サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

第三章 人間の街

第28話 マフィア風スーツ

　とりあえずあの女騎士は眷属候補としておいて。
　さっきから言ってる服を見繕いに行こう。
　どうにかして、くっ殺させてやりたい。
　オークも用意しておかんといかんな。

　「そうか。自分で服を作る事ばっかり考えてたけどプロに作ってもらった方がいいよな。商業都市だし良い店もあるだろうよ」

　着たい服があるんだよね。
　ちょうど似合う体型、顔になったし是非着たい。
　ちょっと見て歩きながら、良さげな服屋を探そう。


　「あっ、ここ良いじゃん。お邪魔しまーす」

　「いらっしゃいませ。当店は初めての方ですね？　よろしければご案内させて頂きますが？」

　「あ、お願いします。ここってオーダーメイドとかって出来ますか？」

　おお。
　なんて人好きにさせる笑顔のイケおじなんだ。
　自分で言うのもなんだが、かなり怪しい見た目をしてると思うんだが。
　全身真っ黒だしね。

　「勿論でございます。あちらでお話を伺いましょう」

　店の奥の部屋に案内されるがままついていく。
　良さげと思って入ったけど上流階級向けなのかな？

　「それで、お客様。本日はどのような物をお求めで？」

　「えーっと。こういう感じなんですけど…」

　俺はとりあえず口頭で説明するが、やっぱりこの世界には無いらしく、紙を持ってきてもらって絵を描いて説明する。

　「なるほど…。これは初めて見る服ですね。こちらはお客様がお考えに？」

　「いや、故郷で似た様な服があったんですよ」

　俺がお願いしたのはスーツである。
　しかもマフィア風。
　何かのCMで見て憧れてたんだよね。
　マフィア風スーツに革のロングレザーコート。
　イタリアンマフィアみたいな感じ？
　厨二病チックかもだけどかっこよかったんだよ。

　「初めて見る服ですので少しお時間がかかるかもしれませんがよろしいですか？」

　「どれぐらい掛かりそうですか？」

　「そうですね。試作する時間も含めて1週間はかかるかと」

　「あ、全然大丈夫です」

　いや、充分早い。
　服って作るのにもっと時間かかるもんやと。

　「あ、この糸って使えますかね？」

　「おや？　これは珍しい。フォレスト・スパイダーの糸ですかな？　勿論でございます」

　「余った糸はここで売れたり？」

　「それはありがたいですね。スパイダー系の糸は中々市場に出回りませんので」

　え？　じゃあ何系の糸なら出回るの？
　やはりシルクですかね？

　「じゃあお願いします。いくらぐらいになりそうですか？」

　「糸の提供もして頂けましたし、革の素材次第ですな」

　「この店の最高級の革を使って下さい」

　「それなら糸をお売り頂いても、少し足りませんな。ブラックワイバーンの革を使わせて頂きますので金貨15枚といったところです」

　「わかりました。先払いしときますね」

　俺は盗賊の戦利品から金貨を出す。
　流石にこんな大きい店がバックれる事はないだろう。
　そんな事されたら皆殺しだが。

　「ありがとうございます。最高の商品をお作り致します」

　「お願いしまーす」

　俺はその後、間に合わせで適当な服を買って店を出た。

　「んふふ。ちょっとした夢が叶ったな。あのかっこいいスーツを着てみたいと思ってたんだよね」

　さーて、服が出来るまでの1週間どうしようかな。
　都合良く殺して良い相手でも出て来ないもんか。

　「あの女騎士の情報集めるか。異世界に来たら、くっ殺は義務だしな」

　やはり、先人の知恵は偉大である。
　ラノベは教科書みたいなもんだよね。