サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

文字の大きさ
19 / 184
第二章 名も無き吸血鬼

第17話 妖狐

しおりを挟む

 
 「ん? あれは?」

 魔石を取り込み、ちょっと座ってゆっくりしてたら、少し離れた所に糸の繭が木に吊されていた。

 「俺みたいに捕まった魔物かな? ついでに糧になってもらおう」

 俺は【音魔法】を手に纏い、糸を切る。
 繭から出て来たのは、瀕死の子狐だった。

 「えっ、可愛い」

 もっとグロテスクな魔物が出て来ると思ったら可愛い小動物だった。

 『妖狐
  名前  無し
  【魔物能力】
  念力     』


 「妖狐ねぇ…。急に和風になったな。今まで横文字ばっかりだったのに」

 これはもしやレア種なのでは?
 俺も魔物をいっぱい見て来た訳じゃないけど漢字は初めてだしな。

 「むう。これだけ可愛いと殺すのも忍びないな。いや、襲って来たら普通に殺すけど」

 前世で野良猫と戯れていたのを思い出す。
 こっちは狐だけど大差ないだろ。

 「とりあえず瀕死だし、魔石でも食べさせてみるか? 俺はそれで翼が治ったしな」

 まだ取り込んでいない魔石を口の中に放り込んでみる。

 「おおー。やっぱり魔石で傷が治るんだな。図らずも実験したみたいになったけど、結果オーライという事で」

 それから、外傷が無くなるまで魔石を与えてみたがまだ意識が覚めない。

 「どうしようかな。餌付けしたら懐いたりしてくれないもんか。テイムみたいな魔法はないのかね」

 テイム魔法とか契約魔法とかさ。
 このもふもふを堪能したい。

 「とりあえず、目が覚めるまでは待機しておこうかな。疲れてるしね」

 これで目が覚めた時に襲われたら仕方ない。
 縁が無かったと諦めて殺しましょう。



 魔法の練習をしながら、半日程経つと妖狐が目覚めた。

 「キュウ…」

 「どうも始めまして。レッサー・ヴァンパイアです。名前はまだありません」

 とりあえず近くに俺が居て警戒してるみたいなので自己紹介してみる。
 そういえば名前がまだ無かったな。
 これは、神様的な人に勝手に付けられるのかな?
 それとも、自分で付けるのか。
 まぁこだわりがないので、それは後で考えよう。

 「えーと。蜘蛛に捕まってたみたいなので、解放して魔石を食べさせました」

 「……」

 「えーと……」

 「……」

 そうだった。俺はコミュ障だった。
 大体俺の言葉は妖狐に通じてるのかな?
 ずっと見られてるので落ち着かない。
 幸いすぐに襲って来る事は無かったのでそれは良かったけど。

 「お加減いかがですか?」

 「キュウ」

 妖狐は恐る恐る近付いてきて俺の手をペロペロ舐める。
 うん。可愛い。

 「妖狐はこれからどうしますか?」

 「キュンキュン」

 「そうですか」

 なんて言ってるんだろうね。
 適当に相槌打ってるけども。
 てか、なんで俺はこんなに畏まってるのか。
 魔物相手にコミュ障出してどうするよ。

 「えーと、俺はそろそろ行こうと思うんだけど…妖狐はついて来るかな?」

 言葉が通じてるか分からないが一応聞いてみる。
 俺が立ち上がると、妖狐は飛び上がり俺の頭の上に乗ってきた。

 「ついて来るって事でいいのかな? 俺は嬉しいけど」

 いや、重たいな。
 俺の体の大きさ3歳児だぞ?
 妖狐の大きさは子犬ぐらいあるからちょっとバランスがおかしい。

 「キュンキューン!」

 まあ、いいか。
 人間相手にこんなんされたら即殺やぞ?
 いや、子供相手ならセーフかな。
 子供は良い。純粋だからな。
 大人はダメだ。真っ当な大人を見た事がないからかもしれんが拒否反応が出る。
 子供の頃からしっかり教育してれば、クソみたいな大人にはならんと思うんだが。
 妖狐には、しっかりとした大人になってもらおう。
 悪即斬の心得をしっかり叩き込んでやる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...