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第四章 迷宮都市ラビリントス
第69話 ムカデリベンジ
しおりを挟む戻ってきたぞ、37階!
「さあ、ムカデを探すぞ! ここはムカデ以外に何が出て来たっけ?」
「ムカデしか遭遇してないです。37階に着いて早々に撤退したので」
え? そうだっけ?
って事は、ここはムカデエリアかも知れないって事?
冒険者達はこいつらをどうやって仕留めてるんだよ。
「あ、戦わずに先に進めばいいのか」
「恐らくはそうしてるかと思われます。冒険者達特有の倒し方があるかも知れませんが」
「殺虫剤とか? そんなのあるのかね。まぁ、いいさ。進化した俺達の良い試金石になる」
煙草を吸いつつ、歩き回る事10分程。
ようやっと宿敵を発見した。
「よーし、行くぞ! とりあえず全力だ!」
「かしこまりました」
「キュン!」
「ゴギャ!」
俺は咥えてた煙草をプッと吐き出し、【音魔法】を纏う。
そしてそのまま、手刀を振動させて斬りかかる。
前回は少し削れる程度だったが、今回は装甲をぶち抜き、体の半ばまで喰い込む事が出来た。
「くはははは! やっぱり進化すると違うなぁ!! 前回とは大違いだぜ!」
「ガチガチッ!」
「おっと」
ムカデはすぐさま、【毒酸】を放って来て距離を取ろうとしてくるが、そうは問屋が下さない。
「ゴギャー!」
「はぁああ!」
接近していたアシュラが金棒で顔をかち上げて、グレースが俺が斬った所に【再生】を使われる前に追撃する。
「キュンキューン!」
そして、妲己は再生される前にピンポイントで傷口を【火炎魔法】で焼いていく。
「ん? あ、そうか」
俺は斬った所から流れてる血を見て、そういえばと思い付く。
【血液魔法】を使い、傷口からどんどん血を吸収していく。
するとムカデは、どんどん動きが鈍くなっていく。
「滅茶苦茶抵抗されるな。【魔法耐性】のせいか? 魔力操作の練習してなかったら押し負けてたかもな」
俺が血を吸収してる間も、他の眷属達は攻撃を止める事なくダメージを与えていく。
そして、1分程経つとムカデは倒れて死体は消えた。
「勝ったぞー!!」
「やりましたね」
「キュン」
「ゴギャ」
え? なんかテンション低くない?
リベンジ成功よ?
「いえ、なんというか…【血液魔法】ずるくないですか? 正直、私達はほとんど何もしてませんよ? そのせいで、達成感があまりなくてですね…」
妲己とアシュラもそうだそうだって感じで俺を見てくる。
いや、結構追撃してたよね?
「レト様が血を抜き始めてからは、動かない的に攻撃してる感じでしたし。私達が成長を実感出来る様な事はありませんでした」
むむむっ。
俺が思ったより頑張り過ぎたって事?
確かに、前回戦略的撤退させられたせいで、思い入れは強かったけども。
「いや、血を流してるのを見て【血液魔法】で終わりじゃんって思って…。どうもすみません」
俺は強くはなりたいけど、苦労はあまりしたくない訳で。
楽に勝てる手段があれば使っちゃうよね。
みんなは気合い入れてた分、肩透かし食らったみたいで消化不良っぽいので、とりあえず謝っておきます。
「ほら、他探そう? ここムカデエリアかも知れないからまだまだいる筈だよ! 知らんけど」
俺はみんなからの視線から逃れる様に、次の獲物を探知する。
さっさと新しい獲物を見つけて、矛先を変えなければならない。
「むむ! さっきと同じ反応! あっちにムカデがいるよ! ささ! 向かいましょう!」
俺は誰とも目を合わせず、先導して1番前を歩く。
グレース達も仕方ないなみたいな感じでついて来てるのでなんとかなっただろう。
「キュンキューン!」
妲己が勝利の雄叫びを上げて、戦闘が終了する。
あの後、何回もムカデと戦ったが、単独で勝てたのは妲己だけだった。
グレースとアシュラは協力して倒す事が出来たけど、火力がまだ足りてないな。
妲己はとにかく、魔法でゴリ押ししてたけど。
俺の姿をした【幻影魔法】を使って、【雷魔法】を纏い殴りかかるのは凄くカッコ良かったな。
【幻影魔法】を覚えてから、妲己は体術を見せてくる様にせがんでいたのはこれのせいなのか。
「私とアシュラは前回から進化してないですからね。やはり決定力に欠けます」
「でも協力して倒す事は出来てるよな。レベルアップや進化をしてなくても強くなれてるって事じゃん」
アシュラはともかく、グレースは納得がいかないらしい。
うーん。どうしようか。
「とりあえず、グレースのレベルが上がるまでは、ここで経験値を溜めようか」
ムカデリベンジが終わったら、直ぐに次の階層に行こうと思ってたけど、予定変更だな。
俺も【血液魔法】以外での倒し方を模索しよう。
停止の【魔眼】って、使い勝手悪すぎる。
正直、動き止めるなら【影支配】で縛った方が効率が良いんだよな。
ムカデみたいに、【魔法耐性】持ってたらそっちの方がいいのかもだけど。
支配に変わってから、あんまり抵抗されてる気もしないし。
燃費も悪いし、使い所あるのかね。
そんな事を思いながら、グレースは単独でムカデと戦っている。
この階層で戦い始めてから5日が経ったけど、未だにレベルは上がっていない。
超越者になるのは簡単じゃないって事なのかな。
それでも、何回も戦ってるお陰でレベルが上がらずとも単独で渡り合える様になっている。
後、夜に覚えられそうな能力の練習もしてるせいで、小手先の使えるスキルを覚えたのも大きいのかも知れん。
火力不足のせいで、時間はかかってるけどな。
「これで終わりですっ!!」
グレースは息を荒げながらも、なんとかムカデの単独討伐に成功した。
「はぁはぁ。やった! やりました! 1人でも勝てま…した…」
おお。珍しく素で喜んでるなと思ったら、光に包まれてパタリと倒れた。
「っ!? レベルが上がったか!! 人種の進化は初めてみるな! 特殊進化と同じ感じなのか!」
「キュンキュン!」
「ゴギャギャ!」
妲己は嬉しそうに飛び跳ね、アシュラは…アシュラのそれはなんだ?
踊ってるのか? そんなのどこで習った?
とても気になる事ではあるが、今はグレースが優先。
急いで影の中に入り、進化終了を待った。
って、これで進化したら規定量の経験値が溜まって進化したのか、一つ壁を超えたから進化したのか分からないじゃんね。
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