サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

第四章 迷宮都市ラビリントス

第76話 復讐計画

　
　「さーて、眷属になった気分はどう？」

　「なんか、レト様が良い人に見えてきたぞ？」

　「……怖くないの」

　ほほー。
　俺が良い人に見えるとな？
　眷属化ってすげーな。
　テレサも小さい声で喋ってくれる様になったし。
　確か、徐々に忠誠心が芽生えてくるとかそんな感じだった筈。
　グレースは即堕ちだったけど。
　女騎士の即堕ちは様式美だからさもありなんって感じだな。

　「まあ、今はそんな感じで良いか。後は、ステータスがどうなってるか…。ん。変わってるな。ヒューム・ヴァンパイアになってるし、新しく【吸血】スキルも覚えてる。これ、覚えるのがデフォかな」

　後は、不老になったぐら…い…で？　不老？

　「やべぇよ。不老じゃん。忘れてた」

　「？　何か言いました？」

　兄妹から離れて、グレースと二人でやらかしてしまった事を話す。

　「眷属にすると、不老になるじゃん？　これ、あの二人ここから成長するの？」

　「あーっと。どうでしょうね？　エルフ等長命種はある程度成長してから、そこで止まるらしいですが。眷属化による不老はどうなるのか」

　困ったな。
　下手したらあいつらは一生、ショタとロリで過ごさないといけないって事？
　皆さん薄い本の出番ですよ。
　テレサはロリってかもう幼女なんだが。

　チラリと二人を見てみる。
　ウェインは、喋らなければ可愛らしい茶髪の男の子だ。
　話してみると、勝ち気な所もあるが下手したらその辺も性癖に刺さる人はいるかもしれない。

　テレサは、お人形さんみたいな目がクリクリした物静かな女の子。
　金髪な髪の毛は汚れて今はちょっと霞んでいるが、洗えば綺麗になるだろう。

　どちらも総じて言える事は小さいという事だ。
　成長しなければ、ずっとこのままなんだが。

　「ふーむ。将来成長しなければ、二人に恨まれそうだな。大人な男や女に憧れも出てくるだろうし」

　「成長する事を願うしかありませんね」

　そういえば、グレースが見せたドロっとした目は二人にはないな？
　グレースの専用のヤンデレ演出か？
　あ、二人がいたら夜の性活も出来ないね。



　諸々の問題を全て先送りにした。
　未来のレト君がなんとかしてくれるだろう。
　きっと優秀なレト君になってくれてる筈。

　「さーて、黒蝶の奴らをどう処理しようか。死体はさっき放り込んできたけど。放り込む？　まぁ、店の前に置いてきたんだけど」

　肉団子と串刺しの死体ね。
　夜中だからまだ気付かれてないだろうけど。
　朝になった時の反応が楽しみだーね。

　「いつも通り殺すのでは？」

　「いや、そうなんだけど。ただ殺すだけじゃあ芸がないでしょ？　二人の復讐も兼ねてるんだし」

　復讐は悪だなんて言う気もありませんし。
　ってか俺は復讐してから異世界に来たみたいなもんだしねぇ。
　復讐を辞めろとか言う奴は自分が逆の立場になったらどうなるのか考えた事あるのかね。
　そんな事言う奴が居たら是非レトまでご一報を。
　親兄弟恋人知り合い全員殺してやろう。
　それでもまだ耐えれるんならそいつは立派な異常者です。

　「で、どうしたい？　やりたい事はなんでもさせてやろう」

　「でも、俺達は弱いんだぞ…」

　「捕まえてきてやろうか？　影で縛れば抵抗も出来なく出来るしな」

　いくら人間が弱いとはいえ、経験値は貰えるわけだし？
　構成員を全員殺せばレベルも上がるんじゃないのかな。

　「本当にやっても良いんだぞ？」

　「なに？　やりたくないの？　それなら俺が勝手に処理しとくけど」

　「やりたいぞ！」　「やりたいの！」

　「なら、やれば良い。強くなるまでは俺達がサポートしてやろう」

　さてさて、どんな感じでやろうかね。
　一気にやるか、じわじわやるか。
　テレサはともかく、生産職の人達はどうやってレベル上げるのかな？
　生産作業してたら上がるんかね。


　☆★☆★☆★

　「な、なんなんですか、これは…」

　「ボ、ボス。朝来たらこの有様で…」

　黒蝶のボス、スネイルはいつも通り朝になって商会にやって来ると、店の前には衛兵や野次馬が集まっていた。
　それもその筈。
　店の前には、串刺しにされて乳首の所に目玉が縫い付けられてる死体と、ありとあらゆる骨が砕かれ、丸められた肉団子の様な死体が晒されていたからだ。

　「ここの商会主さんですか？」

　「え、ええ」

　「このご遺体に見覚えは？」

　「分かりません」

　(串刺しにされてるのは、あの薬師の家を見張らせてた部下か。それとあの丸まったのは…損傷が酷くて分かりにくいですね…。昨日尾行させた奴でしょうか)

　「あの串刺しの死体は半年程前に迷宮で同じ様なのが目撃されてます。関連事件として調査しますが、何か心当たり等は？」

　「私共もそれなりに手広く商売をしてますので、商売敵は居ますが…。ここまでの事をされる程では…」

　「そうですか。何か分かりましたら詰所までご連絡を」

　「分かりました」

　この問答はあくまでポーズである。
　この衛兵は買収してある。
　今のは、私達は巻き込まれた側ですよと周りにいる他の衛兵や、野次馬に見せつける為のものだ。

　それからも、こんな事があったのでと一時的に商会を閉める告知をしてから、スネイルはアジトに戻る。

　「あの尾行させてた奴はともかく、何故薬師の家の者まで殺されているのです？　手口的に犯人は同じでしょう？」

　「わかりやせん。薬師の家も、もぬけのからになってました」

　「分かりませんね。何故あの男があそこにも手を出したのか。とりあえず赤髪の男を探しなさい。迷宮の中に逃げられたりしないように。しっかり見張りも立てておくのですよ」

　「了解です」

　スネイルは男の目的が分からないまま捜索を始める。
　まさかたまたま見つけたユニークスキル持ちの家だっただとは分かる筈がない。
　長く迷宮都市ラビリントスに根を張っていた黒蝶の凋落が始まった。