サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

第一章 名も無き蝙蝠

第9話 獲物を求めて

　
　やばいな。熱中しすぎた。
　試行錯誤と練習を初めてどれくらい経っただろうか。1年は経ってないと思いたい。
　あれだけ居たネズミがもうほとんど居ないからね。

　たまにゴブリンも見かけたけど、実験チャンスとばかりに魔法を使いまくった。
　非常に有意義でした。人型の魔物だから特に。
　仮想人間として、丁度いい相手なんだよ。

　魔法の熟練度も悪くない。
　何度ステータス的な物が欲しいと思ったか。
　成長してると思うけど、やっぱり数字の評価も欲しいよね。

　今ではソニックニードルは達人レベルよ。
　最初は頑なに耳を狙ってたけど、良く考えれば体のどこかに『針』さえ刺してしまえば後は振動させてシェイクすればいいじゃんと思い、そういう方向で練習した。

　約1年の間魔石を食べ続けたからか、いくらネズミの小さいのでも最大魔力量は増えた。
　でも、魔力タンクは大きくなっていない。
　魔力量は増えてるから、圧縮でもしてるんじゃないかと都合良く考えてる。

　まだまだ、やりたい事はいっぱいあるのだが獲物がいなくなってしまったのだ。
　【貯血】には、まだまだ血がいっぱいあるが流石に潮時ではなかろうかと。
　この良く分からない洞窟探索に出かけるべきではと思った訳である。


　この1年。ほとんどは練習に費やしていたが、洞窟の事を調べなかった訳ではない。
　音を反響させ続け頭の中にマップを作っていたのだ。……俺の記憶力依存なので、定期的に反響しないと忘れそうになるけど。

　俺は前に、出口が見つからないと言っていたが、そりゃそうである。
　なんと、俺はおんなじ所をずっとぐるぐるしていただけであった。そりゃ見つかんないよね。

　で、洞窟を調べた結果、そんなに大きい洞窟じゃない事もわかった。下に続く道は無かったが上に続く道はあった。
　かなり小さかったので、人間は入ってこれないような道だが。
　だから大型の生物はおらず、小型のゴブリンやネズミしかいなかったのだ。後、俺の同族。

　「うし！　長らくお世話になったこの場所ともおさらばしましょうかね」

　あ、喋れる様になりました。
　めちゃくちゃ声高いけど。
　日々改善はしてるけど中々ね。



　小さい道を羽ばたきながら、慎重に登っていく。
　新しい場所に行く事にワクワクしてるけど緊張もしてる。
　いきなり強大な敵に出会ったりしないだろうか。
　そんな事を考えると上り道も終わりがみえて到着。ぐるっと周りを見渡してみるけど下とそこまで変わりはないかな。

　とりあえず天井へ。そして【音魔法】で反響させて状況確認。
　うーん？　下よりも狭そう。おお！？
　出口っぽいのがあるじゃん！
　行きたい！　行きたいが…

　「出口付近に30体程反応があるんだよね」

　ゴブリンかな？　盗賊とかだったりしないのか。
　気兼ねなく殺せるじゃんね。
　出口とは反対側にもちらほらと生物の反応がある。
　とりあえずそっち行ってみようかな。



　出口と逆方向はゴブリンでした。
　って事は、出口付近に居る奴もゴブリンかな？　
人間じゃなさそう。残念。

　消音結界を張りながら慎重に出口に行くと、やはりゴブリンだった。
　だが、今まで見たゴブリンとは一味も二味も違う。

　まずでけぇ。進化してるんだろうな。
　俺が見た事があるゴブリンは小人サイズだったのに、普通の人ぐらいのサイズがある。
　ホブゴブリンってやつ？なんか種類は多種多様だけど。剣持ってる奴も居れば、弓持ってる奴もいる。

　うわぁ、杖持ってる奴もいるじゃん。
　そういえば、あの下で見た杖持ちゴブリンは下で進化したんだろうか？
　道が小さすぎて上から来れないもんね。

　更に、一体。
　一際大きい奴がいる。
　ゴブリンリーダー？　キング？
　とにかく威圧感が半端ない。
　大剣みたいなの持ってるし。
　その武器群はどこで手に入れたんでしょうかね。
　略奪なのか、作ってるのか。


　ってかこれ勝てる？　数が多すぎる。
　戦った事ない相手ばっかりだし。とりあえず単体ずつ相手させて欲しい。どれくらいの強さなのか指標が欲しいよね。

　慎重過ぎるかも知れないけど、せっかく転生したんだから死にたくないし。
　まだこの世界を全然楽しみ尽くしてない。

　俺はこのゴブリン達をどう仕留めるか作戦を考えるのであった。