたに頼まれて阿澄さんに謝らなければいけないの? この正論に上手いこと返せたら考えてあげる」
上手いこと返す?
それは無理だ。
だって俺がお願いしている理由は、”花が阿澄にいじめられないため”という全く筋の通ってない理由なのだから……。
でも……。
「お前の言っていることは正しい。俺なんかに謝れなんて言われて意味が分からないのも分かる。でも理由とか理屈じゃないんだよ……。だから頼む……。阿澄に謝ってくれ」
俺は無理やりお願いするが、花の方は聞いているのが馬鹿らしくなったのか鞄を肩にかけなおして帰ろうとしていた。
「あなたの言っていることはおかしいわ……。それはあなたが一番分かっているのでしょう? 分かったら私の正論に対する応えを持ってきなさい」
「待ってくれ……」
花を呼び止める。
しかし何を言えばいいのか分からない……。
でもこのまま帰したらダメなことぐらいは分かる。
俺は無理やり花を説得するための言葉を絞り出す。
「花の言っている正論に対して、俺は返すことが出来ない。俺の言っていることは、客観的に見たらおかしいし間違っている……」
「じゃあ――」
「でも……それでもお願いだ……。お前の言っていることは正論だ……。でも正論は正論であって正解じゃない……。このまま何もせずに阿澄と揉めたままっていうのは大きな間違いなんだよ……」
花の言葉を遮って、俺は頼み込む。
これでもダメというなら、多分何を言っても意味がないのだろう……。
だが花は、あほらしいっと一言俺に告げて、その場を後にした……。
取り残された俺は、この先どうしたらいいのか分からなかった。
もうこのまま花がクラスの連中に疎外されていくのを見るしかないのか……?
考えても悪いことしか浮かんでこなかった。
俺は重い脚を何とか前に進めて、下駄箱に向かった。
文化祭の準備のために居残りをしていたが、それも今ちょうど終わった。
いつもならだれよりも早く帰るところだが、今日はそうはいかない……。
花が帰ろうと、鞄にプリントなどをしまっているところに声をかける。
「なぁ花……。この後時間あるか……?」
そう聞かれた花は、鞄を肩にかけると。
「あるわ……」
っと、一言そう言った。
俺は花についてくるように言って、ある場所へ向かう。
行く道中も花は、これから何をするのか? などの質問はしてこなかった。
俺が今から何を言うのか察しているのだろうか……?
そして俺は、国語研究室の前に花を連れて来た。
別にここである必要はないのだが、今から話すことはあまり人には聞かれたくなかった内容なので、人気がないところに来た。
連れてこられた花は、早速本題に入るように促してきた。
俺がここに花を呼んだ理由。
それは……。
「花、嫌なことは承知でお願いする……。阿澄に謝ってくれ!」
俺は腰を九十度に曲げて、阿澄に謝るように花にお願いする。
だが……。
「嫌よ……。だいたい何であなたにそんなことお願いされなくてはいけないの?」
もっともな返答が返ってきた。
でも俺はここで簡単に折れるわけにはいかなかった。
どんなに正論を言われようと、俺が諦めたらまたあの時のようになってしまう……。
「自分でもおかしなことを言っているのは分かる。プライドの高いお前が人に頭を下げたくないのも知っている……。でも頼む! これは他ならぬ花のためなんだ」
「私のため? もっと意味が分からないわ……。何故私があなたに頼まれて阿澄さんに謝らなければいけないの? この正論に上手いこと返せたら考えてあげる」
上手いこと返す?
それは無理だ。
だって俺がお願いしている理由は、”花が阿澄にいじめられないため”という全く筋の通ってない理由なのだから……。
でも……。
「お前の言っていることは正しい。俺なんかに謝れなんて言われて意味が分からないのも分かる。でも理由とか理屈じゃないんだよ……。だから頼む……。阿澄に謝ってくれ」
俺は無理やりお願いするが、花の方は聞いているのが馬鹿らしくなったのか鞄を肩にかけなおして帰ろうとしていた。
「あなたの言っていることはおかしいわ……。それはあなたが一番分かっているのでしょう? 分かったら私の正論に対する応えを持ってきなさい」
「待ってくれ……」
花を呼び止める。
しかし何を言えばいいのか分からない……。
でもこのまま帰したらダメなことぐらいは分かる。
俺は無理やり花を説得するための言葉を絞り出す。
「花の言っている正論に対して、俺は返すことが出来ない。俺の言っていることは、客観的に見たらおかしいし間違っている……」
「じゃあ――」
「でも……それでもお願いだ……。お前の言っていることは正論だ……。でも正論は正論であって正解じゃない……。このまま何もせずに阿澄と揉めたままっていうのは大きな間違いなんだよ……」
花の言葉を遮って、俺は頼み込む。
これでもダメというなら、多分何を言っても意味がないのだろう……。
だが花は、あほらしいっと一言俺に告げて、その場を後にした……。
取り残された俺は、この先どうしたらいいのか分からなかった。
もうこのまま花がクラスの連中に疎外されていくのを見るしかないのか……?
考えても悪いことしか浮かんでこなかった。
俺は重い脚を何とか前に進めて、下駄箱に向かった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
デイジーは歩く
朝山みどり
恋愛
デイジーは幼馴染に騙されるところだったが、逆に騙してお金を手に入れた。そして仕立て屋を始めた。
仕立て直しや小物作り。デイジーは夢に向かって歩いて行く。
25周年カップにエントリーしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる